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家庭内で起こる「児童虐待」を市役所に相談したら、どんな対応をしてくれるのか?

長男トトが6年生の3学期のこと。

所属する少年野球チームの卒団時期も目前となり、中学進学以降の野球進路について父親S男がなにやらコソコソと怪しい動きを始めていた。

私に直接言っては来ないが、S男がトトを入れようと考えているシニアチームのパンフレットがテーブルの上に置かれているのをよく目にするようになった。

置かれているパンプレットを開いてみると、まず目につくのは月謝とユニフォームなど備品の金額部分。

めっっっちゃ高いやん!!

チームの活動内容や実績がどうこうではなく、まず料金に愕然とする。
しかも場所が遠い。市外だ。

いやいや、うちには長男の他にも育ちざかりの3人の子ども達が居て、全部で4人の子ども達を育てているのを分かってて、このチームに入れたいと思ってるわけ??

私もパートに出ているとはいえ、家計の収支を把握していればこんなお金も通う為の交通費もかかるチームに入れるという選択肢が出ること自体がおかしいだろ!と思ってしまう。

とはいえ、トト本人が「どうしてもこのチームに入りたい!」と言うのであれば、私としてもなんとかできる道を考えたいと思うだろう。

でも、そうじゃないなら。
バカ高い月謝のチームに入れたいのはS男だけで、トト自身がその進路を望んでないのなら、こんなバカげたことはない。

子どものやりたいことが反映されてない上に、無駄な出費を家計から垂れ流し続けた結果、家族が不幸になる未来しか見えない。

そんなことは絶対にさせたくない。

長男トトは小学1年生に入る前から、父親S男の希望で野球を始めた。
それからの6年間、ずっとS男に支配され続けてきた。

トトの意思は全く聞き入れられることはなく、全てS男の望むやり方で野球を続けてきた。

S男の叶わなかった「プロ野球選手になる」という独りよがりな夢をトトに託すためだ。

トトは父親からの熱心すぎる指導により、野球の1つ1つの動作は所属するチームの中でも「上手くできる」技術を身に付けていた。

でも試合の中でその技術を発揮することは難しかった。

トトは先天的に耳から入る情報を受け取りにくく、視覚情報が優先され、集中力に欠けるという特性を持っている。

言葉で注意されたことは、ほぼ頭に入らないし、なかなか定着しない。
だから何度も同じことを注意されて怒られている。

さらに複数の情報を整理して予測を立てて行動することが苦手だし、できない。
今、目の前にあるものだけを見て、突発的に行動してしまうので失敗することが本当に多い。

学校では、そういった自分の苦手な部分を知り、どうすればうまくできるかを専門の先生と見つけていく為に、2年生から通級教室に繋げてもらっている。

そんな特性を持っているトトにとって「野球」というスポーツが向いているとは、私はどうしても思えなかった。

ボールを打ったり、キャッチしたり、野球の1つ1つのプレーは楽しめていると思える。

でももしシニアチームに入った場合、「試合に勝つ」為に自分の技術を高め続け、チームプレーの中でより自分が活躍できることに貪欲な人間ばかりが集まる世界で、トトは心から野球を楽しむことができるのだろうか?

トトが楽しそうに野球をするのは、放課後に近所の友達と広場で野球をするときくらいのものだ。

父親が家に居る時と居ない時のトトの表情や行動を見ていると「父親に怒られない為に」野球をやっているようにしか私には見えなかった。

父親が居ない時に「中学からの野球」についてどう考えているか、トトに聞いた時に

「ずっと野球しかしてこなかったし、オレはこれしかできへんから中学でも続けようと思ってる。でも楽しくやりたいから部活でやりたい。」

と答えたトト。
小6で「これしかできない」ってどうして思うの!?
どんだけ父親にマインドコントロールされてるんだ!?

これまで何度も野球を辞めたいと言う度にS男から
「ここまでやってきたことを無駄にするな!」
「野球を諦めるなら他のことでもすぐに諦めるヤツになる!」
「野球をやらないなら出ていけ!」
と言われ続けてきた結果だと思うと腹が立ってしかたがなかった。

中学でも部活で野球を続けると意思表示したトトだったが、S男はそれでは満足しなかった。

6年生の3学期に入ってから、S男は週末になるとトトを入れようと考えているシニアチームの体験入部に連れていくようになった。

それを知った私がS男に言った。

「トトは部活で野球やりたいって言ってたんじゃなかった?」

「あんな弱小チームに入っても何もならん。高校のことまで考えるなら部活ではアカンのや。」

「でもトトのことやのに、アンタが決めるのはおかしいよね。トトは自分で決めれないの?」

「ハァ・・・もうええわ。野球知らんヤツは口出しせんでいいんわ。」

「いや、口出しするわ。だいたいウチに外部チーム入る余裕なんか無いで。トトの野球にばっかりにお金使えへんで。」

「そこを何とかするのが親ちゃうの? お金が無いからって子供のやりたいこと我慢させるのは違うやろ。オレは仕事の他にバイトもしてるねんで。そっちがもっとパートの時間延ばすとかしたらいいんちゃうの?」

だめだ。
やっぱり私では喧嘩にしかならない。

今進めている作戦に期待するしかない、と思った。

・・・

市役所での発達・心理検査の実施

冬休みに入る前にトトからの証言で、S男との野球の練習中に私の見ていないところで度重なる暴力を受けていると知った私は、市役所の相談窓口に相談に行っていた。

S男のトトに対する暴力を止めなければならなかったし、このままではトトは中学進学後に自分の希望と反して、S男の望むシニアチームに入れられてしまう。

野球を続けるにしろ、絶対に選択権はトトにあるはずだ。
トトが自分で選択できる状況を作るために、家族以外の第三者に入ってもらうことがどうしても必要だった。

いざとなれば児童相談所に通報することも視野に入れていたが、最初に小学校に相談したところ、市役所にも相談窓口があるという情報をもらえたので、冬休み中の年明けすぐに市役所へ相談に行っていた。

相談窓口では、しっかりと話を聞いてもらえ、トトに対する事情確認と、市役所所属の心理士による発達及び心理検査を行い、その結果を踏まえて市役所にS男を呼び、職員と心理士からの厳重注意を行ってもらえることになった。

市役所に相談に行った2週間後、学校を休ませトトを連れて朝から市役所へ行き、事情確認と心理・発達検査が行われた。

全てが終わったのはお昼をかなり過ぎてからだったが、その日の夕方には検査結果の一部を聞かせてもらえるということで、一旦自宅に戻り、夕方に私だけで再度市役所へ向かった。

相談担当の女性職員と心理士から検査結果の報告を受けた。

知能検査(WISC-Ⅳ)の結果から、トトは「ワーキングメモリー」の項目が非常に低いということが分かった。

「言語理解」「近く推理」「ワーキングメモリー」「処理速度」の4項目の数値をグラフで表したものを見ると「ワーキングメモリー」がガクンと下がっていて、一番数値の高い「処理速度」との差は「36」あった。

発達検査(WISC)についてググった知識ではあるが、各項目の数値におおむね「15」の開きがあれば、日常生活においてなんらかしらの問題を本人が感じていると言われる中で、この「36」の開きというのは明らかにトトの生き辛さを表している数値だと感じた。

心理士からの説明でも同じような説明があり、トトにとって適切な環境の中で、周りの大人によるサポートが重要だという話があった。

さらに市役所職員と心理士による事情聴取で、父親からの身体的暴力を受けているという本人からの訴えも確認できているとのことだった。

翌月に予定されている父親S男を含めた話し合いの場では、発達検査の結果から見えてくるトトにとって適切な環境作りと対応についてのアドバイスとともに、S男に対するトトへの暴力についての厳重注意をしてもらえるとのことだった。

それまでの間、私はトトがS男に暴力されないよう目を光らせておかねばならなかった。

一番暴力が行われている家の外での練習の時は、ちょくちょく様子を見に行ったり、きょうだいの誰かを一緒に付いて行かせたりしてS男とトトが二人だけになる時間を極力削るよう注意した。

そういった周囲の努力により、年明け以降はS男によるトトへの暴力はほぼ無くなってきているように感じていた。

もうすぐ市役所での話し合いの日が来る。
このまま話し合いまで持っていければ、なんとか状況を変えれるかもしれない。

そんな希望を持っていた矢先のことだった。

いきなりS男がとんでもないことを言い放ってきた!

・・・


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