じょっぱりのお殿さま その1(全2回)
ポンと昔。
青森県の弘前(ひろさき)に伝わるお話だよ。
昔々、津軽(つがる)に、じょっぱりと呼ばれているお殿さまがありました。人に負けるのが大嫌いで、あまのじゃくで頑固で意地っ張りで見栄っ張りで、謝ることをしませんでした。なので、じょっぱりお殿さまと呼ばれていたのです。
ある時、江戸で馬術の試合がありました。馬に人が乗って行う試合です。じょっぱりのお殿さまもはるばる津軽から江戸へ行って、この馬術の試合を見たのです。将軍様も見ておられました。
馬術の名人と言われている侍(さむらい)が、池の上に青竹二本を渡したその上を馬に乗って渡ったのです。
「おみごと、おみごと、日本一じゃ」
と見ていた大名たちが大きな拍手をしてはやしたてて言いました。
「大したことはないわい。我が津軽には一本の青竹を渡る馬がおるわい。」
と、じょっぱりのお殿さまは大声で言ったのです。
「ほお、それは珍しき事。ならば一度見せてもらおうではないか」
「たやすき事よ」
じょっぱりのお殿さまは約束をしてしまったのです。さぁ、それを聞いた弘前の家老(かろう)たちは困ってしまいました。津軽にそんな馬に乗って青竹の上を歩けるものなどいなかったからです。
「じょっぱりさまの見栄っ張りには、ほとほと困り申した」
家老たち家来は困ってしまい、仕方なく岩木山の守り神の赤倉(あかくら)さまにひたすらひたすらお願いをしたのでした。すると、夢枕にお告げがあったのです。
「山本三郎兵衛(やまもと さぶろうべえ)という侍を江戸に送れ」
と言われたのです。
今日は、また明日。ポン!