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原点〜昔住んだ場所を訪ねて
東京都板橋区上板橋。
18歳で上京し初めて一人暮らしをした場所を数十年ぶりに歩いた。
18歳。
都会での暮らしに高鳴る希望。
東武東上線を乗り継ぎ学校へ行く日々。
友達もたくさんできた。
私は苦学生だった。
父が余命2か月と宣告を受けていたからだ。
働くことで返済義務不要の奨学金、月々の給料がいただける事業所でお世話になり学校へ通っていた。
同級生たちが学校終わりに新宿へ遊びに行くのを横目に、私は帰宅しなければいけなかった。
食材を買いにスーパーへ行かなくてはならなかったからだ。
奨学金を得るために私は18歳で賄いの仕事に就いた。
まるで主婦のようにネギや白菜を買い、朝夕と賄いを作る日々。
当時流行りのミニスカートに生活感のある台所が不釣り合いだった。
仮面浪人しながら早稲田に合格したYくん
女の子に超絶モテていた予備校生Kくん
中国人留学生 翔さん
目上の人への言葉遣いを教えてくれたイケメンOさん
スペインに行くために働いていたナベさん
東京外語大のMくん
IT関連の勉強をしていたCくん
富山から出てきた佐々木さん
お茶目で可愛いおじさま田村さん
長野県の素晴らしさを教えてくれた英さん
そこでは学校では絶対出会うことのない、個性的な人ばかりが働いていた。
みんなが違う夢を持って働いている。そんな場所で私は人生のスタートを切った。
上板橋の喫茶店で珈琲を頼む。
その珈琲は懐かしさと切なさと、青春時代を思い出すほろ苦い味がした。
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