【童話】ブタさんの悲劇
「ねえねえ、みんな、『みにくいアヒルの子』って云う、お話しを知ってる?」
仕事から帰って来たブタさんが云いました。
牛さんも、羊さんも首を傾げました。
「あ、知らないんでしょう」
ブタさんが、嬉しそうな顔をしています。
「うん、知らないなぁ」
牛さんが、飲むヨーグルトのキャップを外しながら云いました。
「わたしも知らないけど、なんだかタイトルが気に入らないわね」
羊さんが、創ったセーターを、箱詰めしながら怒った顔で云いました。
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ブタさんは、不思議そうに羊さんを見ています。
「だってブタさん、アヒルさんのお子さんのことを、みにくいってヒドイわ」
「あぁ、そうかモー」と、牛さんも、モーモー云っています。
「ち、違うよ、そうじゃないよ、あのね」
ブタさんは焦っています。
「みなさん、ブタさんの云う通りですよ。
アヒルさんの、お子さんがみにくいと云う話しではないのです」
ニワトリさんが、ブタさんの代わりに、そう云ってくれました。
「そうなの、ニワトリさん」羊さんが、そう云うと、
「モー、まぎらわしいタイトルなんだなぁ」と、牛さんがまたモーモー云い出しました。
「このお話しは、白鳥さんと白鳥さんの子ども達の中に、違う色の子どもがいてね、その子がね」
と、ブタさんが、話そうとしたとき、
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「はあ〜〜」と、ニワトリさんが、ため息をつきました。
「ニワトリさん、なんで、ため息をついたの?」と、羊さんが訊きました。
ニワトリさんは、遠い目をしています。
「知りたいの?」
ニワトリさんの問いかけに、
「そりゃモー」と牛さんが鳴きました。
「あの〜、ボクの話しは……」
ブタさんが、遠慮がちに云いましたが、誰も聞いていませんでした。
「分かりました、話しましょう。むかしむかし、鎌倉と云う街に、ある有名なお菓子がありました」
「むかしなんだ、今はモーないんだね」
「あります!」ニワトリさんが、キッと牛さんを睨みながら、云いました。
「黙って聞きなさいよ!」
羊さんも、イラッとして牛さんに云いました。
牛さんは、チビチビと、飲むヨーグルトを飲んでいます。
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ニワトリさんは続けました。
「そのお菓子は、『鳩サブレ』と云う名前です。
鳩さんの形をしたクッキーのようなお菓子です」
「美味しそう」と、食べたそうな顔で羊さんは云いました。
「とっても美味しいのです」
ニワトリさんは、うっとりとして云いました。
牛さんが、我慢出来ずに質問をしました。
「美味しいって、豚マンより美味しいの?」
「シーーー」
ニワトリさんと、羊さんが慌てて牛さんを止めました。
「ねえ、いまブタマンって云ったよね」
ブタさんが、恐る恐る訊きました。
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「云ったよ。すごく美味しい豚のおまんじゅうなんだ」
牛さんが、2本目の飲むヨーグルトを手にして云いました。
ニワトリさんも、羊さんも固まっています。
「ボク、ちょっと1人になりたい」
ブタさんは、そう云って出掛けて行きました。
その晩、牛さんは夕飯抜きになりました。
そして、「みにくいアヒルの子」のことも、
「鳩サブレ」のことも、この日以来、話題になりませんでした。
悲しいですね。
おしまい
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