追伸、月子です。〜歌声のなかの少女〜No.9
月子は歌っていた。
浄化の歌を。
今まで感じたことのない感覚。
天と地とを繋ぐかのごとく からだの中心に 柱が伸びる。
内から響く声は 魂そのもの。
知ることのなかった本当の声に 出逢う 。
人間のエゴも欲もない。
自分のようで 自分でない。
何からも 誰からも 囚われることなどない。
ただただ 無。
海底のような静寂のなか 在るままの姿を見ていた。
小さな女の子が 歌っている。
正面を向いて。ひたすら、ひたすら 真っ直ぐに。
歌うのがたのしくてたまらない といったように。
とても純粋に。
小さな女の子は 歌いたかったのだろう。
ずっとずっと。
それは高く高くに 自らを捧げるような。
祈りにも似た 奇跡。
その小さな女の子は、紛れもなく 月子自身である。
月子は時折、涙ぐみながら 歌っていた。
高揚していた。それも激しく。
震えていた。命が燃えて。
今となっては いったいあれは何だったのだろう。桜がみせた魔術なのか 大断捨離がみせたヒカリなのか。いずれも流れのなかにいたことは確かであった。
ただひとつ言えるのは、月子のなかに すでにあったのであろう。そして、目を開けたのであろう。