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韓国で「内乱罪」が成立する条件とは

今回の尹錫悦大統領の戒厳令が、内乱罪に該当するかはかなり微妙です。

韓国における内乱罪は、刑法第87条で規定されています。

刑法第87条
「大韓民国の領土の全部または一部から国家権力を排除したり国憲を乱そうとしたりする目的で暴動を起こした者は、死刑、無期懲役または無期禁錮に処する」

この条文から、内乱罪が成立するためには以下の3つの要件が必要であることがわかります。

目的:国家権力の排除または国憲の紊乱
手段:暴動
場所:大韓民国の領土の全部または一部
「暴動」とは、多数の人が共同して暴行または脅迫を行うことを指します。単なるデモや集会は暴動にはあたりません。

内乱罪は、国家の存立を脅かす重大な犯罪であるため、最高刑は死刑と非常に重くなっています。大統領は在職中は刑事訴追を受けないという不訴追特権がありますが、内乱罪はこの例外となります。

尹大統領の非常戒厳宣言が内乱罪に該当するかどうかについては、憲法機関の権能行使を不可能にする目的があったかどうか、そして暴動に該当する行為があったかどうかが争点となります。

尹大統領は、戒厳令の目的は国会が連発していた閣僚への弾劾発議と、予算の一方的削減に対する警告であり、実際の危害を加える意図はなかったと主張しています。しかし、一部では有力国会議員の身柄拘束を指示していたとの証言もあります。

非常戒厳は、行政事務と司法事務を掌握し、令状なしで逮捕・拘束・押収・捜索を可能にし、言論・出版・集会・結社の自由を制限するなど、社会に与える影響が非常に大きいため、その発令要件は厳格に規定されています。

過去の判例では、全斗煥・盧泰愚内乱事件において、1980年5月18日に国会議事堂を封鎖し、国会議員の自由を拘束した行為が内乱罪に該当するとされました。

しかし、今回の状況は、国会の開会が完全に不可能になったかどうかは微妙です。

尹大統領の非常戒厳宣言に関する内乱罪の捜査は、法的には警察が中心となります。

検察と公捜処も告発状を受理していますが、法律上、内乱罪を全面的に捜査する権限を持つのは警察だけです。

最終的な判断は検察が行います。警察が捜査を行ったとしても、その結果は検察に送られ、検察が内乱罪の成立の可否を判断し、起訴するかどうかを決定します。

公捜処も捜査を行う可能性はありますが、公捜処は裁判官、検察官、警務官以上の警察公務員しか起訴できないため、大統領を起訴することはできません。そのため、公捜処も捜査結果を検察に送ることになります。

つまり、捜査は警察が中心となりますが、最終的な判断は検察が行うことになります。検察の元トップを検察が捜査する、果たして可能でしょうか?

弁護士の中には、当然内乱罪に該当するとの主張もありますが↓、もう少し当事者の供述や物証が必要でしょう。


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五味洋治 Yoji Gomi
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