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「ママは良い人生なの?」Vol.23

夫は退院の2日前に体内に入れていた最後のチューブを外し、3か月ぶりに自由の身になった。ナースさんと夫と私のグループラインもやり取りが増えてくる。夫は、私とのLINEのやり取りは意見が嚙み合わないことが多いのだが、ナースさんの言葉にはとても良い返事をする。すっかり信頼していることがわかる(彼はまだナースさんに会ってもいないのに!)。専門職パワーはとても大きい。

退院直後にやりたいことが満載の夫の気持ちを落ち着かせ、通常の退院生活に気づかせるにはどうしたらよいか話し合うために、ナースさんと私は個別に電話でやり取りをすることにした。夫には「ナースさんと退院時の質問リスト作っておくね。」と言う形で伝達済み。

「退院時にすぐに答えをもらえるように質問リストを作って、事前に病棟に渡しておきましょう。ご主人が退院時に説明を受けた時、(あれ?もしかしてまだあんまり動けないのか?)と客観視するきっかけになるかもしれないですし。」と私に確認しながら質問項目を決める。

「ご主人もですが、YOKOさんが不安になったりうまくいかないときのよりどころというのが現段階の一番の目的です。」と言いながら。そして、退院当日にナースさんが自宅に来て夫と顔合わせをすることにした。これには2つ理由がある。一つは質問リストの返答や病院からもらったデータをナースさんにチェックしてもらい、更にそれらのデータを元に夫の身体の状態を本人に伝えてもらうためである。そしてもう一つは、退院日の床屋のキャンセルを促すため。その日はナースさんとの打ち合わせがあり、いつ終わるかわからないから、床屋に行くのは難しいだろうと思わせる仕組み。 

ナースさんありがとう。心強い。私一人では出てこないアイデアだ。

上記以外の細かな話しもたくさん聞いてもらい無事に終わる。携帯を見ると夫から「ナースさんはどうだった?」と連絡が来ていた。やはり気になっているのだ。病棟看護師への質問項目を作ったこと、退院後すぐにナースさんが我が家に来られること。その日の床屋予約キャンセルしたほうが良いとナースさんと話したと伝える

そしたらなんとあっさり「わかった。その日の床屋はやめるよ。」と返事が来た。ナースさんの力すごい。

このことをナースさんに伝えると、「 ご主人、突進するようでありながら、やはり不安もあるんですよね。なにかある前に、引っ張ってくれる手も必要としてくれていると思いますよ。」と彼の気持ちにも寄り添っている。

そしてこの言葉は(私の意見に全く耳を貸さない!)と、頑なだった私の心も(夫も迷いつつ決めていることなのかもしれないな)と一旦気持ちを落ち着かせてくれる。当事者への寄り添いも大切だが、一番近くにいる人に寄り添ってもらえていることがとても心強いのだ。

退院日の床屋の予約を断ることになった。よかった。不安がひとつ減った。
こうやって一つひとつ、立ち止まりながら話し合ってその時の最善を尽くす方法で進もう。

大きな病気を経て感じること。
生き方をどうするか考えるのは、全て命の選択の繰り返しなのだ。


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