開業3周年に思うこと
2024年5月1日で開業して丸3年。
今思うことを書き残しておきます。
皆様への感謝
日本での開業後の廃業率は、
3年で大体50%くらいだと聞いたことがあります。
廃業する理由は様々だとは思いますが、
まずは自分がこの仕事を続けられていることを皆様に感謝したいです。
本当にありがとうございます!
マイクを買ってくれた方々はもちろん、
宣伝や紹介をしてくれた方々、
試作品の評価をしてくれた方々、
録音を手伝ってくれた方々、
動画にしてくれた方々、
部品を作ってくれた方々、
悩みを聞いてくれた方々など、
たくさんの人の支えで今があると思っています。
わかりやすいように「家で1人でマイクを作っている」と言っていますが、
間接的には色々な人たちの助けがあって成り立っているとは思っています。
感謝しています。
3年間での実績
3年間で全69機種を試作し、うち38機種を製品化して発売しました(特注品も含む)。
単純計算で月1機種ペースを超えています。
派生機種が多いとはいえ、これは正直かなりのハイペースだと思います。
まだ3年しか経っていない横浜マイクロホンと、50年以上続く大手メーカーたちとを比べるのはラインナップの充実度合いがそもそも異なりますのでちょっとあれですが、
この10年以内に創業したような新興マイクメーカーたちと比べたら、
月1機種ペースはかなり頑張っているのがわかってもらえるかなと思います。
「毎月1機種発売するのが目標だ!」とかではなくて、
自分の創作意欲のままに過ごしていたら、
結果としてそうなっていたというだけです。
予算さえあれば、もっと試作していたと思います。
現在、総出荷台数は276台。
「そんなにたくさん売れてたの?!」というのが私の感想です。
作るときは大体10台ずつくらいですし、
平均して年間100台ペース(=月8台ペース)くらいなので、
いつも体感としては「数十台売れたかな?」ぐらいの感覚でいるので、
集計結果で"276台"と見ると自分でびっくりしてしまいます(笑)
(マイクに限らず)大手メーカーに勤めている方々からすると、
「たった276台くらいで大袈裟な…(笑)」と思われるかもしれませんが、
例えば1ロット100台で工場からまとめて出荷される製品があったとすると、
それって1台1台の行き先って設計者や生産者からは普通わからないじゃないですか?
だから100台でまとめて1個くらいの感覚ですよね。
でも個人で作って売っていると1人1人の相手がわかるんですよ。
もちろん全員ではありませんが8~9割くらいの人からは、
デモ機貸し出し依頼だったり、
製品への質問だったり、
使った感想だったりの連絡をいただきます。
つまり相手がわかってる分、1台への重みが全然違います!
メーカー勤務の設計者感覚の276ロット(上の例で言えば27600台)に相当する感じです。
気持ち的には。
1日1日が積み重なることで3年になるわけですし、
1台1台が積み重なることで276台になるわけですので、
これからも1つ1つを大切にしていきたいと思います。
それがきっと次の1つへ繋がると信じて。
設計への想い
3年経ちましたが、基本的なスタンスは開業時から変わっていません。
『なんだかワクワクする新しさを形に』。
売れるかどうかはどうせ誰にもわからないのだから、
自分の作りたいものを作る。
自分がワクワクしない物に他人がワクワクしてくれるわけないですから。
ワクワクの理由は全部細かく理屈で説明しなくて良いと正直思っています。
なぜか欲しくなってしまうマイクこそ、魅力溢れるマイクなのだと。
(マイクに限らず)大手メーカーだと、
「市場規模がどれくらいで」「対抗機種はどれでいくらで性能はどれくらいで」「それに対して価格と性能をどれくらいにして」「何台売れる見込みがあって」「利益がどれくらいになるか」などなどを
調べてまとめて社内でプレゼンしてOKがもらえないと、
数万円の試作すらさせてもらえないわけで…。
それだともうOKが出る頃には設計者自身の熱は冷めちゃってるんですよね。
設計者の気持ちが盛り上がっているときに試作すると、
おもしろいものができあがるのに…。
会社のお金で試作するのだから仕方ないのは十分わかりますが、
将来の芽を潰している面も多々あるわけです。
制約が増えるほど、クリエイティビティが下がるからです。
企画部や営業部が提案するものは他社の真似か自社製品のマイナーチェンジしかほぼないでしょうから、
技術部からどんどん提案していくことが大切だと私は考えています。
一方で個人で設計開発していると、
自分以外誰も文句を言う人はいませんから、
自分が作りたいものを作りたいタイミングで作れます。
(もちろん予算があるのが前提ですが。)
「売れるかどうか」なんてことを考えなくて良くなった途端、
不思議とアイディアが溢れ出します。
作る人がおもしろがって作ったものは、
使う人もおもしろがってくれることが多いです。
細かいところは試作後に意見を聞いて微調整していけば良いわけで。
その中で偶然たくさん売れる製品が出てきたらラッキー、くらいの感覚でいれば良いんじゃないかなと思っています。
今後の製品展開
この3年ずっとダイナミックマイク専業という感じでしたが、
先日2024年4月1日に遂にサイドアドレスコンデンサーマイクhimawariとajisaiを発売したのは、
このnoteを読んでくれている皆さんはたぶんご存知かなと思います。
いずれhimawariと同じ筐体を使って中身違いで、
サイドアドレスリボンマイクも作りたいなと思っています。
sakuraの筐体でハンドヘルドリボンマイクも作りたいです。
競合は多いですが、スモールダイヤフラムのエンドアドレスマイク(スティックマイク)も作りたいですね。
モジュラーシステムにすると色々おもしろそうなので。
そしたらショットガンマイクやコンデンサーハンドヘルドマイクも作れそう。
作りたいマイクがたくさんあります。
でも予算はそんなに無いので、少しずつ少しずつ作っていきます…。
お勧めしたいこと
世の中の製品は定期的なセールありきの価格設定になっているものも多いですが、
横浜マイクロホン製品はいつでも好きなタイミングで購入できるよう、
セールは行ないません。
(先日のhimawariとajisaiの先行予約特別割引は、製品化の予算確保のための苦肉の策なので例外です。)
「セールまで待てば良かった…」とか「こないだまでセールだったのかぁ…」とか余計な要素で買い物の気分が下がるの嫌じゃないですか?
私は嫌です(笑)
なので、ご自分のタイミングでゆっくり購入検討してください。
ただし材料費などの上昇の影響で値上がることはあっても値下がることはないので、
デモ機試してみて相性の良い欲しいマイクがもしあったら早めに購入することを一応お勧めします。
(横浜マイクロホン製品に限らずです。決して急かしているわけではなく、世界情勢を考えると…です。)
あとは「気になる!」「欲しい!」と言ってくれる方々はSNSで結構いらっしゃるのですが、
デモ機あるので試してくださいと直接言っても実際に借りて試してくれるのは半数ほどです。
返送時の送料(1000~1500円くらい)だけはご負担いただくことになるので、
そのお金がもったいないということなのか、
それとも梱包して返送する作業が面倒ということなのか、
忙しくて試す時間がないということなのか、
実はそんなに欲しいわけではなく「(無料でなら)欲しい!(誰かちょうだい)」ということなのか。
真相はわかりませんが、ぜひ1度実際に自分で試してみてほしいです。
マイク買ってほしいというよりは、
1000~1500円で複数のマイクを自分の使用環境で1週間比較試聴できる体験ができるって、絶対楽しいと思うんですよね。
音というものに関わる人なら尚更。
映画観に行くとか動物園に行くとかそういう娯楽の仲間の1つとして、
"マイク借りて試す"というのもおもしろい娯楽になると思います。
買わない前提で全然構いませんので、ぜひ借りてください。
それに録音された音源を比較試聴してマイクのことをわかったつもりになるのは危険なので、できればやめた方が良いです。
慣れた人であればそれぞれの音質の傾向くらいはもちろんわかるのですが、
声質や楽器との相性、マイクとの距離や角度、マイクプリアンプの種類、録音した部屋の大きさや吸音具合などによっても全然変わるので、
案外自分で試すと違う印象になることも多いはずです。
何よりリアルタイムのレスポンススピードは録音されたものを聴くだけでは絶対にわからないので、
ライブに使う人とかレコーディング中モニタリングするという人は、
借りて自分で音を入れてぜひ試してみてください。
あとはもし何か「こんなマイクがあったらいいな」という要望がありましたら、お気軽にお声掛けください。
見積もりまでは無料ですし、おもしろい話でそれほど試作費かかなそうであれば、こちら負担で試作品作って試してもらうなんてこともしています。
まずはメールなどでご相談いただければと思います。
よろしくお願いいたします。