地元の想いを受け継ぐ、廃校宿泊施設
先日、西伊豆にあるやまびこ荘という、廃校を活用したお宿に行きました。明治40年現在の建物校舎が完成し、昭和48年に廃校した大沢里(おおそうり)小学校。趣のある校舎を残してほしいという、地元住民の強い要望があり、昭和51年に宿泊施設として開業しました。
昭和54年には、伊豆の豊かな温泉を利用した25メートル温泉プール、昭和62年に食堂棟ができ、青少年宿泊施設として充実していきます。
平成23年のリニューアルし、現在のノスタルジックで一周回っておしゃれともいえる施設になったそうです。※インスタで検索すると、昭和なスクール水着を着て、この山に囲まれたプールで写真を撮るオシャレさんを見かけました。
細部への「レトロ」「ノスタルジック」がいちいち嬉しい
泊まるお部屋は2年1組。間接照明がいいかんじです。
お部屋は清潔感のあるたたみのお部屋。教室ゆえに、窓が広くて気持ちが良いです。部屋のちゃぶ台には、連絡帳と出席簿が。
連絡帳は、ホテルで言う「フロアガイド」のようなもの。校舎内の説明や、入浴時間などが記載されています。出席簿は旅帳として自由に記載が出来ます。先生がよく、怒ってバン!と教壇にたたきつけたやつだ、と懐かしくなりました。
お泊りいくよと伝えた当初、現在小学生の子どもたちは「なんでわざわざ休みの日に学校行くの?」という反応でしたが、木造の校舎、四方を山々に囲まれた自然豊かな環境、学校らしいのびのびした空気感のなかで、まさに元気いっぱいに走ったり、泳いだり、花火したりしながら楽しんでいました。
ちなみに、ちょうど同じタイミングで宿泊していたご家庭が「そりゃ廊下は走りたくなるよね~」と『廊下を走るのは元気な証拠』と捉えるおうちばかりだったのか、大小の子どもたちが走りまくっていても誰も怒られていなかったのも良かったです。げんきげんき。
毎年平均470校が廃校になっている
日本では、年間平均470校もの公立学校が廃校になっているそうです。少子化が進むいま、今後も廃校となる学校がますます増えてしまうと考えられます。
廃校施設のうち約75%は、社会体育施設、社会教育施設、医療施設、企業・法人利用、体験交流施設などに活用されています。
一方で約20%については活用の用途が決まらずに放置されてしまっていて、その維持管理費が自治体の負担となっている状況です。
廃校の利用について、多くの自治体が住民の意向聴取をしていないというデータがありました。
学校は、地域の住民・卒業生、保護者にとってかけがえのないものだと思います。私が宿泊したやまびこ荘は「地元の人たちの、小学校の校舎を残したいという強い思いからスタートした」ということでした。食堂で懐かしい給食風のご飯を作り、提供してくれていた方々が「やまびこ荘のおかげで、このあたりにはいない若い人や、子ども連れがたくさん来てくれて元気をもらえる」と話していたことも印象的でした。
わたしの子どもが通う小学校は、1学年1クラスしかないので、近い将来廃校という話がでるかもしれません。そのときは、行政からの公募や意見聴取をまつのではなく、思いを強く持つ住民・当事者でまとまって声をあげていかないとな、と思いました。