へそくり十両 その3(全3回)


千代はきちんと正座をしなおして、次のように言いました。
「このお金は実家の母からのものでございます。貧乏は世の中にいつもあるものです。黙って辛抱すれば過ぎてしまいます。けれども、この度の馬揃えの儀は天下の見物です。織田のお殿様がご覧になるのです。お馬のお好きなお殿様ですから、きっと目を引いてもらえるでしょう。」
と静かに言ったのでした。早速一豊はその駿馬を買い求めてそのイベントへ、馬に乗ってパレードに参加したのでした。
「家もさぞ貧しかろうに、良い馬を買ったのは神妙な心掛けよ。武士のたしなみの深いことよ」
と一豊は織田のお殿様から褒められたのでした。このお殿様の言葉は一豊に強い勇気を与えたのでした。朝倉軍に攻め入った時に素晴らしい手柄を立てたのです。これは後で「山内一豊の武勇伝」としてお話しますから、お楽しみに。

これは千代のへそくり十両と言われるとっても有名なお話です。旦那さんのためにつくしたお嫁さんとして、女性のお手本、妻の鏡と言われています。昭和の最初のころの子供たちの教科書に載っていたお話だそうです。京都の妙心寺には1618年に描かれた千代さんの絵が残っているそうですよ。

これで、おしまい。

☆印
「馬揃えの儀」は、1581年京都にて 行われたという説がありますが、私は、小和田哲夫先生の説を支持しています。朝倉攻めの前の説としました。

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