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木材の世界を生きる

わたしはいま、伊那市の移住希望者向けの「ふるさとワーキングホリデー」という制度を使い、伊那市に滞在しながら有賀製材所で働いています。

多くの製材所は主に、丸太を仕入れて機械を使って挽き、乾燥させた板を注文に応じて加工を施し、お客様のもとへ届けるという役割があります。

有賀製材所では、地域の製材所ならではのつながりの中で、上記の業務に加えて賃引き、薪の販売、設計・現場管理等も担っています。詳しい内容についてはまたレポートしていこうと思います。

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有賀製材所の魅力

1月中旬から始まった、1か月間のワーキングホリデーは早くも折り返し。
初めて触れる木材の世界の深さに圧倒されています。

わたしはこれまで、フローリングや木の製品など、日常の中で形を変えて存在する木材に対して「生きている」という意識を持ったことがありませんでした。

そんな中意識の変化を感じたのは、製材所のみなさんからよく聞く「木の表情をみる」「木が呼吸している」という言葉がきっかけ。そうおっしゃるみなさんの生き生きとした表情から、日々多くの木に触れる中で、木の命を五感で感じ取っているように思いました。

わたしはほんのわずかではありますが、自然農の田んぼや畑などの作物を育てた経験があります。生きることに直接かかわる作物。自然の力で育ち、身体の一部となってくれる。プロセスを知ることは物事の本質を理解するということ。わたしなりにとても大切にしている理念です。

森で生き、形を変えてわたしたちの暮らしのなかで再度生きる。製材所は木材の一生のうちの一部を担い、さらにわたしたちの暮らしを豊かにしてくれる。作物に通ずるものがあるように感じ、とてもわくわくしています。

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木を活かす美しい職人技

製材する木材の、ひとつひとつの表情を見ている職人さんたち。
帯鋸盤(おびのこばん)という大型の機械で丸太を挽いたとき、

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一枚一枚異なる板の表情や香りの違いに感動するのだとか。

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製材後の木材は、水分が抜け乾燥していく過程の中で反ったりねじれたりするのだそう。例えばフローリング材になる板材の裏面には、変形しないよう機械で3本の切込みを入れる加工がされています。

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こういった加工は柱にも施されます。乾燥によるひび割れ防止のために、あえて一面に割れ目を入れる「背割り」という加工をすることがあります(丸太を製材する部分など、様々な基準により加工の有無が決まります)。

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人の暮らしの中で、木が長く美しく生きるための技術は鳥肌ものですね。


森で伐られた二度目の命を生きる木材ひとつひとつの「顔」や「表情」を見極め、最大限に活かしていく職人技。そして“生きる木”に敬意を持ち向き合っている職人さんたちの熱意に、刺激を受ける日々となっています。


森と人をつなげる

製材所の役割を考えたとき、避けて通れない問題だと感じたことが、日本の森林の現状。人の手が行き届かないために、森の中が混み合い、日の光が十分に届かない鬱蒼とした森。日本にはたくさん存在しているといいます。

木材がある豊かな暮らしを多くの人に知ってもらい、自然(森)がより人々にとって身近な存在になることで、明るい森が増え人々が足を踏み入れていき、また多くの木材が多くの人々の手に渡って輝き続ける。

簡単なことではないかもしれませんが、そんな世界が戻ってきてほしいと願うようになりました。

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【木は形を変えてもなお、呼吸し生き続けている】

ワーホリ2週間の中で体感している、木材の命の一生。

木材の世界はどこまでも深いのだろうと思います。

原木に新たな命を吹き込み、地元の木々を活かし続けている有賀製材所。森と人をつなぐこの場所でわたしができることは何か、学び考え、挑戦していこうと思います。


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