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働くヒト器官 1.興味深い顔と表情

 ヒトの顔と表情について考察しよう。

 ヒトの顔には重要な感覚器である眼、耳、鼻、口が集まっている。また、全体が左右対称になっている。視覚、聴覚、嗅覚で周囲の環境情報を取得、状況を掌握する。さらに呼吸や食事という生命維持に不可欠な活動を行っている。口は発声・会話によるコミュニケーションで中心的な役割を果たしている 「表情」は顔つきと顔のたくさんの小さい筋肉(浅頭筋)とそれらをコントロールした微細な動きが作り出している。他人から見た印象を左右し、他の動物には見られない複雑さが存在する。表情は感情と密接に関連している。喜、怒、哀、懼 (おそれ)、愛 (いとしみ)、悪 (にくしみ)、欲といった七情が人にそなわっているといわれている(イラスト1)。

七情:喜怒哀楽等


 意図的に表情を作ることもできる。そうはいっても、完全にコントロールすることは難しいだろう。ヒトにとって、表情は言葉(言語)を用いない非言語コミュニケーションの代表であり、複雑な社会的コミュニケーションを可能とさせている。

 顔は個人を特定する識別子となるといった社会的な役割もある。対人場面では表情によるコミュニケーションが重要である。皺や血色といった肌のテクスチャや顔の造形によって、性別や推定年齢、イメージ、精神・健康の状態、といった多様な情報を伝えてもいる。

 顔の前面に重要な感覚器が集まっている。個体識別の副産物でもあるが、表情などの視覚情報をより豊かすることが可能となった。ヒトの顔の毛がなくなっているのは、サル類全体にわたる進化の傾向の延長上にあるだろう。ただし、眉毛の発達はヒトに独特である。眉毛は汗が目に入るのを防ぐ効果があると考えてよいが、表情に明らかな変化をつける役割も担っている。ハの字型になれば、情けない表情になる。逆であれば、怒りの表情だ。

 ヒトの美醜を評価する場合、重要な特徴のひとつは顔の造作である。美男、美女、あるいは美人、美形という場合、その人物の顔について言われることが多い。また、美形な男性のことをイケメンと言うことがある。
どのような形が美しいかは文化により、また時代によっても異なる。例えば、日本人は頬骨やあご骨が発達していない顔を美人とする傾向がある。一方で、頬骨が発達しにくい欧米人は逆に頬骨を張っている方が美人とする向きがある。頬骨を嵩上げする整形手術が多い。 顔の見た目はヒトにより評価が多様といえる。魅力的な顔が持つ特徴については、さまざまな観点で研究が行われている。

顔に見える

 建物などで、窓が左右に2つ並んでいると、顔に見える(イラスト2)。同様に、ヒトは天井のしみなどに幾何学模様があると、その中に顔らしいものを見分ける場合もある。この現象は木々や雲、湖面、岩や砂漠の模様に対しても起きる。時には誤認識することがあったとしても、本現象はヒトには複雑なパターンから顔を優先的に見分ける生得的な機能があるためと考えてよい。心霊写真の多くもこの現象によって説明できると多くの心理学者は考えている。これは生存に有利だったに違いない。茂みの中にいる猛獣を識別できないと直ちに危険につながるためだと筆者は考えている。

 ヒトの目は他の動物と異なる部分がある。白目が存在することだ。白目があると向き合っている相手が、お互いに「どこを見ているのか」がよく分かる。ゴリラやチンパンジー(写真1)は互いに向き合って食事をすることがない。なぜなら、白目がないことで視線が明確でなく、相手が自分の顔を見ているのか、自分が食べている食べ物を狙っているのかが分かりにくいからである。逆にヒトは白目があるため、その疑念がわきにくい。つまり安心して仲間と食卓を囲めるようになったわけである。

ヒト以外の動物は白目がない

 ヒトはまだ150人という集団に合った脳しかもっていない。10~15人はゴリラの平均集団サイズで、ラグビーやサッカーといったスポーツの集団規模と同じである。30~50人はヒトの脳が大きくなり始めたころの集団サイズである。これは教室のクラスの人数で、一人の教師が統括してまとまれる数にある。100~150人は狩猟採集民の平均的な集団サイズといえる。私たちも年賀状を書く時に150人くらいはリストなしに顔が頭に浮かぶ。これは無条件に信頼できる人の数である1)。

 脳内で顔の情報の処理と関わりが深いことが知られている部位として紡錘状回がある。ここは後頭葉の一次視覚野の前下方に位置する腹側視覚路の一部である。他人の顔や表情を検出できなくなったり、記憶できなくなる障害が存在する。これは相貌失認と呼ばれる症候である。相貌失認になった人には、顔の各部品の認知が行えるのに、その人物が誰であるかが分からない、といった事が起きる。例えば、自分や自分の家族の写真を見せられた時、肌が白い、おでこが広い、といったことは判断できる。ただし、それが誰なのか分からないといったことが起きる。これは先天的な疾患としても、後天的な脳の損傷によっても引き起こされる。

 最後に、顔のことわざと四字熟語を紹介しておこう。
*ことわざ
一つ鏡に二つ顔   顔を見せる
何食わぬ顔     顔を直す
顔を漬す     柿が赤くなれば医者の顔が青くなる 
干顔の至り     顔を曇らせる
顔から火が出る   顔を売る
顔が広い      顔を利かす
顔が揃う      顔を立てる
顔が潰れる     顔向けができない
顔が売れる     顔色を窺う
顔が利く      顔色無し
顔が立つ      血相を変える
顔で笑って心で泣く 合わす顔がない
顔に紅葉を散らす  借りる時の地蔵顔、返す時の閻魔顔
顔に書いてある   痘痕も靨(あばたもえくぼ)
顔に泥を塗る    素顔を見せる
顔ぶれが揃う    相好(そうごう)を崩す
顔をほころばせる 大きな顔をする
顔を運める     知らぬ顔の半兵衛
顔を汚す      朝に紅顔ありて夕べに白骨となる
顔を繋ぐ      首を(縦・横)に振る
仏の顔も三度    ほっぺたが落ちる
親の顔が見たい
*四字熟語
花顔雪膚   承顔順旨
汗顔無地   朝有紅顔
顔回箪瓢   鶴髪童顔
顔筋柳骨   天顔咫尺
顔厚忸怩   童顔鶴髪
顔常山舌   破顔一笑
顔面蒼白   破顔大笑
厚顔無恥   破顔微笑
抗顔為師   無恥厚顔
紅顔可憐   容顔美麗
承顔順指  和顔愛語
1) 山極壽一(霊長類学):サル、ゴリラ研究から現代社会を考える
 https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/web/18/071000013/091800004/?P=3

*横山技術士事務所 https://yokoyama-food-enngineer.jimdosite.com/

*3頁目 発酵食品もの知り講座
*4頁目 大豆総合研究所
*中国ひとり歩記録 中国ひとり歩記 目次 ちょいワク食ノート (ameblo.jp)
*吉祥寺サバイバル 吉祥寺サバイバル 目次 ちょいワク食ノート (ameblo.jp)
*エイリアン食ノート 目次 エイリアン食ノート
*働くヒト器官 目次 働くヒト器官


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