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拘束令状と逮捕状の違い 韓国の場合

新年になっても続くのは韓国の大統領弾劾に関連するニュースだ。年末31日には大統領に逮捕状が出たというニュースがあった。

ところが日本のメディアはこれについて拘束令状と書いているところと逮捕状と書いているところがある。

肝心の韓国メディアは「逮捕令状」と書いている。司法制度の違いがあるのは知っているがどうももやもやする。ここら辺をしっかり整理してみたい。

それにしても正月早々、頭が混乱する(笑)

さて日本語のメデイアを眺めてみよう。

拘束令状派

  • ロイター日本語版: 2024年12月31日、韓国の裁判所が尹大統領に対する拘束令状を発付したと報じています。 これは、尹氏が今月3日に戒厳令を宣布したことに関連し、内乱容疑で捜査されているためであり、現職大統領に対する拘束令状の発付は韓国で初めての事例とされています。


  • NHK 韓国のユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領による「非常戒厳」をめぐり、警察などで作る合同捜査本部は裁判所に請求していたユン大統領の拘束令状が認められたと明らかにしました。これに対し、大統領の弁護団は、令状の効力の停止を求める仮処分を申し立てたとしていて、大統領側と捜査機関の間で攻防が続く見通しです。    


  • 朝日新聞 韓国の現職大統領に31日、初めて拘束令状が発付された。「非常戒厳」を出した尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は内乱の首謀者として捜査当局に拘束される可能性がある。だが警察とは別組織の大統領警護処の警護員が抵抗する恐れもあり、執行できるかどうかが焦点になる。


  • 共同通信 【ソウル共同】韓国の聯合ニュースによると、高官犯罪捜査庁は31日、尹錫悦大統領に対する拘束令状の有効期限は1月6日で、令状執行の日程は未定だと明らかにした。


逮捕状派

  • 日本テレビ: 尹大統領が捜査当局の出頭要請に4回目も応じなかったことを報じ、合同捜査本部が逮捕状の請求に踏み切る可能性がある。

    1. 日テレNEWS24


  • 毎日新聞: ソウル西部地方裁判所が12月31日に尹氏への逮捕状を発付したと報じています。 尹氏側は「捜査権がない」と主張している。

    1. 毎日新聞


  • 読売新聞: 韓国の裁判所が現職大統領に対する逮捕状を発付したのは初めて。


肝心の韓国メディアは、一貫して현직 대통령 체포영장 발부영장 집행 '긴장'(現職大統領に逮捕令状 令状執行緊張)テレビ朝鮮

なんと

逮捕令状

なんです。

  • 一体どっちなんだ?ということになるんですが、結論から言うと。両方とも正しいと言えそうです。そもそも日本では拘束令状という概念がないと思います。逮捕令状とはいわず、逮捕状が一般的です。


https://www.keijihiroba.com/10min/1min.html

逮捕というのは容疑を固めて一気に身柄を拘束して、被疑者を取り調べて、裁判のプロセスに送り込むことです。

逮捕状と取ったということは、被疑者はほぼアウト、有罪確定にかなり近いことを意味します。もちろん誤認捜査やえん罪もありますよ。

ただ韓国の逮捕令状は、日本とは手続きがちがうようです。

逮捕が2段階ある韓国

つまり、日本では1つの手続きである逮捕が、韓国では逮捕と、拘束という2つに別れている。逮捕は前段階で、短時間身柄を拘束するもの。拘束は特定の場所に被疑者を置いて、本格的に取り調べをするものです。

拘束令状派は、この実態にそって、拘束令状と書いているのでしょう。

また逮捕状派は、ごちゃごちゃ考えず、韓国の表現に従いましょうということだとおもいます。

以下の記事を訳してみました
https://www.hankyung.com/article/202412318095i
尹錫悦大統領に逮捕令状が発付、予想より早かった理由
執筆:クォン・ヨンフン記者  韓国経済新聞

裁判所は現職の尹錫悦大統領に対し、逮捕令状と押収捜索令状を1日で発行しました。通常、逮捕令状は緊急性が高い場合に迅速に処理されますが、大統領のように身元や所在地が明確な人物に対する逮捕令状がこれほど早く発付されたのは異例です。

発付の背景
韓国最高裁の統計によると、2023年には逮捕令状の97.7%、押収捜索令状の90.8%が発行されています。尹錫悦大統領の逮捕令状を発行したソウル西部地裁の発付率はさらに高く、98%に達しています。

今回の逮捕令状は、警察や捜査機関による請求から約33時間後に発行されました。令状請求の対象が現職大統領という特殊なケースだったため、通常より時間がかかると予想されていましたが、迅速に処理されました。

法曹関係者によると、尹錫悦大統領が捜査機関からの出頭要請を3回無視したことが発付の決め手になったと見られます。逮捕令状は調査の必要性があれば発行可能であり、今回の決定は難しいものではなかったと分析されています。


NHKニュースより

今後の展開


捜査本部は近日中にソウル漢南洞の大統領官邸で逮捕令状を執行する予定です。逮捕令状の有効期間は発行日から1週間で、逮捕が実行された場合、48時間以内に拘束令状の発付を検討しなければなりません。拘束令状が発付されれば、10日以内に捜査を終了して検察に事件を引き渡す必要があります。

ただし、尹錫悦大統領が逮捕に応じない可能性もあります。弁護人団は「捜査権のない機関が請求した逮捕令状が発付されたことは納得できない」と反発しています。

また、警察はこれまでに大統領官邸の監視カメラ映像や通話記録サーバーの押収を試みましたが、大統領警護チームの抵抗により失敗しました。

韓国の刑事訴訟法では、軍事機密が関係する場所の捜索や押収は責任者の許可が必要であり、大統領官邸は最高レベルのセキュリティが適用されています。

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この記事でも、逮捕は「短期間で、比較的緩やかな身柄拘束をともなう取り調べ」という意味だと分かります。過去には逮捕令状を出しながら、物理的抵抗にあい、令状が失効したケースもあったようです。

用語の違い混乱招きそう


今回の場合も、尹大統領側は逮捕に応じない構えです。長期化したり、令状執行ができなかった場合、「逮捕状が出たのに、どうして身柄を拘束できないのか」という読者の疑問が膨らむのではないかと思います。

いろいろな文献を読むと、逮捕、拘束を慎重に行う韓国の方が、先を行っているようです。

参考 古いですが日弁連の報告書があります。






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五味洋治 Yoji Gomi
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