中敷きに太陽
夜になり、駅から自宅へ歩いていると、靴の中敷きの横たわる姿が不意に浮かんだ、それは浮かんだのみに済まず、実際にそこへ放棄されていたものだった、今にも人に踏みつけられそうな、みすぼらしい姿にはすでにそんな跡が見られた、片方しかあたりには見当たらず、初めからそれだけだったかのようだった、どうしてこんなところに、そう思えば思うほど、元いた靴の中に戻してやれないか、持ち主の足に帰れないかと考えるも、そう思う私の視野さえだんだんと後退り、遠のき、たった今近くに寄り来た私の足元が去り始めようとしていた、そのことにはっとしたのは家に着いた頃、もしくはずいぶん時間が経ったあとだったかもしれない、当たり前だけれども、その後同じ場所であの中敷きを見かけることは二度なかったし、打ち捨てられたそれが一夜を明かし、陽の光に黒色の全体が照らし渡されたのかももはや知ることはできない