高岳、中岳、烏帽子岳(えぼしだけ)、杵島岳(きしまだけ)、根子岳(ねこだけ) その1(全2回)


ポンと昔々のこと、肥後(ひご)の国、熊本県の東の方に阿蘇の山々が生まれたばかりのころのお話だよ。

最初は4つの山の兄弟だったよ。一番上のお兄ちゃんは、高岳といって、2番目は中岳で、3番目は烏帽子岳(えぼしだけ)。一番下の弟は、杵島岳(きしまだけ)と言ったよ。皆仲良しだった。そして、何年か過ぎた時、5番目の弟ができたんだ。根子岳(ねこだけ)と言ったよ。やせっぽで小っちゃくって猫みたいだったんだ。4つの山のお兄ちゃんたちは、うんとこの根子岳を可愛いがってやった。大嵐の時には守ってあげたし、日照りの時には風を送ったりしてあげていた。お父さんの阿蘇大明神(あそだいみょうじん)もそれを見て、喜んでいたよ。けれど、根子岳はそんな訳で、甘えっ子でわがままを言うようになってしまったんだ。

ある日のことだよ。「大和(やまと)の国に行ってくるからな。皆仲良ぉしておるんじゃよ。」とお父さんの阿蘇大明神は言って、遠くへと出かけて行った。

一番のお兄ちゃんの高岳は、兄弟たちを集めると言ったんだ。
「お父さまがお帰りになる前に、うーんと背を高くして立派な山になっておこうじゃないか。お父様も喜んでくれるだろうからさ。」
「それは良いことだね。よーし、背を高くしてやるぞ!」
中岳と烏帽子岳と杵島岳は、元気よく答えた。けれども、
「な、な、兄さん。ならば一番背が高くなった者は、この阿蘇の大将になるってことにしようよ」
と根子岳は、そんなことを言ったんだ。

それからしばらくした日のこと。
「ありゃりゃ、根子岳のやつ、いつの間にあんなに背が高くなったんだぁ?」
と烏帽子岳はビックリして言ったよ。そうさ、根子岳は日に日にグングンと背が高くなっていく。
「なぁんだって? あのチビ助の根子岳があんなに背が高くなるとは面白くないぞ」
中岳は頭から火を吹いて怒ったんだ。

今日はここまで、また明日。ポン!

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