理学療法士(PT)から一般企業への転職って実際どうなの?
僕は5年半前に、理学療法士(PT)という、病院でリハビリを行う専門職から一般企業の営業職に転職した。
※PT・・・Physical Therapist
最近、リハビリの元同僚や後輩から、「一般企業に転職考えてるんだけど、実際どうなの?」と聞かれるようになった。
実際に、理学療法士から営業職に転職してみて感じたメリットや大変だったことなどを書いていこうと思う。
理学療法士(PT)から一般企業への転職って実際どうなの?
まず、僕が病院の理学療法士から、一般企業の営業職に転職してみて感じたギャップを書いてく。
今、リハビリ職が一般企業に転職する例が増えているが、このギャップを解消できずに一般企業を去る人も多いのではないか。
病院と一般企業の違い
1.もう「先生」ではない
PTなどの国家資格を持っていると、患者さんから、
「先生」
と呼ばれて、無条件に一定のリスペクトをもらえる。
事務職などの無資格者からも、「国家資格を持っている人」という目で見られる。
でも一般企業に入ったら、国家資格を持っていようが、会社の役にたたない・売り上げをあげられなければ、ただの無能。
いつまでも先生気分でいると大いに苦しむことになる。
2.客は自ら獲得する。
何を当たり前なことを書いているんだ、と思うかもしれないが、病院に勤めていると、
「客は勝手に無限にやってくる」
と勘違いしがちだ。
実際に自分たちで営業をかけて患者をつれてくる、ということをやらないから、
「来た患者にリハビリしてやる」
みたいなメンタリティが醸成されてくるのは、まあ仕方ないとは思う。
それが、一般企業では180度変わる。
客が来てくれるのは当たり前じゃない。
客に、はっきりとわかる価値を提供しなければ使ってくれない。
転職して、そんな基本的なことに気づかされた。
3.売り上げ(数字)にこだわる
医療従事者は、
「人を助けるのにお金で動くなんて、はしたない」
みたいな論理で動いている人が多いように感じる。
僕もそうだった。
でもよく考えてみると、価値提供した分お金をもらわないと、そもそも産業自体が成り立たないし、そうなれば客や患者さんだって困るわけだ。
価値提供できていると自信があるのであれば、きっちり対価をもらう。
そして数字にこだわる。
これが「悪」ではなく「善」である、とマインドシフトするのに2年くらいかかった。
なぜ一般企業に転職したのか
1.給与が割に合わない
厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、理学療法士の平均年収は約432万円。
また、国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、給与所得者の平均年収は460万円。
僕のPT6年目の月収が額面で大体34万円で、ボーナスが半期で30万程度だったので、僕のPT6年目の年収は460万円程度だったことになる。
でもこの時は、残業を23時くらいまで毎日こなしてこの額だった。
医療職の給料は、「診療報酬」から支払われ、税金や社会保障費などで予算が決まっている。
そこにきてPTの人数自体が増えているため、当然一人当たりの取り分は少なくなる。
また、どの病院・施設も上のポストが詰まっているので、役職を上げて年収を上げるのも時間がかかる。
正直「割に合わないな」と思った。
2.人間関係や労働環境によるメンタルの悪化
PT5年目の配属先の同僚と相性が悪く、また残業も立て込んで精神的に落ちてしまったのも、転職を考えた理由の一つだ。
その病院は、地域の健康教室の運営やアスリートサポートなどを幅広く展開しており、経験を積むにはもってこいの環境ではあった。
が、業務が膨大になり疲労が蓄積してしまっていた。
PTは、経験年数が多くなるにつれて業務が複雑化、多忙化してくる傾向がある。
(研究、学会発表、新人教育、実習生対応、管理業務etc…)
業務を自分でコントロールできない環境だとかなりつらいことになる。
利用した転職サービス
1.リクルートエージェント
転職希望条件入力|転職のリクルートエージェント
様々な分野の求人があるので、医療・介護関係だけでなく、他の分野の転職も視野に入れるのであればリクルートエージェントはお勧めできる。
僕は最終的にリクルートエージェントから紹介された会社へ転職し、今も勤務している。
登録すると、エージェントと1回面談ができて(無料)、希望を詳細に伝えたれる。
2.PTOTSTワーカー
PTOTSTワーカー【理学療法士・作業療法士・言語聴覚士の求人】
医療・介護関係での転職を基本方針にしているのであれば、PTOTSTワーカーのような、専門領域に特化したサービスも良いのではないかと思う。
今はどの施設も人手不足なので、求人がない、ということはない。
こちらは頻繁にエージェントからメールや電話が来る。
そのため、「まだあまり転職を強く希望していない」人にはうっとおしく感じることもあるかもしれない。
ちなみに、僕についたエージェントが結構かわいい子で、その子に会いたいから企業面談に行ったこともあった(これも企業側の戦略か?)。
面接時に聞かれたこと
今の会社に入る際の面接で聞かれたことを、覚えている範囲で簡単に書いていく。
1.もったなくない?
今でも言われることがある。
せっかく国家資格を取ったのに、なぜ一般企業なんだ、と。
理学療法士のほうが安定もしているじゃないか、と。
これに対しては、
「頑張ればその分給与に反映されるほうが大事です。」
と回答する。
実際、転職先で頑張って年収が50万円アップすれば、4~5年程度で理学療法士取得にかかった費用を回収できる。
その後の年収も、PTより高い水準で推移するはずなので、全然もったいなくない。
2.PTのほうが稼げるんじゃないの?
これも今でもよく聞かれる。
世間の人は、どうやら「先生」と呼ばれる士業がとても稼げるものだと思っているらしい。
でも実際は、全産業平均年収よりも低いし、年収の上り幅も少ない。
3.続けられそう?
企業側は、
「こいつ腰掛けなんじゃないか?」
と疑っている。
特に国家資格保持者は、いつでもその業種に戻れるという強みがあるからなおさらだ。
僕は、
「経験が無いのでやってみないとわかりませんが、長く続けたい」
と回答した記憶がある。
この時に、変に理想論や「御社の素晴らしい社風が!」とか言わずに、現実的な処遇面を理由にしたほうが良いと思う。
4.何で辞めたの?
この質問には、今の給与に対する業務時間の非効率さと、給与の上り幅が低いため人生プランが立てにくい、というようなことを回答した。
実際、成果に応じて給与が高くなる一般企業のほうが、キャリアや人生プランが立てやすいしモチベーションにもなる。
人間関係の悪化については触れなかった。
一般企業に転職して感じたメリット
1.成果が見えやすい
僕が今勤めている会社は、売り上げ成績に応じてボーナスが増減する形態をとっている。
なかなか売り上げが出せなかった4年目くらいまでは、PT時代とそんなに年収は変わらなかったが、結果が出るとボーナスが増えるので、だいぶ年収が増えた。
わかりやすくて良い。
2.経験の幅が広がる
営業と言う職種柄、いろいろな業種とやりとりするので、世界が広がる。
接待も、最初は抵抗があったが、今は普通になってしまった。
「世の中の大半の人は、こうやって動いているのか」
と勉強になった。
今後PTに戻りたいか?
元同僚や後輩と話しているとよく聞かれる質問だが、
結論「戻りたくない」だ。
理由はさんざん述べた給与面と、営業職は自分の成長が実感できる点。
また、営業をとおして世界が広がったことで、今後やりたいことも明確になった。
むしろ、今PTの人もどんどん他分野へシフトしたほうが良いと感じている。
理学療法士のほうが良かったと思うこと
1.スポーツ(僕の場合はサッカー)現場に携われる
PT6年目で、中学年代のクラブチームのトレーナーをやらせてもらった。
もともと社会人までサッカーをやっていて大好きだったので、この経験は非常に良かった。
理学療法士として働いていれば、スポーツの現場にダイレクトに関われるのはメリットだと思う。
2.同僚にかわいい適齢期の女が多い
ふざけて書くなと思われるかもしれないが、実際にそうなのだから仕方ない。
リハビリ職は若くてかわいい女が多い。
また、PTの男は、「スポーツやってました」系のさわやかイケメンが多い。
これって人によっては、職業選びで真剣に考慮するに値することなんじゃないか。
今後も理学療法士の他分野への転職は増える
実際に、僕の取引先でも「元々PTでした」と言う人は増えている。
医療機器メーカー、ベッドメーカー、車いすメーカー、福祉用具など。
これらの業種は、ある程度PTという資格を武器にできる業種だ。
この流れは歓迎すべきことだと感じている。
実際に自分が営業職に転職してみて、専門職をやっていただけなら見れなかった世界を見ることができて、人生の幅が広がった。
リハビリの仕事が素晴らしいのは言うまでもないが、色々なことに目を向けて自分の可能性を広げるのも、正解の一つだと思う。