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曽祖父が遺した風景
![](https://assets.st-note.com/img/1731140757-fQ3u0s51YeyVKwX7vt6jckGJ.jpg?width=1200)
『地平線が見える』
『何もない広大な地に木が一本だけある』
私はそんな場所をずっと、ずっと探し求めていた。
それは北海道の思いがけない場所にあった。
「小学校の帰り道に歩いていたあの道へ行ってみよう」
ふとそう思い、歩いていたら・・・
大地に一本だけ植えてあるミズナラの木を偶然発見した。
風光明媚な場所にある、このミズナラの木は曽祖父が植えたのだ。
そう私は確信した。
70年以上前に曽祖父は不毛の地に果樹栽培を成功させ、新聞社から取材を受けた。当時の新聞の記述によると、曽祖父は「景勝地を作りたい」という夢も抱いていた。
太陽の光、青い空、緑が一面に広がる美しい場所にその木は植えてあった。
この場所は私が探し求めていた景色だった。
遠い昔。開拓当時の曽祖父の記憶を辿る場所。
誰にもわからない場所に。
曽祖父はミズナラの木を植えていた。
曽祖父は5代目ご先祖様と共に北海道の大原始林を開墾した。寒さが厳しい土地で農作物が全く育たない、食料が全く確保できない状況で壮絶な苦労をした。
どんな困難にもめげずに、粘り強く50年以上に渡ってさまざまな事業を手掛け結果を残した。
辺り一面の巨木を切り倒す。
切り倒した木を使って厳冬を凌げる簡素な家を建てる。
馬を使い木の根元を処理し木を燃やす。
開墾のための農機具購入や想定外の出費で移住前の地(本州)から持ってきたお金を使い果たす。
林業で日銭を稼ぎ、開墾のための費用に充てる。
病気で大切な子供を3人失う。
冷害凶作で心が折れそうになるが一族団結して厳しい時代を乗り越える。
作物が全く育たないとされる不毛の地で、家族を養い生きていくための術として牧場経営他を始める。
30年以上かけて不毛の地で果樹の栽培に成功する。
北海道開拓時代の壮絶さに心の涙が溢れて止まらない。
今の私が存在するのも、この美しく素晴らしい北海道の大地があるのも。
開拓してくれた曽祖父とご先祖様のおかげだ。
曽祖父が遺した記録は私の心の支えになっている。
当時苦労した話を読むと、自分の苦労など本当に大したことない。
「どんなに苦しいことがあっても、乗り越えられないことはない」
生きる力をもらった。
![](https://assets.st-note.com/img/1731569800-TVqcZjw1kMvnD3R9JXHmth8r.jpg?width=1200)
曽祖父は私が生まれる6年前に天国へ行ってしまった。一度でいいから会ってみたかった。
ミズナラは樹齢が500年から1000年とも言われ、人間よりも長生きする。
曽祖父は後世の子孫へこの風景と「勇敢」というミズナラの花言葉を遺したのだ。
曽祖父に導かれるように。
私はその場所を見つけた。
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