雲水(うんすい)とこんにゃく問答 その1(全2回)


ポンと昔。昔々のお話し。
山梨県の芦川(あしがわ)の鶯宿(おうしゅく)っていう山奥に長徳寺(ちょうとくじ)っていうお寺があったんだよ。そこの和尚さんはたびたびやって来る雲水が難しい質問をしに来るんで困っていたんだよ。雲水とはね、修行のために旅をしているお坊さんのことを言うのさ。雲水たちはあちこちのお寺に行っては難しい質問を和尚さんたちにして、困らせて面白がっていたんだ。

さて、このお寺の近くに、こんにゃくを作っているお爺さんが住んでいたよ。お爺さんは和尚さんが困っているのを聞くと、今度雲水がやってきたら、和尚さんに代わって問答(もんどう)に答えようと言ってくれたんだ。しばらくすると、雲水がやって来た。和尚さんは雲水をちょっと待たせると、こんにゃく作りのお爺さんを呼んで来た。お爺さんは袈裟(けさ)を着ると、和尚さんになりすまして雲水の前に出て行ったんだよ。
「問答は無言にて行おう」
「よーし、よし。何でも良い」
雲水は言ったよ。問答とは質問をしてそれに答えることをいうよ。問答は雲水からの質問で始まったよ。

雲水は両方の手の親指と人差し指とで小さな丸を作ってみせた。お爺さんはそれに答えて、両手を頭の上に挙げて大きな丸を作って答えた。次に雲水が右手で三本の指を立ててみせる。それに答えてお爺さんは、右手で五本の指を出した。次に雲水が右手で四本の指を立てた。するとお爺さんは、それに答えて、あかんべーをして答えてみせたんだ。すると雲水は頭を下げたんだよ。お爺さんは、すかさず傍(そば)にあった如意棒(にょいぼう)で雲水の頭をこつりと小突いたんだ。如意棒とはね、和尚さんがお経を読んだり、お話をするときに持っている蕨形(わらびがた)をした棒のようなものだよ。雲水はね、負けたと思って、急いでお寺を出て行ってしまったんだ。ちょうどその時、和尚さんは火箸で火じろの火種をひとつ挟むと、上の方へ輪を書いて投げ上げたのを雲水に見せた。火のついている炭のことだね。昔はこうして暖まっていたんだよ。
「なんで炭火を投げ上げたりしたんじゃね?」
お爺さんは和尚さんに聞いたんだ。

今日はここまで。
読んでくれて、ありがとう。
また明日、ポン!

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