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オランダ王国大使公邸 チューリップガーデン一般公開

4月8日、東京・芝公園にある駐日オランダ王国大使館のイベント
『オランダ王国大使公邸 チューリップガーデン一般公開』へ。
これはオランダの国花・チューリップで彩られた大使公邸の庭を、
一般の方に楽しんでもらおうというもの。
普段は見ることができない公邸内部も同時公開されると知り、
チューリップというよりは建築を目当てに出かけました。

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7年ぶりの開催となった今年は、オランダ本国から取り寄せた過去最多種の70種類、約1万3000輪のチューリップが来場者を迎えました。

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オランダ王国大使公邸

竣工/1928年(昭和3年)
設計/ジェームズ・マクドナルド・ガーディナー、上林敬吉
施工/清水組
構造/鉄筋コンクリート造2階建て

関東大震災で初代公邸が倒壊したことから、1928年(昭和3年)に現在の大使公邸が建てられました。設計は京都の長楽館、聖アグネス教会などを手掛けたアメリカ人建築家J・M・ガーディナーですが、建設中に他界したことからガーディナー建築事務所の上林敬吉が設計を引き継ぎました。
外観は正面、側面、背面それぞれが左右対称のデザインで新古典主義(*)の影響が見て取れます。
*新古典主義:ギリシア・ローマ時代の建築を理想とし、調和、均整、重厚を特徴としている


それではさっそく公邸ツアーをスタート!
1階部分とガーデンを見学しましょう。

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まずは正面玄関から。
輝かしい紋章がひときわ目を引きます。

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庇はオリジナルであるかは不明ですが、
三角形のブラケットの美しい装飾に目を奪われました。

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色も形も様々なチューリップに癒やされます。


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続いて室内から見た正面玄関。
市松模様の床は1930年(昭和5年)竣工の横浜・べーリックホールや、1933年(昭和8年)竣工の旧朝香宮邸(東京都庭園美術館)ウインターガーデン(温室)にも使われています。当時の流行だったのでしょうか。

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こちらは大使の執務室。
豪華なシャンデリアがきらめく板張りの重厚な空間です。
寄木細工の床も美しいですね。
デスクの前のカラフルな椅子は
オランダの建築家・デザイナー、ヘーリット・トーマス・リートフェルトの名作『レッド&ブルーチェア』。

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次は各部屋に続くエントランスホール。
オランダの画家、ゴッホの名作『ひまわり』のレプリカが飾られた
記念撮影コーナーが用意されていました。
照明はエドワード・ファン・フリートの作品、
カーペットはマルセル・ワンダースの『Fata Morgana carpet』。

すでにお気づきかと思いますが、全室にオランダのアーティスト、
デザイナーによる作品がさりげなく展示されています。
ざっくり見た感じではオランダ発のインテリアブランド、
moooiのプロダクトが多い印象。


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エントランスホールとつながる重厚な階段。
ステンドグラスから光が降り注ぐドラマティックな空間です。

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中央のステンドグラスは弓と剣を持つ金獅子の紋章を取り入れたデザイン。
照明はエドワード・ファン・フリートの『Galata Lamps』です。

ちなみに公邸の1階は公式行事の会場として使われていますが、
2階には大使ご一家がお住まいです。
門の前で来場者と記念撮影に応じていた大使に住み心地を伺うと、
「Very cozy ! (とても居心地がいいですね)」とのことでした。

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階段脇のキャビネットに飾られているのはデルフト焼かと思ったら、
東洋風の絵柄のようです。やきものの種類と年代は不明。
日本やアジア諸国との交易が盛んだったオランダの歴史を思い出させます。


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こちらは南の庭に面したピアノルーム。
暖炉の上にはオランダの画家、アルマンドの油絵が飾られています。
張り子に使われる紙でつくられたペーパーシャンデリアはデザインユニット、スタジオ・ヨブによるもの。

最後はダイニングルームとラウンジ。
テラスに面してフレンチドアが並ぶ細長い空間です。

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公式な晩餐会が開かれるダイニングルームには
14名まで着席できる長いダイニングテーブルが。
アルコーブには19世紀ハーグ派の巨匠、
ウィレム・メスダッハが描いた伝統的なオランダの海景画が
飾られ、海洋国家としての歴史を伝えています。

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ダイニングルームの反対側は暖炉のあるラウンジ。
様式的な内装に現代的なデザインの家具が自然に馴染んでいます。
ソファと色・トーンを合わせたショルテン&バーイングスのカーペット、
木製コーヒーテーブルは機能的で無駄のない美しさを特長とする
ダッチ・デザインの一例。

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こちらにもペーパーシャンデリアが使われています。
正面奥のアート作品の両側に置かれている椅子はデザイナー、マーティン・バースの『Smoke Dining Armchair』。
ルイ15世様式の椅子を燃やして荒々しさをそのまま残した素材を使っています。なんと過激な作風でしょうか。


それでは庭に出てみましょう。

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元は石灯籠がある伝統的な日本庭園だったようです。
思わずうなってしまったのがこれ!

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池だった部分を青い小花で埋め尽くし、水の流れに見立てたアイデア。
すばらしい感性ですね!

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最後は南側の外観。
4本のオーダーを中心としたシンメトリーなデザインです。
高層ビルに囲まれながらも、緑あふれる都心のオアシスのような佇まいでした。


さて、これで公邸ツアーは終了です。
およそ100年にわたって大切に受け継がれてきた建築と
洗練されたインテリア、春の訪れを感じさせる色とりどりのチューリップを
たっぷりと楽しめたイベントでした。
お付き合いくださってありがとうございました!

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参考引用:
オランダ王国大使館パンフレット
港区ゆかりの人物データベース





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