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🌹会ったことの無い、でも尊敬する私の親戚について🌿

従兄弟たちの結婚披露宴に、必ず届く祝電がある。

司会の人が読み終える。最後は必ずこう締めくくってある。

「従姉妹の“ダンプ松本”さまからの祝電でございました」


会場がザワつく。

「ダンプ松本って、アイツの従姉妹かよ」

あちこちから声がして来る。


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実際は従姉妹ではない。

はとこである。

けれどダンプさんは、従姉妹にした方が、

披露宴が盛り上がるだろうとの思いから、従姉妹からにして祝電を送ってくれる。


私はプロレスには全く興味がなかったのだが、当時の女子プロレスの異様な盛り上がりはよく覚えている。


《クラッシュギャルズ》という2人が、ファンの女の子たちの目をハート♥️にしていた。

対する悪役である“ヒール”がダンプ松本率いる《極悪同盟》だった。


あらゆる悪どい手を使い、クラッシュギャルズの2人を痛めつける。

会場からは悲鳴と泣き声が響き渡る。

私はテレビで何回かダンプ松本VSクラッシュギャルズ戦を観たことがあった。


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ダンプさんは当時、『日本一殺したい人』にも選ばれていた。

当時の恋人と、中野サンプラザの傍を通ったら、若い女の子たちが黒山の人だかりとなって、クラッシュギャルズの“出待ち”をしていた。


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「今ここで、キミが『私はダンプ松本の親戚の者です』何て云ったら大変なことになるだろうな」

彼は笑いながら、そう話す。

「早く行こう」と、私は足速にその場から去った。


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それから何十年も経った。

長いことお付き合いをしていた彼が一年前までいた。

彼は女子プロレスが大好きで日本中を仲間たちと、追っかけまでしていたことを訊いた。


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「私の、はとこにダンプ松本がいるのよ」

それを訊いた彼は、かなり驚いた様子だった。

そして云った。

「ダンプさんはね、プロ中のプロだよ。僕は尊敬している」

そしてダンプさんのことを聴かせてくれた。


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試合が終わり先ずはクラッシュギャルズ達が専用のバスに乗り込む。

ダンプさんたち“極悪同盟”は、絶対に同じバスには乗らず、小さなワゴン車に乗り、クラッシュギャルズ達のバスが行った後に自分たちも出発する。

同じバスに乗るわけにはいかない。

そんなところを見たファンたちは、

「なんだ、試合が終われば仲が良いんだ」

そう思ってしまうから。


それは食事をするお店でも同じだった。

極悪同盟の皆んなで、ファミレスに入ろうとして、先にクラッシュギャルズ達が居たら、直ぐにお店を変える。


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当時、ダンプさんの実家は埼玉県熊谷市にあった。

ダンプさんの実家であることは、世間にバレていた。

よく石を投げられたと話していた。

ダンプさんのお母さんが、ご近所の方々に、サインをお願いされた、と云って色紙の束を持って来ても、ダンプさんはサインをしなかった。


プロレスをしてない時はダンプ松本って優しい。

そう思われるのを避けるために。

お母さんは、色紙を一軒、一軒に頭を下げて、返して回ったと訊いた。


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どこまでも、悪役のヒールになり切った生活を貫いた。

かなりのギャラも入るようになり、妹さんには、欲しがっていた車を買ってあげて、お母さんに「何がほしい?」と訊いたら

「家が欲しい」

そう云った。ダンプさん24.5歳の時。

「熊谷から離れたところに家が欲しい。

ダンプ松本の実家とバレないように住みたい」

それを訊いてダンプさんは、お母さんに家をプレゼントした。


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私の父と、ダンプさんの父とはかなり仲が良かった。

お互いが、かなりの大酒飲みであった。

私がそんな父を嫌いだったように、ダンプさんも同じだった。

ダンプさんの父は私の父によく自慢していた。

「香(ダンプさんの本名)が毎月100万送ってくるぞ」と。

父はかなり悔しがったと訊いた。

そうだろうな、と思う。


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ダンプさんの引退の日の様子を何かで観た。

リングの上のダンプ松本さんは、

「クラッシュギャルズのファンの皆さん、

散々、酷いことをして、申し訳ありませんでした」

そう云って、深々と頭を下げていた。


         ⭐️⭐️


その姿を見て、私はぼろぼろ泣いた。

「この人は、なんていう人なんだろう」

彼女の、その姿に私は胸が熱くなった。

表舞台からは去ったけど、ダンプ松本は、まだ現役でプロレスを続けていると彼氏に訊いた。

興行は、やり続けているそうだ。

還暦になった今も。


         ⭐️⭐️


いつかお会いしたい。

電話で話すだけでもいいから。


      【完】




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