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アントン・ヴェーベルン(1883-1945):ヴェーベルンを巡っての8つの断章(1)

I.

作曲者の意図と作品と、いずれに忠実であるかは明らかで、問題は主体の意図ではなく、作品がどうであるかということだ。
だが、社会的なものに還元する傾向への懐疑は、寧ろ拒絶反応に近い。

もし社会学的還元を是とするなら、「作曲者」はどうなる?天才の神話は?あるいは「個性」と言われるものは?(それらの否定のためにそうした還元がことさらに顕揚された面もあるだろう。)
観相学が結局、個人を媒体に生産された音楽を、社会を映し出す鏡として利用するものなら、ヴェーベルンその人はどうなってしまうのか?

私にとっては、音楽史よりも、ヴェーベルンの環境でもあり、拘束条件でもあった社会の相貌よりも、ヴェーベルンという人の、何なら「媒体」としての人間の特性の方が重要なのだ。

勿論、性格・個性というのも或る種の「檻」かも知れないが。だが、そうした感じ方にもヒュブリスが潜んでいないだろうか?

(2002--2007.6.14, 2024.8.31 noteにて公開)

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