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「愛の不時着」演技の秘密 NHKアナザーストーリー
もう放送から1年以上たっているのに、NHKが取り上げた。何をテーマにしているのだろうかと思ったら、いやあ多角的に分析している。
とても全部は文字化できない。とりあえず演技の部分だけ起こしてみたが、ヒットするだけのことはある。同時に、多くの人の心に訴える韓国ドラマの面白さを伝えている。
以下番組の一部です。
そこから韓国から不時着した財閥令嬢が、北朝鮮の軍人と恋に落ちる禁断のラブストーリーが始まります。配信と同時に韓国、アジアを飛び出し全世界で爆発的人気に。
特に日本では2020年の流行語大賞にまでノミネートされました。
一体このドラマの何がこれほどまでに世界中の人々を魅了したのか。
第1の視点は、北朝鮮に不時着した韓国の財閥令嬢を演じた俳優、ソン・イェジンが軍事境界線を越えたという突飛な状況から始まるドラマを、ラストまでどう演じるか。
役への緻密な分析と、この作品にかけた覚悟、今回特別に明かしてくれました。
世界中が夢中になった愛のドラマ
その知られざる真実に迫るアナザーストーリー。
ソン・イェジン
このドラマは韓国以上に海外の方々が本当に愛してくださいました。これまで出演した作品の中でも、どうしてこの作品がここまで人気なのか最初は不思議でたまらなかったのです。
特殊な関係の中の普遍的な物語
まずはやはり、韓国と北朝鮮の特殊な関係への好奇心でしょう。
でもそんな物珍しさで見ていたら、次第に誰にも通じる愛の物語になっていく。まるで、ロミオとジュリエットのような悲しくも美しいラブストーリーに。
国は違う文化の違うけれど今同じだから、世界の皆さんに愛されたんでしょうね。
当然韓国の俳優たちが北朝鮮の人々を演じるのだ。
これが一筋縄ではいかなかった。
北朝鮮兵士の中でも人一倍愛国心の強いいチスを演じたヤン・ギョンウォン。
最初の壁となったのは言葉だったという。
撮影前に1ヶ月半脱北者の先生に北朝鮮の言葉をみっちり特訓してもらいました。移動しているときもずっと録音したものを聞いてからは韓国にいても耳は北朝鮮に飛ばしていたんです。ちょっと、
文字や文法は同じ韓国と北朝鮮だが、使われる単語は微妙に異なる。例えばチスが、セリを呼ぶときに使っていたこの言葉。
娘を表す単語だが、北朝鮮と韓国では全く異なる。(言葉をメモし忘れた)
発音、言葉使いにこだわる
ドラマ制作にあたっては、脱北者13人をメンバーとする諮問委員会がつくられ、俳優陣には発音、話し方、歩き方まで徹底特訓が行われた。
あえて禁断のテーマに踏み込む以上、中途半端ではいけないっていう徹底したリアリティが求められた。
ヤン・ギョンウォン
先生には言葉だけでなく、北朝鮮のあらゆることを教えてもらいました。例えば韓国の兵役は2年ですが、もう北朝鮮では10年以上だから同じ戦友としての絆が想像以上に強いとか。
知るほど、私が演じる兵士に興味が深まって、自分なりに分析したんですよ。一見彼は視野の狭い頑固者に見えるけれど北朝鮮のことを知ってから見ると、軍人としての責任感、国に対する誇りは、人一倍強いんじゃないかと思った。セリが話す韓国の文化に食ってかかったのもそのためなんです。
さらに、突然韓国人のセリが不時着して現れたら、彼女の考え方や言葉は、チスにとっては理解しがたいはず。それを明確に表現しました。
劇中、セリが語る韓国の現実を徹底的に拒否し続けるチス。
韓国への拒否感だけではない。セリとときを過ごすにつれ、国家に対する感情は人に対する親近感へと変化していく。
違いだけでなく、共通の部分を伝える
ヤン・ギョンウォン
例えば共産主義国家で、人々は絶望の淵にいるんだろうとか、でも、北朝鮮でありアフリカであれ、人間誰しも家族や愛する人を守りたい人、友情を持っている、それは同じです。
国は違っても、人は同じさらに違いはしっかりと見せつつも、同じところ共感できるところをしっかりと演じる。
それが一番大事でした。
ソンは、台本を読んでセリが市場で迷い、ジョンヒョクが掲げるロウソクを見て再会するというシーンを、このドラマのピークと考えた。この場面をピークとするべく、前半部分の演技を逆算したという。
ソン・イェジン
物語前半のセリはとにかく強い人物として演じました。誰にも頼らないし、くじけそうな場面でも自分なら何とかできると思っている。
強気でやってきたけれど、どうしようもない状況になったとき、ジョンヒョクが自分を助けてくれる姿を見て、初めてセリは本当の愛を知ったのです。
ソン・イェジンの緻密な計算
セリを助けるために韓国に潜入したジョンヒョクが北朝鮮に送還される最後の別れが訪れる。
セリフもその状況自体も悲しくて、撮影中ずっと本当に胸が痛かったし、どう演じたらこの気持ちが伝わるか悩みに悩みました。
決して超えることのできない、軍事境界線で撃たれるたれる危険を顧みず、愛のため境界線をまたぐそれでも引き離されてしまう。
その時ジョンヒョクの手を固く握っていたのに、その手が離されてしまう瞬間がスローで映し出されるのですが、あれは元々台本にはありませんでした。でも私は本当に一番心から乗客の手を離したくなくて、気付いた中で手を伸ばしていたんです。
2人が引き裂かれてしまうつらさがにじみ出ていて、いいシーンになったと思います。
人生って予測不可能で、計画通りにはいかないものが出てくる。でも前に進んだら思わぬ目的地に達することもあり、私自身もそんなふうに思いました。
セリがドラマの中でセリが最も好きだというセリフがある。
インドでこういう。間違った電車も目的地に運んでくれる。
今の私を見て、とんでもない乗り間違いで、なんと38度線を越えちゃった。でも、思い通りにいかなくても、将来を考えてみて、あなたには幸せでいてほしい。
どんな列車に乗っても必ずいい目的地に着いて欲しい。
丁寧に描くことで性格をにじませる
セットに行くだけで、そこは北朝鮮、まるでタイムトリップしたみたいで、自分がどこにいるかわからなくなるくらいでした。
建物だけではないディテール。
それをよく示すのが、料理のシーン。
不時着の翌朝、整理のためにジョンヒョクが作るのは北朝鮮ではおなじみだというトウモロコシ粉の麺だった。
イ・ジョンヒョ監督
「あのシーンには力を入れました。薬味は何を入れるか、麺はどうやって茹でるか。
ヒアリングをもとに細かく撮影しましたそのディテールがそのままジョンヒョクの性格を示すことにも繋がるからです。出会ったばかりのセリのために丁寧に作る姿がね、それだけ北朝鮮を美化するわけにはいかない。
けれど、丁寧に描けば自然と温かみが出るよね」
リアリティを突き詰めた製作は監督の想像を超えた演技も引き出していく。
特に印象的だったのはセリが村を旅だったあと、彼女が残した手紙を裏のおばさんたちが読むシーンだ。
韓国から不時着したことを村の人々にはずっと隠していたセリ。
置手紙で初めて自分は韓国から来たことを打ち明ける。
本当はコミカルなシーンで涙が
イ・ジョンヒョ監督
あそこは台本上は、仕方ないわねという感じのコミカルなシーンだったのですが、その時には班長役のキム・ソヒョンさんがその手紙を読んでいたら、急に泣き出したんです。
これはこんなに切ないシーンだったのかと気づかされました。
演じた当の本人にこのことを伝えてみると、監督、それはないです。
あそこをコミカルなシーンって、ありえない。
やっとそれと親しくなったのにいなくなってしまって、それだけでも悲しいのに行き先は韓国で、生きて帰れるかもわからない。
あの子は韓国、私は北朝鮮は死ぬまで会えない運命じゃないですか。
憎みたくてももう憎めないわけで。この子が生きてるといいなって思うだけで、そりゃ涙が出ますよ。それをどうやってコミカルにするんですか。
シナリオが未完成のままエンディングを最初に撮影した
すべてが計算ずくで作られた愛の不時着だが実は1ヶ所だけ、想定外のパートがあったという事実を言うと、エンディングです。
まだ見ていない方にはとびきりのネタバレとなりますのでご注意を。
このドラマのエンディング38度線で涙の別れをしたと思うんですね物語は3年後。
ジョンヒョクは軍を除隊し、一度は諦めたピアニストの道へ。
セリは新たに音楽財団を設立していた。
音楽の道を通じて2人はスイスで再会を果たす。
もうこれ以上ないエンディングだ。
イ・ジョンヒョ監督
実は全く違うエンディングになる予定でした。舞台は38度線に近い開城工業団地地区、ここで2人は遠くから見つめ合う。
南北の関係を考えると、リアリティのある終わり方はこれが関の山だったんです。
イ・ジョンヒョ監督
地味すぎますよね。あまりに切ない終わり方になっていたと思います。
でも、最初の台本のエンディングはそうでした。
スイスで始まったドラマの撮影。
スイスは、実は2人が不時着よりも7年前、運命的な出会いをしていた場所でした。
この出会いのシーンを撮影して終わりのはずだった。
しかし、撮影に同行していた脚本家のパク・ジフンさんが急に言い出したんです。ラストシーンもスイスにしたいのですが、撮影できますか。いや慌てましたね。
主演の2人は途中の波乱万丈の展開を全く知らないまま、先にエンディングを取らざるを得なかったんです。
あの作品は幸せな贈物
ソン・イェジン
急遽、出会いのシーンの直後にエンディングをとることとなったことは正直びっくりしましたね。どれだけ恋しくて、この人と再会したのか想像できないまま撮ることになったので、2人の感情が積もり積もって声が満ちるのはわかっていたけれど、まだ脚本ができていないのであれですよね。
だからあのシーンが一番大変でした。
どんな感情でスイスにいるのかわからないので、あの場面は本当に苦労しました。でもこうやって後になってもインタビューでお話するような作品って滅多にない手紙でしたよ。
遠方からそういう意味でも、私にとって幸せな贈り物のような作品ですよね。
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