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横山光輝のはなし

(画像は「マーズ」少年チャンピオンコミックス版5巻の表紙です)

横山祐而と名乗っているが、勿論本名ではない。祐而は適当、横山は横山光輝から取っている。横山光輝がまあまあ好きで、小学生の時に友達のうちで三国志を見てからのお付き合いである。その前にも別の友達の家に伊達政宗が一冊だけ床に転がっていたりした(多分親の)。最初見た時は正直うわっ表紙の絵がこわ…読む気しないわあという感想だったのだが、怖いのはカラー絵だけであり中を見るとなんかドライでかわいい絵なので衝撃だった(80年代以降の絵については本当にこの人色塗らない方がいいと思う)。
その後高校生の時、本屋を彷徨いていたら今度は鉄人28号の表紙の絵をたまたま見ることとなる。当時は宇宙百貨などのレトロフューチャー風デザイン全盛の時代であった。そんな中、現代にはなかなかないただただ景気のいい構図、印刷の質のせいもあるとは思うがちょっとズレた感じの原色づかいがとにかくかっこよく思えて今度はレトロ枠としてハマることとなる。つまり横山光輝には厳密に言うと二度出会っていることになる。
そんなわけで、最初に横山光輝と出会ったきっかけは歴史物だったけど、好きなのはと言われるとSF系の方だ。といっても彼のSFは大抵彼自身が得意としてきた昭和ロボと忍者のバリエーションであり、藤子Fのようなガチのセンスオブワンダーなそれとはだいぶ違うような気はする。しかしそれはそれであり、横山光輝のSFには横山光輝のSFにしかない良さがあるのだ。中でも一番好きなのはやっぱりマーズである。マーズには横山光輝漫画の特徴が良くも悪くもお色気以外大体入っている。妙にハードボイルドな美少年主人公(いたぶられる描写が意外にキツい)、なんか出てくるだけの女の子(恋はおろか友達にもならない。作者的にはどうでもいいらしい)、どこまでマジなのかわからない見かけも思考も変な敵、どこまでマジなのかわからないデザインのクソでかいロボット、どこまでマジなのかわからない破綻したゲームルール、真剣だけどやっぱりなんか変な味方の男、ドライ過ぎて逆にわけわからん展開。バビル2世もいいけどマーズの方がよりえーと…大丈夫?って感じで好きだ。明らかに変なのになんか安定感がある時の行者ってやつもお薦めである(近未来、戦争で滅ぶ人類の運命を変えるため、未来の少年が向かう先はなぜかいつも江戸時代。あとは大抵安定した割と読ませる時代劇が展開されるが未来はどうなるんだよ)。
じゃあ歴史物はどうでもいいかというとそれはそれで好きではある。月並だけどやっぱり三国志が思い出深い(でも実は多分4分の1くらいしか読んでないんじゃないかな。小学生だったので好きなとこだけ友達に借りたりこっそり買ったりで限界があった)。三国志の特に中〜後半くらいの、いい具合に脂の抜けた平成RPGの画面のような絵面になってるあたりが好きだ。あのコマの一つ一つがリズム打ちだけのテクノみたいなかっこよさがあるので余計なロゴとか一切入れずにそれだけをドーンと印刷したTシャツとかが欲しい。そもそもあのコマの一つ一つをそのまま画面デザインに活かしたRPGを本気で作って欲しい(なぜ誰もやらないのか)。三国志は話もいい具合に乾燥していてエグみが少ない。他の日本史物とか戦国獅子伝とかだと何か妙にエグくてちょっとやだなと思うときがある。特に戦国獅子伝はエグくて自分はダメだ(横山光輝はあまり女性というものを信頼していないと思うのだが戦国獅子伝は特にそれがすさまじい。同作は原作付きだから…と言いたいところだが全作品に割と共通する特徴だと思う)。でも平家物語はスーパードライな感じで良かった。
こんな感じで、今後から思い返すと、横山光輝の絵は決して自分の好みドンピシャというわけではないし、話も好き嫌いがかなりある。因みにすげ〜いい話だ〜と思ったことは正直全くない。
でも何かやっぱり漫画に大して触れられなかった子供時代に触れた漫画ではあるし、また自分が歴史とかを離れた時にも常に違う形で横にいた漫画ではあるので、思い入れはある。今は手放してしまってるものが殆どだけど、これからも多分ずっと一緒にいるようなそんな気がしているし、久しぶりにこうして漫画を描いてみると意外に自分が下手くそなりに横山光輝の影響を受けてるんじゃないかと思ってびっくりすることがある。義興の顔とか。全然そんなつもりなかったのに…



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