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吉祥寺サバイバル Ⅲ 定常期(stationary phase)Ⅲ-8 原子力発電U男20XY8月

 今回は原発(原子力発電)がテーマになる。まずはその仕組みについて説明しておこう。原発の燃料にはウラン235を用いる。ウラン235の原子核は中性子を吸収すると2つに核分裂し、熱が発生する。この熱で水を沸騰させ、その蒸気で蒸気タービンを回すことで発電機を回して発電する。

原子力発電

 核分裂の際、2個ないし3個の中性子を出し、それによってさらに反応が続く。これを一気に起こしたものが核爆弾である。原発では中性子を吸収する制御棒があり、これを抜き差しすることで反応を制御する。核分裂反応の制御とは、開始、持続(臨界)、そして停止である。


日本の原子力発電所

 U男は57歳の原発専門家であり、この社会では一目置かれる存在である。L村病が流行りだした時点で、すべての原発を止めなくてはならないと直感した。U男の管轄は東日本の太平洋海沿いにある110.0万kWの沸騰水型軽水炉であるが、直ちにこれを停止させた。東関東大地震で数多くの原発が停止していたが、33基が稼働していた。原発関係者も次々に亡くなる状態下で、説明が理解できるに作業員に電話で指示を行い、すべての原発を停止させた。

移動式小型原子炉

 これで一段落だった。U男も近く発症し、すでに亡くなっている妻子の許に行くつもりだった。しかし、一向に発症の兆しがなく、原発に備蓄してあった食料や水も残り少なくなった。そうであれば、20Km離れているが、都市に向かってこれらを調達しなくてはならない。もし、生存者がいれば必須となるお土産を運んでいこう。トラックに積んである移動式小型原子炉である1)。これがあれば、電気の心配は皆無になる。

 最初の都市に着いた。生存者はなく、死体だらけであったが、食料と水を発見することができた。止まっている車からガソリンを調達しながら、海沿いに南下することにした。U男は海釣りの名人でもあったので、新鮮な魚介類を捕ることはよい息抜きにもなったのである。

海釣り

 入手した魚介類はその日に泊まるホテルや旅館で料理を行った。ガスを使用しているケースが多かったので、厨房はそのまま使用することができた。簡単な料理と温めたパックのご飯が夕飯になった。これに常温だがビールと日本酒を加われば、何も言うことがないという状態だった。

 改めて反省もした。生きているうちに妻子を連れてこのような小旅行をしておきたかった。これまでは仕事一途でゆっくりしたことはなかったのである。
1) 超小型原子炉 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00001/06917/

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