日本でベトナム人があまり批判されない理由とは
北関東「移民」アンダーグラウンド ベトナム人が増えていることには気がついているし、いったい何が起きているのか。
それを知るにはこの本がうってつけだ。とにかく、ベトナム人の多住地域に行って、片っ端から住んでいる家を探して、訪問する。友達になって彼らの生活を聞き出す。
なるほど。
この本には、いろいろなアンダーグラウンドの世界が書かれている・私が興味を持ったのは、日本人がベトナム人に親近感を覚えており、うかつに批判すると「ヘイト」だと言われることを恐れていることだ。
対象が中国人であれば、たとえ合法的に土地を購入している商行為であっても「警戒の対象」として報道が成立する。
だが、ベトナム人の話になると、無免許運転で死亡ひき逃げ事件を起こしたり、宴会の席で同胞を刺殺したりと明らかな違法行為をおこなっていても、それらに詳しく言及することは「ヘイト」になる-(26p)
そういえば、ベトナム人が犯罪を起こせば、かわいそうだというムードで報道が行われるが、中国人の場合は、許せない、たたき出せなんてムードになる。
これはどうしてなのだろうか。
調べて見ると、日本人はベトナム人に相当親近感を覚えている。
日本人のベトナム人観は、近年、大きく変化しており、概ね好意的な方向に向かっている。
外務省の世論調査(2023年): ベトナム人の日本に対する信頼度は非常に高く、「とても信頼できる」が68%、「どちらかというと信頼できる」が29%と、合わせて97%だ。これは、調査対象国の中で最も高い数値です。
survey.gov-online.go.jp
外務省の世論調査(2023年)
独立行政法人国際協力機構(JICA)の調査(2022年): 日本人のベトナムに対する印象は、「勤勉」(78.4%)、「親日的」(71.3%)、「正直」(51.9%)など、肯定的なものが上位を占めている。
www.sk-kawanishi.com
独立行政法人国際協力機構(JICA)の調査(2022年)
ベトナム人観が好意的になる背景に興味を覚えるんだが、まずは矛盾だらけの技能実習生制度にまじめに応募し、そこからドロップアウトした人が多いという負い目がありそうだ。
さらにはベトナムが、日本に植民地支配をされておらず、歴史問題を持ち出さないことにあるようだ。日本人も構えなくてすむ。
さらにはベトナム戦争を戦った経験があり、大国と戦った経験のある日本人が共感しやすい。
経済的な関係が深まっていることもある。
日本は、長年にわたりベトナムに対してODA(政府開発援助)などを通じて経済協力を続けてきた。日本企業も数多く進出している。
このことが、ベトナム人の日本に対する好意的なイメージに繋がっている。
文化的外面的にも日本ににている。勤勉で真面目な国民性であり、親近感を抱きやすい。
家族を大切にする価値観も一緒だ。
一方で、中国に対しては、歴史認識問題や領土問題などが存在し、反日感情を持つ人も少なくない。政府間、個人間で具体的に摩擦も起きている。
韓国に対しても、歴史認識問題や領土問題などが存在し、複雑な感情を抱く日本人がいる。
これらの国々との関係と比較すると、ベトナムとの関係は比較的良好であり、これがベトナム人ヘイトが少ない理由の一つと言える。
ここまで分析して感じたのは、やはりヘイトスピーチというのは、国民性が大きく違い、日本に反発する国って構図かもしれない。
ただ、この本には、在日ベトナム人は過去の内戦の経験からか問題解決のため相手を刺殺することがあると書かれている。5万人に1人が刺殺されていると計算しているが、これはけっこうヘイトに近い気がした。特定の犯罪と民族を結びつけるのは危険で、一方的だ。