誕生日お出かけでの告白「まさか…そんなことが…⁉」明らかになる身体的虐待の真実
小学6年生に進級した長男トト。
小学校に入る前から父親S男が果たせなかった「プロ野球選手になる夢」を叶える為に野球を始め「身代わりアスリート」にされていた。
トトの成長に伴い、S男から要求されるレベルも高いものとなっていったが、トトには極度の場所見知りに加え、視覚情報が優先され「集中力がない」「人の話が聞けない」といった特性があった。
周囲から情報を集め、そこから自分のすべき行動を導き出すことが本質的に苦手なトトにとって「野球の試合」という場面で自分の力を出すことは極めて難しいことだ。
そんなトトに対し、S男は「やればできる!」「できないのは怠けているからや!」と体罰でもってトトに野球を教え込んでいた。
放課後も、夕食を食べた後も練習を強要し、学校以外のトトの自由な時間はどんどんと奪われていき、友達と遊ぶ時間もなくなっていった。
トトが5年生の秋、学校の担任にトトが「この生活が続くなら死んだ方がいいかも・・・」と言ったことが発端となり、父親から暴力が行われていることを問題視した学校側がS男を呼んで、先生6人による話し合いと厳重注意が行われた。
その結果、放課後の自主練習も夕食後の練習も無くすことができ、父親S男もトトに対して練習を強制したり暴力を行うこともなくなった。
かのように見えていた。
数ヶ月の間は・・・
トトが6年生に進級する前の春休み頃から、再びS男は動き出した。
少しずつ・・・少しずつ・・・放課後の自主練習は増えていき、夕食後のS男との夜の練習も再開されていった。
・・・
「なにかが起きている」という胸騒ぎ
無くなったはずの放課後の自主練習と夕食後の夜練習が再開されただけではなかった。
毎日の自主練習に加え、コーチの自宅で行う練習会に週3回、毎週金曜日にはS男とバッティングセンターに通うようになり、6年生の夏が終わる頃には以前よりも、もっとトトの生活は野球漬けになっていた。
6年生になり体力もついてきたからなのか、はたまた今のチームで野球をするのも残り少ないと感じたからなのかは分からないが、トトはその状態でも文句も言わずに受け入れていた。
ただ、家の中で見るトトの表情は決して楽しそうではなく、なんとかして父親(S男)から怒られないように振舞おうとしている様に見えた。
そして、私が一番気になっていたのは、夕食後にS男と2人で家の外で行う練習だった。
30分程度だが、戻ってくるとトトの表情がおかしいことが多い。
私とは目を合わさないようにしているが、泣いている様に見えることもよくあった。
私の知らないところで、何かが起きているかもしれない。
そんな胸騒ぎがした。
トトに直接聞いても何も答えてはくれず、モヤモヤした気持ちのまま時間だけが過ぎていた。
12月になり、トトの誕生日が近づいた。
子ども達の誕生日がくると、私は誕生日を迎えた子と二人だけで出かけるイベントを我が家の恒例行事にしている。
この二人きりで出かける時が、ちゃんとトトから話が聞けるチャンスだと思った。
私がトトに対して心配していること。
野球や父親(S男)との間で何か困っていることは無いか、中学進学以降はどうしたいと思っているのか、トトの口から本当の気持ちを聞きたかった。
そして、トトとの「誕生日お出かけ」の当日がやってきた。
・・・
衝撃の事実「まさか、そんなことが…⁉」
「誕生日お出かけ」は、トトの希望で最近新しくできたショッピングモールに行くことになった。
トトもこの日はのびのびと楽しんでいる様子で笑顔でよくしゃべってくれていた。
ショッピングモールに着いてからは二人で歩いていると、トトが手を繋いできてずっと一緒に手を繋いでいた。
背はもうほとんと私(163㎝)と変わらないくらいに大きくなっているので、私の方が手を繋がれて照れてしまいそうになった。
『小さい頃は手を繋いでもすぐに振り払ってどっかへ行っちゃってたけど、こんなに大きくなっても手を繋いでくれて、まだまだ可愛い♡』
と、心の中で喜んでいた。
お昼ご飯はショッピングモール内のフードコートでトトの好きなものを選んで食べることにした。
トトは焼肉とラーメンとチャーハンをペロリと食べていた。
お腹もいっぱいになったところで、デザートのアイスクリームを追加で買いに行く。
さぁ、本題はここからだ。
落ち着いて話せそうなタイミングを見計らって、話を切り出した。
この日、私がトトに聞きたいと思っていることは3つ。
①今、困っていることはあるか
②中学に進学してからは(野球を)どうしたいか
③父親(S男)のことをどう思っているか
これらを順番に聞いていくことにした。
「トト、最近はどう? 何か困ってることはない? 野球の練習が前より増えてきてるし、時々しんどそうやから気になってるんやけど・・・」
「えっ!? あ~・・・う~~~ん・・・」
少しトトは言いよどんだが
「・・・パパには絶対に言わんといてな」
そう前置きしてから、トトは話してくれた。
「・・・もうめっちゃ困ってる。マジで嫌。ほぼ毎日暴力されてる。」
私の全身がザワリとした。
「どういうこと?? いつ?? 晩ご飯の後のパパと家の外でやってる練習の時??」
「そう。なんか上手くできんかった時とか、話ちゃんと聞けてなかったらすぐに殴られたり、蹴られたり、ボールぶつけられる。だんだんひどくなってる。」
聞きながら私の身体が震えた。
明らかな暴力行為であり、虐待だ。
家の中では、私や他の子ども達の目があるからやらないが、誰も見てないところでは好き放題してるじゃないか!
やっぱり何にも反省などしていなかった。
アノヤロー!絶対に許せない!!
「パパはまだそんなことしてるの!? それは絶対にしたらアカンことやから! ママは絶対にそんなこと許さないで!!」
怒りで我を忘れそうになったが、必死に冷静さをかきあつめてなんとか落ち着きを取り戻した。
「フー・・・
それで、トトは中学からの野球はどうしたいの? 前は小学校までは続けると言ってたけど、今は何か気持ち変わったりしてる?」
「野球は・・・今は続けようかな、て思ってる。
ずっと野球しかしてこなかったし、オレこれしかできないから・・・」
いろいろと言いたいことはあるが、とりあえずもう少し聞いてみる。
「中学ではどんな風に野球やりたいと思ってるの?」
「オレ、楽しく野球やりたいから中学の部活でやりたいな。知ってる人もいるし。外部のチームとかはもう入りたくない。」
「パパにそのこと話した?」
「話した。部活でやりたいて言うたら『あんな弱小のチームでやっても今までのことが無駄になるだけや!絶対に外部のチームに入って、部活は陸上部に入れ!』て言われた。」
なぜトトのことなのにお前が決めるんだ??とまた怒りが湧いてくるのを必死で抑える。
「・・・そうなんや。
トトはさ、パパのことはどう思ってるの?」
「・・・怖い。めちゃくちゃ怖い。絶対に逆らえない。」
やっぱりな、と思った。
「パパのこと好き?」
「好きでも嫌いでもない。ただ怖いし逆らえない。」
「ママはトトに自分で決めたことをやってほしいと思ってるし、トトは野球しか自分にできることがないと言ったけど、絶対にそんなことはないよ。
これからだってまだまだやりたいことやれる時間はいっぱいあるし、トトが夢中になれることが他にあるかもしれない。
ずっと野球をしてたから、本当にやりたいことにまだ出会えてないだけかもしれないよ。
それにパパがトトにやってる暴力のことはママは絶対に許せないし、やめさせなきゃならない。
だから、このことはもう一度学校の先生に相談しようと思う。いいかな?」
「えーーー! パパに知れたら絶対に怒られる!」
「そこはパパに分からないようにするから。このまま暴力が続くのは嫌やろ?」
「それはそうやけど・・・
わかった。じゃあ今日話したことも絶対にパパには内緒にしてな」
「もちろんやで! トト、ちゃんと話してくれてありがとう。」
そして最後にもう一つ、大事なことを聞いておいた。
「もしさ、パパと離れて暮らすってなったら、トトはどう思う?」
「全然いい。その方がいい。」
意外とアッサリと返事が返ってきた。
「わかった。」
こうしてトトから話を聞くことはできた。
フツフツと沸き起こるアノヤローへの怒り。
そして私の中では、ある行動を起こす決心が固まっていた。
早くしなければ、トトへの暴力はどんどんエスカレートしかねない。
次の日の朝一番に小学校へ連絡して、トトの担任の先生にアポイントをとった。
トトの6年生時の担任は、去年学校での話し合いをした時にまとめ役になってくれた学年主任の先生で、6年生でトトの担任になってくれたことをとても心強く思っていた。
・・・