階段(ノンフィクション)
4.5年前に近くにマンションが何棟も建ち、私の住む団地からも、かなりの世帯が移って行った。
毎日、何十台もの引越し会社のトラックが団地の中に止まっている風景を、私は初めて目にしたけれど、なんだか変な世界に連れて行かれた気がした。
それらのトラックは全て同じ運送会社のだったので、かなり儲かったことだろう。
因みに私は嫌いな運送会社だ。
とにかく仕事が荒っぽい。
バイトの男の子はピーチクパーチク無駄話に花を咲かす。
新築のマンションは、外観はもちろん、夜に室内の照明が点くと、昼間観るより豪華に見えた。
時折マンションの一階に出来たコンビニに行きがてら散歩をした。
ある日
そのマンションの非常階段で、女子高生が殺されるという事件が起きた。
犯人のことは知らない。同じ高校の男子生徒と訊いた覚えはあるが、ハッキリしない。
たった数年で、あのマンションにケチが着いちまったな。
そんな声も聞こえてきた。
このことが起きる1.2年前になるが、
マンションと同じくらいの距離、家から徒歩10分ほどのアパートで、殺人事件が起きていた。
数ヶ月に一度行くイタリアンレストラン。
チェーン店だから値段も安い。
だけど料理の味は美味しくて私は好きなお店だ。
事件が起きたアパートは、お店の隣りにあった。
仕事から帰宅した男性が、アパートの階段を登っている時、後ろから何者かに呼び止められ、振り向き状に……。
この事件の犯人は中々捕まらなかった。
私は早く逮捕して欲しい気持ちで落ち着かなかった。
地元の人だとすると、ゾクッとした。
夕方のニュースで連日報道していたが、やはり捕まらない。
忘れた、というか諦めかけてた頃にやっと犯人は捕まった。
けれどニュースでは、犯人も男性である。それ以外の情報は何も流さないで、終わってしまった。
被害者との関係性も全く分からないまま。
この辺りは、事件など無く平和な地区だった。
けれどその考えは、去年のこの二つの殺人事件によって消え失せた。
防げるようなら用心するにこしたことは無い。
特に《階段》には要注意
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