【童話】 ライオンの憂鬱
「なぁ、あそこに居るの、ライオンだよな」
「ああ、ライオンだな」
「なんで居んの?動物園じゃないのに」
「知らないよ。でも」
「でも?」
「なんかさ、しっくり来てるなって」
「そういえば……」
「絵になってないか」
「うん。風景に溶け込んでる」
「でさ、満足そうっていうか」
「それならいいんじゃね?」
「ほっとくか」
「その内に誰かが通報して動物園に戻されるだろうし」
「それまで、のんびりとさせてやろう」
「じゃあな、ライオン」
「遅刻しそうだから俺たち行くわ」
あ〜……また、行っちゃったよ
誰か動物園に連絡してくれないかなぁ
まんまと抜け出せたのは、いいけど
何にちもここに居るんだぜ、オレ
腹も減ったし、でも人間って不味そうだし
水は豊富なのよ
目の前が多摩川だからさ
どなたか動物園に連絡してくださーい!
帰り道が分かんないのよ
おしまい
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