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日記・ポリフォニー・門:ジッド『狭き門』を読む

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ジッド『狭き門』の読解。原題「日記・ポリフォニー・門:ジッド『狭き門』からモノローグ・オペラ「新しい時代」へ」, 2013.9.15 Web公開, 2014.6.28 blogで…
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日記・ポリフォニー・門:ジッド『狭き門』からモノローグ・オペラ「新しい時代」へ(25)

25. だがそれでもなお、アリサに欠けていたものが何であったか、というのはジェロームとともにアリサを記憶するものにとってのみ相応しい問いだろう。 ベンヤミンの短いが重要な「狭き門」についての文章で、ベンヤミンはジッドの企てはそもそも最初の構想からして不可能事であったと 語っている。ところで、ベンヤミンは、紫水晶の十字架について、全くの勘違いをしている。それはベンヤミンの主張にとって実は致命的で、 「狭き門」の破綻を指摘するベンヤミンの主張が、今度はその一点から破綻することは

日記・ポリフォニー・門:ジッド『狭き門』からモノローグ・オペラ「新しい時代」へ(5)

5. Efforcez-vous d’entrer par la porte étroite.(Luc, XIII, 24)という銘が題名を直接指示してしまうという率直さ。だが一方で「狭き門」の コノテーションは極めて広大である。ドストエフスキーとカフカはジッド自身が参照しているから、カフカの「審判」「掟の門前」はどうしても 浮かび上がって来る。カネッティの説自体は受容し難いとしてもなお、フェーリツェ・バウアーとカフカ自身の関係が「審判」とある種の構造的な 対応を示している

日記・ポリフォニー・門:ジッド『狭き門』からモノローグ・オペラ「新しい時代」へ(2)

2. 「狭き門」における音楽の役割に留意しておこう。リュシル・ビュコランの弾くショパンのマズルカ。 ブルジョワの子女に相応しく、ピアノを弾く習慣はリュシルからアリサとジュリエットの姉妹にも引き継がれる。以下でピアノを弾いているのはジュリエットだ。 ついでクリスマスの場面、ジュリエットがテシエールとの婚約をする場面でプランティエの伯母とジュリエットが話をしている場面で、家具調度の 一つとしてピアノが描写される。 引き続き、ジュリエットに関する記述。今度はジュリエットがエ