19 大腸と微生物：その役割

大腸

　ヒトの大腸は小腸よりも太い直径約5～8cmで全長約1.6mになる。盲腸・結腸・直腸の3つに大別できる。小腸から肛門に至る器官である。腸管の太さだけでなく、腸絨毛を欠く点で小腸とは異なっている。

大腸の細菌

　17回の「小腸と微生物」で小腸の微生物について説明した。小腸内の微生物は肝臓から分泌される胆汁酸の乳化作用により打撃を受ける。ただし、胆汁酸は小腸下部の回腸でほとんどが能動輸送によって体内へと吸収される。したがって、大腸では胆汁酸の濃度は低下する。このため、大腸が多くの腸内細菌の主な活動場所となっている。

　大腸は完全に嫌気状態であり、小腸で分解できなかった食物繊維や小腸内の微生物が下ってくる。消化機能として、細菌による食物繊維の発酵、および一部の栄養素の吸収と水分の吸収が行われる部位である。レジスタントスターチなどの食物繊維とオリゴ糖は酢酸、乳酸、酪酸といった短鎖脂肪酸に分解される。

　短鎖脂肪酸は以下の機能を持っている。
１，腸壁を刺激して排便を促す。
２，善玉菌を増やしてバランスを保つ。
３，免疫細胞を活性化する。
４，悪玉菌の増殖や働きを抑制する。
　免疫に関しては小腸に少なくない機能があり、例を挙げる。
1． 腸壁から免疫グロブリンＡ(lgA)という免疫物質を出す。
2． パイエル板が、体に入ってきたものを良いものか悪いものか判断し、悪いものの時は、他の免疫組織に排除を命じる。

よい便

　続いて、吸収されずに残ったものが便を形成する。それが、排泄されるまでの間、貯留される部位でもある。水分の再吸収がうまく機能しないと、水分の多い下痢便になる。やがて、肛門から排出されるが、よい便（うんち）はよくマンガに描かれるような黄色で適度な粘度になったものである。1/3が食べカスで残りの2/3が腸内細菌である。

　糞便移植について触れておこう。健康なドナーの糞便を患者に移植することである。近年、腸内フローラを改善する治療法で行われるようになってきた。特に抗生物質によって良い細菌が減少し、C. difficileなどの有害な細菌が増加した場合に用いられる。

　腸内細菌叢を善玉菌優位な環境にする食品素材をプレバイオティクスという。人体に良い影響を与え善玉菌やそれらを含む食品・飲料・製剤（整腸剤）をプロバイオティクスという。両者を併せ持つ場合、シンバイオティクスという。

　大腸に関する慣用句と四字熟語は発見できなかった。代わりに、腹に関する慣用句と四字熟語を紹介する（一部略）。
＊慣用句
後腹が病める　　　　　　　　　　　諍いをしいしい腹を大きくし
痛くもない腹を探られる　　　　　　言わねば腹ふくる
海魚腹から川魚背から　　　　　　　思うこと言わねば腹ふくる
恩の腹は切らねど情けの腹は切る　　片腹痛い
聞けば聞き腹　　　　　　　　　　　魚腹に葬らる空腹は最上のソース
口に蜜あり、腹に剣あり　　　　　　げたげた笑いのどん腹立て
下腹に毛がない　　　　　　　　　　私腹を肥やす
杓子で腹を切る　　　　　　　　　　心腹に落つ
心腹の友　　　　　　　　　　　　　心腹の病自腹を切る
空き腹にまずい物なし　　　　　　　擂り粉木で腹を切る
背に腹は代えられぬ　　　　　　　　背より腹
狸の腹鼓　　　　　　　　　　　　　短気は身を亡ぼす腹切り刀
茶腹も一時　　　　　　　　　　　　詰め腹を切らされる
腹が大きい　　　　　　　　　　　　腹が黒い
腹が据わる　　　　　　　　　　　　腹が立つ
腹が立つなら親を思い出すが薬　　　腹が減っては戦ができぬ
腹拵えをする　　　　　　　　　　　腹立てるより義理立てよ
腹鼓を打つ　　　　　　　　　　　　腹に一物
腹に納める　　　　　　　　　　　　腹に据えかねる
腹の皮が張れば目の皮がたるむ　　　腹の立つ事は明日言え
＊四字熟語
心腹之疾　　　　心腹之友　　　　大腹便便　　　　長鞭馬腹
東床坦腹　　　　帆腹飽満　　　　腹心内燗　　　　腹心之疾
腹心之臣　　　　腹中之書　　　　腹中鱗甲　　　　捧腹大笑
腹非之法　　　　輸写心腹　　　　撃壌鼓腹　　　　河魚腹疾
怨気満腹　　　　面従腹背　　　　捧腹絶倒　　　　抱腹絶倒
飲河満腹　　　　含哺鼓腹　　　　群疑満腹　　　　口蜜腹剣
鼓腹撃壌　　　　抱腹大笑

＊食品なんでも相談所 横山技術士事務所
＊3頁目　発酵食品もの知り講座
＊4頁目　大豆総合研究所
＊技術士受験指南（農業）目次 技術士受験指南（農業）
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＊働くヒト器官 目次 働くヒト器官