ザッカーバーグの言う「発言の自由」は認められるか。
世界で30万人のユーザーがいるフェイスブックが、社名をメタに変えた。しかしこの決定について、懐疑的な見方が多い。
同社の寄せられた批判に、きちんと答えず、社名だけ変えたというものだ。
いまメタにどんな批判が寄せられているのか。
インスタは若い女性を蝕んでいる
きっかけになったのは、元同社社員のフランシス・ホーゲンさんだ。彼女は、フェイスブックの内部文書を大量に持ち出し、社会で起きていた論議を暴露した。それはfacebook papersと呼ばれ、今米国のメディアが読み込みを進めている。
日本では詳しく報道されていないが、SNSの危険性を示す貴重で、怖い内容が含まれている。
最も先行して報道しているWall street Journal紙によれば、2つの問題に要約できる。
10代の女の子の32%は、彼らが自分の体について不満を感じているが、その原因はInstagramの利用が原因だった。
Instagramが10代の若者の人生の満足度を下げている。
この指摘についてメタ側は正式に反論している。
良い面もあると反論
2021年9月26日午後4時(太平洋標準時)に最初に公開されました。ウォールストリートジャーナルの記事とは反対に、Instagramの調査によると、12の幸福に関連する問題のうち11において、これらの困難な問題に苦しんでいると述べた10代の少女は、Instagramが問題を悪化させるのではなく改善したとも述べています。
ネガテイブな影響もあるが、ポジテイブな部分もある。報道は一面的だというのだ。メタ側は報道の根拠となった社内のスライドも公開している。
一応は評価できるが、問題をこじらせているのは、今回の対応だけではない。メタは過去にも、内部で問題を把握しながら公表しなかったことがたびたびある。儲けを最優先にする企業の姿勢が批判されている。
過去にもスキャンダルが
最近の大きなスキャンダルは、ブリテイッシュ・アナリティカをめぐる事件だろう。これはフェイスブックの個人情報が、2016年の大統領選で悪用された問題だ。
ドキュメンタリーや本にもなっている。
一方で、メタの創業者ザッカーバーグは、2019年、ジョージタウン大学である演説を行った。ここに彼のSNSへの哲学が語られている。
発言の自由を守ることが大切とザッカーバーグは言うが
この中で彼は、こう語っている。
「言論は不条理な恐怖という拘束から人を自由にする機能をもつ──解決策はより多くの言論であり、沈黙の強制ではない」
「わたしたちは言論の自由の側に立ち続けることができます。その混沌ぶりを理解していたとしても、そして偉大な進歩のための長い旅には受け入れ難い考えとの対決が必要だと信じていたとしてもです」
「あるいは、そのコストはあまりに大きいと判断することもできます。それでも、わたしたちは言論の自由を擁護し続けなくてはならない。その考えを伝えるために、わたしは今日ここに来たのです」
難しい言い回しだが、いろいろな問題があっても、自由な発言を守ることでその矛盾を解決できるという、自由主義的な考え方だ。
この発言については各方面から批判が起きている。
憎悪の増幅に一役かっているのではないか
ツイッターも同様だが、個人のSNSフィードの投稿を並び替えるフェイスブックのアルゴリズムでは、ユーザーが共有しコメントするものに重きがより置かれるため、扇動的または意外性のある情報が最も多くの人の目に留まることが多い。
フェイスブックのアルゴリズムは、刺激的なものを目に触れさせる構造となっており、「憎悪の増幅に一役買っている」というものだ。SNSにおける自由を語る上で格好の材料だろう。
一方、企業としての対応にも疑問の声がでている。
Johnson & Johnsonとの違い
メタは現実にinstagramで起きていたことに、何らの対応策もとらなかった(ようにみえる)。一部米国のメディアは、今回のメタの危機管理について、製薬大手、Johnson & Johnsonと比較している。
同社の看板商品である鎮痛剤、タイレノールに毒物が混入し、死者が出た事件だ。私もかろうじて覚えている。同社は、顧客を守り、製品を守るという目標の下、迅速に動き信頼を回復した。
それに比べ、メタは、Instagramに対する指摘にしっかり対応しないまま、企業名を変え、主力の商品をより発展させようとしている。
メタはいまのまま世界で利用者を維持できるのか。わたしは懐疑的に見ている。