Photo by kakukakubooks #メリーゴーランド 17 紗希 2019年11月13日 23:53 今日みたいな、ぐずついた天気の遊園地は空いている。ましてや底冷えがする寒さだ。時刻は夜の7時を回ったところ。最近では夜も営業している遊園地が増えた。イルミネーションが輝いているから、家族連れより恋人同士に人気があるようだ。僕は光の海より、もっとひっそりとした遊園地が好きだ。まぁ、そんな遊園地は直ぐに閉鎖してしまうけど。好きな時間帯は夕方の4時頃で、お客さんが帰り始める時かな。霧雨が降っていると最高なんだけどね。変かな、僕の好きな遊園地。僕には妹がいて、10歳離れてるんだ。妹はイルミネーションが輝いている遊園地を知らないから、今夜は見せてあげようと思って連れて来たんだ。ちょっと待ってて、いま会わせてあげるから。いつも胸ポケットに入れているんだよ。ほら、これが僕の妹。可愛いだろう?この笑顔の写真が一番、あの子らしい。こんなに愛らしい子なのに、父や母、僕より早く、星になってしまった。病気だったんだ。太陽に当たれない病気。だから外に出るのは、いつも夕方過ぎからだった。それでも、妹は泣き言も言わなかった。家族が暗くならないように、笑ってたんだ。あの子が太陽のようだった。妹が一番好きな乗り物はメリーゴーランド。僕も同じ。詳しく言えばメリーゴーランドの傍のベンチ。早速、行こう。妹はね、馬より馬車が、お気に入りで、何度も何度も乗っては、キャッキャッと、はしゃいでた。そして、このベンチ。僕はここに座って、それを見ていたんだ。ちょうど、馬車の高さになるからいいんだよ。この写真のワンピースは妹に、とてもよく似合ってたし、妹も大好きなワンピースだったんだ。モスグリーンのビロード調の生地だった。もうすぐ営業時間が終わるね、あれ?僕の好きな霧雨だ。きっと、あの子が降らせたんだ。チビのくせに気を使う子だから。ね、霧雨っていいんだ。泣いてるのか、雨なのか、分からないだろう?……会いたいな。もう一度だけ、妹に会いたい……。 (完) ダウンロード copy いいなと思ったら応援しよう! チップで応援する #小説 #兄と妹 #霧雨 #もう会えない人 #夜の遊園地 17