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音楽理論で読み解く「網音モマの純真」

今、私が推しているフリーペーパー「現四通信」。
その9月号が公開されています。
今月も素晴らしい特集が満載で、圧巻の内容でした。

紹介記事もありますので、そちらぜひ。

そんな現四通信9月号の「今月の概念」では、網膜ボカロが特集されています。
その中で紹介された楽曲が「網音モマの純真」です。

網膜ボカロとは、「目で聴くボカロ」という新しい音楽体験を提供するもの。音楽が流れていない状態で、視覚的にどんな曲なのかを想像しながら楽しむことが特徴です。

今回はこの「網音モマの純真」を音楽理論の視点から深掘りし、メロディの美しさやその背後に隠された構造に注目していきます。

メロディラインがどのように感情を表現し、どのような理論的背景があるのか。和声やリズムの使い方が、楽曲全体の雰囲気にどう影響を与えているのかを詳しく見ていきたいと思います。
この楽曲は、歌詞やビジュアルの魅力もさることながら、その真の美しさは音楽的な構造にあると言っても過言ではありません。

それでは皆さん、音楽理論を通じてこの特集を楽しんでいきましょう。


メロディの構造と音楽理論による解釈

「網音モマの純真」のメロディには、視覚的に表現される感情の裏に、巧みな音楽理論が隠されています。
特に、スケール(音階)の選択と、和声(ハーモニー)の流れが、この曲の感情的な要素を強調しています。

まず、イントロの部分では、全音階ではなく、半音を多用したフリジアン・スケールに似た音階が使われています。
フリジアン・スケールは、暗く神秘的な響きを持ち、聴き手に不安定さと緊張感を与えるため、まさに「網音モマ」というキャラクターの不安定な純真さを表現するのに適しています。
このスケールによって、彼女の内面に潜む影の部分や、君を独占したいという感情が、さりげなく音で示されています。

続いて、サビに入ると、この不安定なスケールがメジャースケールに転換し、突然の解放感が訪れます。
この変化は、音楽理論でいう「モード転調」という手法を使っており、これによって楽曲が一気に明るく、開放的な雰囲気に変わるのです。
この転調が、まるで彼女の感情が高まり、純粋な愛情が爆発する瞬間を描いているかのように感じられます。

テンションコードと音程の操作

次に注目すべきは、楽曲内で頻繁に使われているテンションコードです。
テンションコードとは、基本的な三和音にさらに不安定な音を加えることで、曲全体に緊張感や不安感を与える手法です。
「網音モマの純真」では、このテンションコードがイントロやAメロの部分で効果的に使われており、感情が溜められていく様子を音楽的に表現しています。

また、音程の変化にも注目してみましょう。
Aメロでは、低い音が続くことで重たく落ち着いた雰囲気が漂いますが、サビに入ると一気に高い音に移行します。
この音域のコントラストを使うことで、メロディが感情の高まりを表現しているのです。

特に、サビではメロディがスケール全体を駆け上がるように進み、聴き手に感情のカタルシスを与えます。
この緊張感と解放感のバランスが、聴き心地の良いドラマチックな展開を生み出しているのです。

リズムとポリリズムの特徴

「網音モマの純真」には、リズムに関しても興味深い仕掛けがあります。
特に、ポリリズム(異なるリズムが同時に進む手法)を使った部分があり、これが曲全体に動きと立体感を与えています。
たとえば、4/4拍子の中に異なるリズムが絡み合い、メロディにはシンコペーション(裏拍を強調するリズム)が取り入れられています。
このリズムの組み合わせが、網音モマの感情の揺れをうまく表現しています。

このポリリズムの効果で、聴く人は少し不思議な違和感を感じつつも、曲に引き込まれていきます。
異なるリズムが同時に展開されることで、メロディだけでなくリズムそのものにも深みが生まれ、聴きどころが増えるのです。

メロディの奥深さを探る

「網音モマの純真」のメロディは、ただ耳に残るだけのものではなく、音楽理論に基づいた複雑な構造を持っています。
イントロからサビにかけて、スケールコードの選び方、音程の上下の動き、リズムの変化が一体となり、網音モマというキャラクターの感情を巧みに描き出しています。

このメロディの仕組みは、聴けば聴くほど新しい発見があり、何度も楽しむ価値を与えてくれます。
網音モマの純真さと、その裏に隠された深い感情が、この音楽理論に支えられているのです。

最後に

「網音モマの純真」は、網膜ボカロというジャンルの中でも、メロディの美しさと音楽理論が際立つ作品です。
スケールの選び方やテンションコード、音程の変化、さらにはポリリズムの導入など、様々な音楽的な要素が、網音モマというキャラクターを深く表現し、リスナーに強い印象を残します。

この楽曲では、「目で聴く」という網膜ボカロの体験が、ビジュアルによって見事に表現されています。
ぜひ皆さんも、音楽理論に注目しながら「網音モマの純真」を目で聴き、その深い世界観に浸ってみてください。

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