#2020泡映画「罪の声」
TOHOシネマズ渋谷で「罪の声」を観た。
「罪の声」作品紹介
大日新聞の記者・阿久津英士(小栗旬)は、平成の終わりを前に、昭和最大の未解決事件「ギンガ・萬堂事件」の特集記事を担当することになる。
一方、京都でテーラーを営む曽根俊也(星野源)は、ある日父の遺品の中にカセットテープを見つける。
そのテープには、なんとギンガ・萬堂事件での身代金受け渡し時に使用された少年の声が録音されていた――しかもその声は、幼い俊也自身の声だった……というお話。
まあ、名前は変わっているけどまんまグリコ・森永事件をモチーフにした作品である。
キツネ目の男も出てくるしね。
原作は塩田武士の同名小説。電子書籍を買ってはいるのだが、ずっと積んだままだ。
今度読もう、ってなかなか読まないんだろうけど……
ということで、あまりネタバレをしないように感想を書いてみようと思う。
脚本めっちゃすごい
とにかく思ったのはこれだ。
上記した通り原作未読の状態で観たのだが、複雑で込み入った事件の真相を描いた原作は、かなり膨大な情報量だったろうことは想像に難くない。
映画版も142分とそれなりに長尺ではある。長尺ではあるが、冗長なシーンは一切なく、情報は過不足なくきっちり詰め込まれ、それでいてすっきりと整理されていて非常に分かりやすい。
かといって無機質な情報の羅列ではなく、適度にコメディリリーフ的な場面や登場人物たちの人柄を覗かせる場面もさりげなく織り込まれて、142分間全然ダレるとこがなかった。
こんなすごい離れ業をやってのけるなんて、誰だ脚本!?
野木亜紀子だ~~~~~!!
最近、野木作品は「逃げるは恥だが役に立つ」と「重版出来!」を観たばかりなのだが、どちらもめちゃくちゃ面白かった。
どちらのドラマもちゃんとキャラが立ってるっていうか……。
すげーな。すげー(小並感)
もちろん俳優さんたちもいい。主演ふたりや、古舘寛治と松重豊もいいが、個人的にぐっときたのは割烹の板長をやってた橋本じゅん。
悪い人ではないのだけど(悪い人ではないゆえに)うっかり口を滑らせてしまう、憎めない小市民感が非常によかった。
抑制の効いた演出がいい
あと、邦画にありがちな「主人公すぐ叫ぶ」みたいな演出がないのもよかった。
多少声が大きくなることはあっても、常識の範囲内(?)である。
(考えてみれば、主人公たちはいずれも事件の影響をほとんど受けずに大人になっている。声を使われていた俊也にしても、その事実はつい最近まで知らなかったわけで、彼らが声を張り上げてたらどう考えてもやりすぎだよな、と思う)
まあ、俳優に叫ばせたくなる気持ちも分からなくはない。
盛り上がっているところが分かりやすいし、観客も自分の好きな俳優の激情を爆発させる演技を観たかったりもするんだと思う。
ハリウッド映画と比べると予算が少なく、盛り上がりを演出する手段がある程度限定されるってのもあるのかな。派手な映像とか音楽とか……
(そういや大学時代に、映画音楽の予算めっちゃ安くて下手したら作曲家が自腹切ってるって聞いたな……)
ただ、あまりにも多くの映画がそれをやりすぎて、いまではダサい邦画の代名詞みたいになっているよね。
あ、音楽!
音楽がよかったな。これも序盤は抑制が聞いてて、クライマックスに向かう前でぐっと前に出てくるの、よかった。
こちらは佐藤直紀。「マスカレード・ホテル」の音楽がよかったな、という記憶がある。
「罪」とは何か
おもしろいおもしろい、とはだいぶ言い尽くしたので、内容の感想をちょっとだけ。
ギンガ・萬堂事件は、表向きには誰かが殺されたわけではない。誘拐されたギンガ社長は自力で脱出したし、毒入りのお菓子を食べた人はいない。
ただしその陰で、事件によって人生を狂わされた人がたくさんいる。(殺されてた人もいる)その罪は大きい。
事件が解決しようとしまいと、元通りにはならない人生もある。
時効になっても罪は消えないのである。
最後に登場する犯人グループのひとりには、その自覚がどうにも薄かった。むしろ正義を為したくらいに思ってる感じだった。
以前どこかで、罪とは他人の人生に爪痕を残しながら知らんふりをしていることだ、というような言葉を読んだ気がする(元ネタ知ってる人いたら教えてください)んだけど、そのことを思い出したのだった。