ファイヤープロレスリングワールド GWF奮闘記 2-2 太田天兵、将来を考える
「城戸選手とは戦いたいのかと?」
「そう。トシがどう思ってるか聞きたい」
梶原と太田はリングを作りながら、今後の戦いについて話していた。
太田はヘビー級に移るため、増量をしている。そのためにただ筋肉をつけるだけでなく、正しく太くなるために、梶原にアドバイスを仰いでいた。
昔の選手がいっていたが、体を見に来るのもプロレスはある。そのためにしっかりと鍛えたいと太田は思っていた。
同時に以前メインイベント後取材に応じてくれた城戸真絃が梶原への挑戦を表明した。
いつもなら、九州で同じメインイベントに出た桜神が主催している自主興行にて、挑戦を受けているだろう。
だが、今ならGWF内での試合で城戸選手を呼ぶ事が出来る。その際に梶原はどう思うのか、太田は聞きたかった。
「もちろん、戦うつもりではいる。桜神選手の興行『百花繚乱』でも、ウチのリングでもな」
「いつかは、分かってないよね」
「まぁ、急かすな。秋ぐらいにはメドをつけたいと社長も言っている」
梶原はマスク越しに笑うと、鉄骨を入れ始めた。基本、GWFはリングを作る時は選手が行うようにしている。
大きな団体などでは専門の会社や若手がする仕事らしいが、小さな団体故に小暮やマッスルを始め、梶原なども行うようになっていた。
特に今回はジュニアヘビー級が主体となっているので、ヘビー級の選手は手持ち無沙汰になっていた。
本来なら、前座で行う試合もここ昨今の流行りで縮小し、多くとも、5試合までとしている。
また、選手の応援も他団体と並んで、拍手のみとしており掛け声は出さないようにお願いをしていた。
「秋か。俺もその頃にはヘビー級の体に仕上がってるかな」
「そうでないと困る。また、流行りも止んでくれて他の試合も行いたいしな」
「今回も公民館よく貸してくれたね」
「その分、専務が苦労したそうだがな。体温計や消毒薬、マスクの準備などちょっと困ったと言っていた」
「ふうん」
梶原が鉄骨を入れ終わると太田も確認のため、動かす。さすがにびくともしない。梶原は腕力は変わらないのに、こういうのはうまかった。
自分はどこか不器用ではあるといえ、ここら辺がまだ差なのだろうかと思う。
「それにだ。秋には一つ考えがあると社長はおっしゃっていた。これはレイヴンズにも伝えている」
「何が?」
梶原は顔を寄せ小声で話す。
「GWFにはヘビー級のチャンピオンベルトが無い。その代わり無差別のベルトを一つ作ろうという話が上がっている」
「無差別」
「重量に関せず強いものなら集まるだろうという、考えだ。それに権威を持たせたいそうだ」
「そうなると、俺が仮にだけど……トシやカズ、シュンたちとも戦えるという事?」
太田の目じりが鋭くなる。こういう時こそ、戦いたいという欲が強くなるのが自分でもわかった。
「まぁ、そういう事だ。ひょっとしたら、また城戸選手や桜神選手。今日呼んでいる他の団体選手も呼ぶかもしれないとは話していた」
「そうこなくちゃね……俺もジュニアヘビー級はずされて、どうしようかと思っていたから」
「まぁ、楽しみにしていろ。俺も、お前といつか対角線に立つ事もあると思うしな」
「そういう戦いなら、歓迎するよ。昔の借りを返さないと」
「しつこいな、天兵は」
また、梶原は微笑を浮かべると太田と共に、エプロンを取りに行った。マットの基盤はレイヴンズが仕上げていた。
数時間後、松山市の某公民館にて拍手が起こる。
太田は一人、マスクをしながらセコンドに立っていた。
あのリングでいつか―
漆黒のリングでは戦いが続いていた。
その中で一番を証明できるだろうか。太田はなんとなく頭にベルトを腰に巻いた自分を描いていた。
GWFジュニアヘビー級トーナメント 一回戦 第一試合
八坂 一真 対 三条 太一
GWFジュニアヘビー級トーナメント 一回戦 第二試合
IKKI 対 ファントム・ヤマプロ(ヤマプロ)
GWFジュニアヘビー級トーナメント 一回戦 第三試合
パク・カンヨル 対 陣内 瞬
GWFジュニアヘビー級トーナメント 一回戦 第四試合
チェ・ディバーノ 対 嬉野・スパイダーJr.(新がばいプロレス)