追伸、月子です。〜私は土星である〜No.12
出来たての揚げたこ焼きをかじり 少しずつ口へ放り込む。
時が止まったかのように 頭のなかは 桜との会話の振り返りが続いていた。。月子が薄々感づいていたことは あながち間違いではなかったようだ。
「 だから 合わなくなって辞めていくひとが多いの。うちの子も同じようなタイプだから 疲れるだけだから辞めなさいって言うけど辞めんのんよ。」
と自然と手が止まり 話す桜。
ずっとずっと考えていた。入居者さんからとても喜んでもらえる やりがいのある仕事である反面、やはりカラダへの負担は大きいのが実情だ。きっと自分は、ひとり自分のペースで無心にできるような仕事が向いているのだろう と思わずにはいれない。
辞めれるのであれば 辞めているであろう。
だが、それに代わる仕事がないのだ。短時間の今の給料と変わらないものは 現状見つかっていない。水準を落としたくはない。月子には家庭があるのだ。独身のように自由気ままに とはいかない。
自分の好きなこと やりたいこと も考えたことがある。でも考えても考えても わからないのだ。何がしたいのかわからないうえに ひとつに絞ってそれを続けていくなんて到底できないと思った。
もはや、人生を彷徨う 使命がわかりません難民だ。
しかし 月子は恵まれている。しかも、すっっっごく!! だって職場のひとたちは皆やさしくしてくれるし 希望休だって子どもに合わせて取らせてもらえる それに賞与だっていただけるのだ。
月子はこんなことも思っていた。今の現状というのは 魂が本当に求めるものを手に入れるための準備期間なのではないか、と。そのための 学びや体験が必要なのかもしれない。
占星術でいう 土星とは試練という意味がある。だが、この星はコツコツと努力し忍耐することができる。そして 時間はかかるが最後には目的を達成し成功を収めるのだ。
もしかすると、私は土星なのかもしれない…
大器晩成型なのだ!だから今は自己完成に向けてのステップのひとつに過ぎないのだ!
そう暗示をかけることもできる。
どこに重きを置くか どこに視点を持ってくるかで まるで景色が違って見えるから 不思議である。
目的のわからない月子には 放浪の旅にでるなんて 思い切ったアクションは不可である。
いま在るものに 環境に 感謝しつつ、じっくり根を下ろしていけばいいではないか。
自然に 流れるままに身を委ねてみようではないか。
月子は 空になった皿の載ったお盆を 返却カウンターへと運び 中のおばちゃんたちに 「 ごちそうさまです!」とひと声すると 出口を後にした。