![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/166334057/rectangle_large_type_2_c1f67d920fac611625562e9a9c1cf3cb.jpeg?width=1200)
京都の観光業のよーじやが「脱・観光依存」を目指す理由
私はよーじやグループの5代目。國枝昂と申します。2019年に従前によーじやとの関りを持たない中入社と同時に代表取締役に就任しました。
私が程なくして掲げた経営方針が「脱・観光依存」です。
「脱・観光依存」は文字通り、観光に依存し過ぎず観光以外のジャンルにも注力して事業を行っていこうという方針です。
よーじやといえばあぶらとり紙で、観光地にお店を構えているというイメージが強いと思います。
そんなよーじやの代表の立場でなぜ「脱・観光依存」を目指すのか。観光以外に何をやりたいのか。
これまで様々な媒体でお伝えしてきましたが改めてnoteにも最新の情報も交えてまとめられたらと思っております。
地元の人が通うお店から観光にシフトしたよーじやの120年
あぶらとり紙で有名になったのは最近のこと
2024年でよーじやはおかげさまで120周年を迎えました。京都の地で長年商いを続けることができ、多くの皆様に感謝申し上げます。
よーじやといえばあぶらとり紙で知られていますが、実はあぶらとり紙で有名になったのは約35年前と最近のことです。
きっかけはドラマ「家政婦は見た」で取り上げられたことでした。これを機によーじやのあぶらとり紙は一気に全国に広まり、ありがたいことに京都土産物の代表格として現在に至りますが、それ以前は化粧品や日用雑貨を販売する地元の方が利用するお店で、店舗数も京都に2店舗のみでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1734661197-9QB7TYLpoG3ft0HKZvyb5caC.jpg)
120年の歴史の中で多くの年月は地元に根付いた商売を続けてきましたが、今は観光業としてのイメージが定着し京都に住む人にとって"近くて遠い"存在になってしまった。そのような経緯があることは案外知られていません。
観光業は目指してなるものではない
観光業はなるべくしてなるものばかりではありません。
何かをきっかけに話題性が生じて、自らの意思とは無関係に観光業の仲間入りをすることもあります。
例えば、ずっと地元の人が通う中華屋さんがあります。それがとあるアイドルグループがロケに訪れたことをきっかけに行列ができるようになりました。
その結果、地元客は気軽に通うことができずにお店に通わなくなります。
一方でこの中華屋さんはSNSなどにも取り上げられるようになり、知名度が上がりました。
戦略的に目指しているケースもあるとは思いますが、多くの場合あることをきっかけに観光業化するケースが多いです。
海外で話題になり外国人ばかりが並ぶようになるお店もありますよね。
よーじやも同様です。当時はテレビドラマの放送をきっかけに店内は入場規制が迫られるほどあぶらとり紙に大勢のお客様が殺到したと聞いています。
そのような状況ではゆっくりとお買い物を。なんてことはもちろん不可能になりました。
とはいえ、ブームになった直後に観光地への出店を次々とおこなったことが、よーじやの観光業化の流れを促進し、地元京都の方々から遠い存在になったことは間違いありません。
こういった背景から京都の方々にとって遠い存在になってしまった。その選択をしたのは我々であるということは忘れてはなりません。
京都市民と観光業の関係
観光業であるよーじやにとって、観光客は欠かせない存在です。
一方で全国の中でも住民と観光客の共存が難しい状態となっているのが京都市です。
ごみ問題などを中心とした観光客のマナー問題。交通などのインフラが住民に行き渡っていない。ホテルの建設ラッシュが進み住居用、事業用物件が不足している。などなど、オーバーツーリズムがもたらす問題が深刻化しています。
私も京都市で育った一人として正直住みやすいと思ったことはありません。
京都に観光客があふれ、住民の方は困っている一方よーじやは今の状況により生計を立てている。その状態のままで良いのか。
葛藤する毎日でした。
元々は地元の人たちに支えられ事業が継続できてきたよーじや。原点に立ち返り京都の方々に存在意義を感じていただけるような企業になることが必要だと思うようになりました。
よーじやが背負った課題
そのような思いを持つ中、コロナが襲いました。
京都だけの話ではありませんが、観光地には誰も人がいなくなり、よーじやの売上は月間ワーストで97%減という悲惨な数字になりました。
私が就任して半年ほどの出来事でしたが、よーじやが観光に依存した結果です。
このことはコロナに限らず、長期的視点から考えても、観光業は常に気候や災害、紛争など外部要因による売上減少のリスクと隣り合わせであることは事実です。
だからこそ、中長期的な方針として「脱・観光依存」を旗印に掲げ、観光に依存しすぎずよーじやのファンを増やし、よーじやに何度も訪れていただけるブランドづくりをより重視していくことを決断いたしました。
そして、この頃から短期的には不可能だが、私の世代で成し遂げたい大きな目標は地元の人々に誇りに思ってもらえる企業になりたい。何年かかるかわからないが必ず目指したい。そう思うようになりました。
「脱・観光依存」はファンづくりをめざす旅
具体的なことに踏み込む前に「脱・観光依存」の説明をさせてください。
「脱・観光依存」は「脱観光」とは異なります。
京都という土地でよーじやをここまで大きくしてくれた「観光」の部分を大切にすることはこれまでと変わりませんが、観光以外の努力をしていこう。という社内的な方向性の指針として私が作った言葉です。
「脱・観光依存」は
よーじやファンを作っていくための努力をしよう。
その為にまず最初に何をすべきか。という観点でアクションプランを設定しています。
観光により作られたブランド力に依存せず、よーじやを好きになってもらい、ファンになってもらった方に支えられるブランドになろう。
今まで取り組んだことがなかったよーじやファンを作る為の旅が始まりました。
よーじやブランドの変革
まずスタートしていることはよーじやブランドの改革です。
新商品開発スピードの向上
従前は和のイメージを前面に出し、紅葉や桜の開花など観光シーズンに合わせて同じ季節限定商品を販売する。というルーティンを繰り返していました。
![](https://assets.st-note.com/img/1734662867-SI8ay97Tpiz2BMCvAtKUc5Nd.png?width=1200)
近年で大きく変わったことはラインナップと商品開発スピードです。
よーじやブランドは「肌ケアブランド」を目指すという方針を打ち出しました。
あぶらとり紙だけが有名だがあぶらとり紙以外にもたくさんのスキンケア商品があることを知っていただき、よーじやブランドを身近に感じていただきたい。日常で使用するスキンケア商品を中心としたラインナップに変更しました。
![](https://assets.st-note.com/img/1734662967-TbSelLY53vFnXHigaxEBNszj.png?width=1200)
また新商品を積極的に投入しています。
従前は年に1回あるかないかの発売ペースでしたが、今は月に1度くらいのペースで新商品が開発されています。
訪れるたびに新しい発見がある。時代に合ったニーズに応えようとしている。そういった姿勢がよーじやのイメージを変えていただくために最低限必要な姿勢だと思います。
この5年で多くの新商品かつ今までなかったような商品が増えました。
販路の拡充
商品ラインナップを増やしても京都の観光地でしか買えないとなればなかなかお店にはお越しいただけません。
今観光地以外の出店を加速させています。
コロナ禍が明け、2023年になってから、札幌、東京北千住、大阪などなど。
これらの店舗は京都の観光地に所在する店舗のような爆発的な売上は現時点では作れていません。
ただ、全く異なる傾向が見られます。
2023年末にリリースしたよーじや公式アプリ。そのデータによると清水店全体の売上のうち、アプリの会員登録をされている方の売上割合は約0.3%
他の観光地も低い数字が並びます。
一方最近オープンした札幌や東京・北千住などの店舗は30~40%と高い数字が並びます。
お店の近くの方が繰り返しご購入いただき、リピーターの方々に支えていただける店づくりができる喜びを実感する次第です。
また、卸売も始めました。
その一つがロフトさんでの販売です。今一部の商品が全国のロフト(一部店舗を除く)で購入ができます。よーじやの商品を多くの人に知っていただきたい。こういった思いからよーじやの商品を購入できる場所を様々な形で増やしています。
恐らく、京都というよーじやの強みを捨ててどうするんだ。とのご指摘いただくのではないかと思います。
現状よーじやの日本人の購入者数は年間約60万人です。日本人の1%未満しか購入いただけない現状で既存顧客に重きを置くよりも響いていない新規の方に目を向けることは当然のことではないでしょうか。
そして、京都の観光地は日本の方が気軽に観光ができる場所からはどんどん遠ざかると予測しています。
下記のような記事も書かれています。こういった現象は民間企業にはどうすることもできません。
観光地の安定は日本人を対象としたマーケットではもはや存在しないです。
日本の方によーじやをこれからも身近に感じていただけるよう観光地以外の販路を作っていきたいと思います。
健全な多角化
よーじやブランドは知名度に関しては強固ですが、一度定着したイメージを変えることは中々容易ではありません。
そして、よーじやだからと言って「よーじやブランド」だけを育てないといけない理由もありません。
新たなジャンル、新たなブランドで「脱・観光依存」を進めることにも着手しています。
それが「十割蕎麦専門店 10そば」です。そば粉100%を使用した十割蕎麦を500円から食べることができるお店です。
![](https://assets.st-note.com/img/1734680950-JEryYoSzNLVQ5qMCk17vIUxO.png?width=1200)
なぜよーじやが蕎麦屋をやるのか、と疑問の声をいただきましたが、これも「脱・観光依存」の一環です。
急速に移り行く時代に様々なニーズに応えることができる企業の方が、強いブランドに固執し続ける企業よりも結果的にリスクを低減できるのではないか。そのように考えています。
実際「10そば」はほとんどのお客様が日本人のリピーターの方です。まだまだ多店舗出店に向けては課題がありますが、様々な角度から「脱・観光依存」を進めています。
究極の目標は京都府民に認められる存在になること
よーじやというブランドを拡大していくことが究極の目的かといえばそこがゴールではありません。
私は京都の地で生まれ、人生の多くを京都で過ごしましたが、京都府に観光としての魅力がある一方、居住している方が自信をもって「良い街だ」と言えない状況にもどかしさを感じています。
京都府を元気にしたい。京都府に住んでいる人に貢献したい。その想いが日に日に強くなっています。
構想は様々ありますが、まだ皆さまにお伝えできる段階ではございません。
しかし、私自身が人生を通して貫いていきたいと思っているということは、皆さまに知っておいていただきたいです。
「京都府を元気にしたい」
そういったことは行政の役割ではないかという意見も大いにあるかと思いますが、私は民間こそが、本業以外に取り組むべきだと思っています。
民間、特にファミリービジネス企業の強みは信念をもって取り組むと決めたことは経営者の自己責任で行えることだと思います。
本気で目指したいことを行うにはステークホルダーは少ないほうがいい。
今のよーじやは信念をもって京都府の新たな魅力を作ることに突き進むことができます。
具体的な取り組みが発表できる状態になればnoteでもお伝えさせていただきます。
おわりに
長くなりましたが、「脱・観光依存」は私の人生をかけた取り組みだと思っています。
今はまだまだ道半ばで、よーじやのイメージを変えることはできていません。
でも確実に前進はしていると思っています。
手ごたえを感じることができたのが京都サンガF.C.のスポンサードでした。
![](https://assets.st-note.com/img/1734681366-cyX8sp9hYaIQPUJzB3VkAeND.jpg?width=1200)
2023年シーズンから京都サンガF.C.のオフィシャルスポンサーを始めました。
始めた時、多くのサポーターから感謝の言葉をいただきました。
私の想いは”京都に貢献したい。”その一点です。今できることをしたいという気持ちで京都サンガF.C.にお声がけさせていただきました。
今サンガサポーターの皆さまと良好な関係が構築できていることは私にとってはすごくありがたいことです。
このような関係を京都府全体に住む方と築いていきたい。そのためにはぶれずに長い時間をかけて京都の為に取り組んでいくことだと思っています。
どうか長い目で見守っていただき、いつか必ずよーじや変わったね。と皆さまに言っていただくことを目指します。
最後までご覧いただき誠にありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
よーじや 代表取締役
國枝 昂