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少女像移転時期で「思惑の違い」表面化 日韓慰安婦妥結に暗雲

2015年に書いた文章です。いまももつれています。

「歴史的」と欧米のメディアが高く評価した旧日本軍の慰安婦問題をめぐる日本と韓国の合意に、早くも暗雲がかかっている。ソウルの日本大使館前に設置されている少女像の移設時期をめぐる双方の「思惑の違い」が、メディアの報道で表面化しているためだ。こじれれば、合意自体に影響が出る恐れもある。

日韓の外相会談は12月28日に行われた。韓国では評価が割れている。

韓国のMBNテレビは12月30日、ソウルの日本大使館前にある慰安婦問題を象徴する少女像に関する世論調査結果を発表した。

移転に反対する人が66.3%となり、賛成の19.3%を大きく上回った。

合意に対する反発も激しい。日本大使館が入るソウル中心部の建物に31日、学生約30人が侵入して抗議活動を行う事態も発生した。韓国メディアは「合意後の暴風」と表現している。

韓国での反発を拡大させたのは日本の一部メディアが、「少女像の移転がなければ、日本政府は韓国政府が設立する被害者救済事業のための財団に10億円を拠出しない」と伝えたためだ。日本政府は、この報道を否定している。

関係者によると、どうやらこの方針は、外相会談の中で韓国側に伝えられたようだ。

ただし、どの程度のニュアンスだったのかははっきりしない。交渉の手段として「その程度の決意で臨む」という意思表明だったのか。

それとも本当に「なによりもまず少女像の移転を」と求め、それに韓国政府が応じたのかだ。私は前者だったと判断している。

会談の中身に関することなので、双方とも語らないだろう。
 
尹炳世・韓国外相は、連日釈明に追われている。31日にも「日本側に、誤解を誘発する言動を慎むように強力に警告したし、幸いなことに日本政府側も(一部報道が)事実と違っていると説明した」と述べている。
 
 少女像は、夢を奪われた従軍慰安婦の象徴として民間団体が設置した。

日本政府は、自国内の外交公館の品位維持に協力する義務があると規定する「外交関係に関するウィーン条約」の第22条違反だとして、再三韓国政府に対応を求めてきたが、韓国側は放置していた。

李明博前大統領は、日本側が慰安婦問題について誠意ある対応をしないと「第2、第3の慰安婦像が建つ」と脅しとも取れる発言をしている。

12月28日の日韓外相会談でも、少女像の移転時期について具体的な合意はなかった。

ただ尹外相は「公館の安寧・威厳の維持の観点から懸念していることを認知し,韓国政府としても、可能な対応方向について関連団体との協議を行う等を通じて、適切に解決されるよう努力する」と前向きに答えた。

ウィーン条約違反の可能性を認め、日本側の主張を受け入れると表明したものだ。場合によっては強制的な撤去も念頭に置いているとみられる。

一方、被害者救済のための財団は、「今年前半の発足を目指す」(韓国聯合ニュース)と伝えられているが、韓国では独立記念日(3月3日)や総選挙が控えており、移設のタイミングは難しい。

日韓で、今回の妥結に不満を持つ層の視線は、少女像に集中している感がある。日韓両政府は対応に苦慮しそうだ。

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