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BUCK-TICK【スブロサ】の雑感

櫻井敦司(以下あっちゃん)の訃報から1年が過ぎた2024年の12月にBUCK-TICKの新作「スブロサ SUBROSA」が発売された。
BUCK-TICKを31年聴いてきた私は、BUCK-TICKのバンド名はそのままに、活動を継続すると聞いた時「あっちゃんの声じゃなきゃBUCK-TICKではない!」などと感傷的になった。その昔、フジファブリックやフィッシュマンズも志村氏や佐藤氏の声じゃなきゃバンド名を名乗る意味がない!と思ったものだ。ただこれは個人の感想であり、バンド名を継続してくれて救われるファンや本人達の気持ちがあることも理解はしている。
2024年11月に先行リリースされた「雷神 風神 - レゾナンス」を聴いても「あっちゃんの声で聴きたかった…」という感想しか湧いてこず、BUCK-TICKに対して全然前向きになれなかった。
だからといって新アルバムを聴かないわけではなく、全曲聴いた。
結果
めちゃくちゃ良かった。しかし、やはりあっちゃんが不在である以上、BUCK-TICKではないな。と感じた。(JoyDivision→NewOrderやBauhaus→Love and Rocketsのようにバンド名変えればよかったのに、とは今でも思う)
でも音作りは当然BUCK-TICKなのだ。そこが救いだった。
以下、アルバムの雑感。


01.百万那由多ノ塵SCUM[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
→1曲目からしっかりと歌モノ。あっちゃんじゃないよ!という意思を感じたが、ちゃんと歌う今井氏の声がいい。60〜70年代の日本のロックバンドのボーカルのような声(個人の感想です)、今井氏なりの応援ソング。みんな頑張れとか軽々しく言わない。でもボクは独りなんです。
「ひゃくまんなゆたのちり」という漢字の勉強にもなる名曲。

■02.スブロサ SUBROSA[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
→今井氏お得意のラップ曲。イントロ、ベースラインが好み。打ち込みと生音のアンサンブル、大きな展開を見せず粛々と進む曲。EDM的な盛り上げ音もあるが控えめ。そこが良い。もうちょっと音が汚くても良かったかな、とは思う。

■03.夢遊猫 SLEEP WALK[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
サイケ、シューゲイザー風。平沢進氏(P-MODEL)のような雰囲気もある。間奏が97年のアルバムSSLの感じもありカッコいい。この曲も大きな展開なく淡々と聴ける。良い!

■04.From Now On[作詞: 星野英彦 / 作曲: 星野英彦]
ベースライン、ギターのカッティングがカッコいい。BUCK-TICKらしさがなく新鮮。これも大きな展開はないが心地いい。アルバム4曲目って感じの曲。

■05.Rezisto[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
→ダヴ、レゲエ風のうねるベースライン、「相変わらずのアレのカタマリ〜」の雰囲気。この暗くて重い今井氏曲は好み。 

■06.神経質な階段[作曲: 今井寿]
→インスト曲。ほぼ環境音楽。アンビエントまではいくのかいかないのか、そんな感じ。

■07.雷神 風神 - レゾナンス #rising [作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
→先行シングル曲。今井氏、星野氏のダブルボーカル。最初どっちがどっちなのかどのパートがどっちなのかわからなかった。今もわからない。(MVを見たら答え合わせが出来た)
UKサイケロック風。出だしの歌メロなんかThe VerveとかOasisとかがやっててもおかしくなさそうな感じで良い。テンポ上げたら若者受けが捗りそう。

悲しいがもうそこに櫻井敦司はいないことを痛感するMVでもある。

08.冥王星で死ね[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
→「memento mori」の雰囲気。変な歌メロと民謡、民族音楽的。シャッフルドラムとギターリフがカッコいいんだよなぁ。これ他の人がやるとめっちゃダサくなる曲。ギリギリのバランスの変化球。

■09.遊星通信[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
→これもベースラインが良い。後、ギターリフ。まさに古典ロック!で、おっさんのロック!って感じのリフが熱い。若者にはできませんよ。ライブでこのギターリフ聴いて身体を揺らしたい。

■10.paradeno mori[作詞: 星野英彦 / 作曲: 星野英彦]
→これはあっちゃんが脳内で聞こえてくるくらいBUCK-TICKらしい曲(実際、脳内であっちゃんは歌っていた)サビも流せる感じで押し付けがましくなく良い。カッコいい。

■11.ストレリチア[作曲: 今井寿]
→インドとか東南アジア風のインスト曲。きちんと歌入れて曲にしようとした?ような気がする。

■12.絶望という名の君へ[作詞: 今井寿 / 作曲: 星野英彦]
→これもBUCK-TICKらしい曲。あっちゃんが聞こえるんだよ、脳内で。泣ける。「幻想の花」のように星野氏のしっぽり良曲。

■13.TIKI TIKI BOOM[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
→タイトル見た時「あ、ヤバいBUCK-TICKの中でも苦手な曲だ」と思ってしまったが、そんなことはなかった。ベースライン主体でラップ調。何度も言うが今井氏のこういう曲はマジでカッコいい。展開はあっさりめ。

■14.プシュケー - PSYCHE -[作詞: 今井寿 / 作曲: 星野英彦]
→これもBUCK-TICKらしい。あっちゃんが聴こえる…!全曲そうだが打ち込みの効果的な使い方は凄いなぁといつも思う。メロディックでダーク。いやほんまBUCK-TICK。星野氏の声も良い。

■15.ガブリエルのラッパ[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿]
→これもBUCK-TICK!って感じ。この曲が一番聴いてて脳内であっちゃんが聴こえてきた。もちろん今井氏とのタブルボーカルね。
ダーク、ヘヴィ、インダストリアル。ポエトリーリーディング的(ノスタルジア - ヰタ メカニカリス-風)。これもカッコいいんだよなぁ。歌詞も良い。

■16.海月[作曲: 今井寿]
→アンビエント風環境音楽。決して癒される曲ではない。97年のアルバム、SSLの雰囲気。なんか怖い。

■17.黄昏のハウリング[作詞: 今井寿 / 作曲: 今井寿
→本作の傑作曲。今井氏参加のバンドSCHAFTの「魅」に雰囲気が似ているように感じた。スロウでメロウで重くて哀しい。歌詞、歌声共に良い。曲の終わりに向かう歪なギターソロ。あっちゃんへの鎮魂と追悼に聴こえ、勝手ながら胸が熱くなった。これライブで聴いたら泣く。虚しくて哀しい。夜、1人で聴くと辛い。でも良い曲。

そして個人的にこのアルバム、「黄昏のハウリング」から1曲目「百万那由多ノ塵SCUM」にリピートすると「終わり」「始まり」になり(は?)、曲の雰囲気含め更に良くなる。マジでオススメ。私は1人(いつも1人)、地方の何もない風景を車に乗って眺めながら聴いてて涙が止まらんかったです。

誰か一緒にBUCK-TICK聴きながらドライブして!(祈り 希い)

おわりに
全曲通じて思ったのは展開が控えめであっさり。前作ほど音の重厚感(ねっとり感)がなく、凄く耳触りの良い音と歌。やはり櫻井敦司の情念がなくなったことが関係しているのかもしれない。
そういう意味ではもう皆が知る「BUCK-TICK」ではないのかもしれない。素晴らしいアルバムだし個人的にも好きな作品だが、やはり、心のどこかで「櫻井敦司の歌声で聴きたい」と思ってしまうのだ。
そういう意味(どういう意味?)でもBUCK-TICKは次の作品こそ「新たなBUCK-TICK」を試されるのかもしれない。多分。
私の「櫻井敦司の喪失」に浸る間、新たなBUCK-TICKはもう前を向いているし、新しい歌も曲も良い。だからみんなも前を向いて生きようぜ。
人生辛いことしかないけども。
生きてりゃなんとかなる!

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