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ケンコーのソフトフィルターを比較してみた。(ブラックミスト、ホワイトミストなど)


先日、一念発起してSonyのα7Ⅳとレンズを買いました。そしてその解像度にビックリ。「今どきのカメラはこんなに撮れるんですか!?」と隔世の感がありました。

その一方で、巷の写真表現はもっと多様で、解像度一辺倒というわけではなく、「シネマティック」な表現も流行しているのだそうです。そしてその際にはソフトフィルターが使われる事があると知りました。なるほど、確かに何でもかんでもハッキリ見えれば良いというものではないですよね。

調べていくと、ケンコー(KENKO)のソフトフィルターは種類も豊富で様々な表現が出来そうです。けれど、その細かい違いを理解して商品を選ぶのはなかなか難しそう…。

そこで、自分にとって丁度よいソフトフィルターを探すために複数種類を購入し、比較してみることにしました。

◆自分にとってのちょうどよいソフトフィルター探し


↑ホワイトミストNo.1


その前に、まず自分は何を撮りたいのか?という用途を理解する事から始めましょう。目的が違えば、フィルターに求める要素や描写も当然変わってくるからです。

私の場合、主な被写体は家族(子ども)、友人、日常のイベントや街角の風景などです。「作品」としての作りこんだ絵作りでは無く、どちらかというと気軽なスナップに近いスタイルです。なのでソフトフィルターに求めるものは「将来、写真を見返した時に当時の空気感を思い出せるような、程よいソフト効果」です。ありもしない極端なモヤモヤ効果や色の変化まで求めることはないでしょう。記憶を刺激するための、ひとさじのスパイス的効果を期待したいところです。

◆メーカーのガイドによると

では実際にフィルターを選んでみましょう。ケンコーのカタログには、ソフト効果の強さによって、以下のような表が用意されています。もちろん、フィルターの描写の違いとはソフト効果の強弱だけではありませんが、選ぶ基準としては便利です。

↑ソフト効果度の比較(出典:ケンコーフィルターカタログより)

なのでここからソフト効果の弱いものを中心に、

・ブラックミストプロテクター
・ブラックミストNo.05
・PRO1D プロソフトン クリア(W)
・ホワイトミストNo.1

の4種類を選び、比較してみることにしました。


↑フィルターは直径によりお値段もだいぶ違うので、比較用には49㎜で揃えることにしました。
気に入ったら82㎜とかも検討したい…。

◆逆光で比較

夕方の西日が差し込む様子をフィルターを変えながら撮影しました。
レンズはもちろん、絞り、シャッタスピード、ISO、ピント位置などは変えていません。(太陽の動きは刻々と変化していくのでその点はご容赦を。)
さて、どのような変化が見られるでしょうか。

camera: SONY α7Ⅳ
lens: SIGMA 70mm F2.8 DG MACRO

↑フィルター無し
最近のレンズはとても優秀で、逆光を正面から撮っても、
ゴーストやフレアが出ないですね。
↑ブラックミストプロテクター
光源が大きく白飛びし、周囲に黄色味がかった光が拡散しています。
一部ゴーストも発生しています。まぶしさが伝わってきますね。
↑ブラックミストNO.5
光源がさらに大きくなっています。光の拡散も強くなり、
光源下の木のディテールは一層見えづらくなってきました。
↑PRO1D プロソフトン クリア(W)
全く違う描写になりました。太陽と柵が溶け合うような独特の滲み方をしています。
こってり(?)した、ドラマチックな印象です。
↑ホワイトミストNO.1
光が拡散する様子はブラックミストに近いものがありますが、光源が大きくなっていません。
また光の拡散が白いのが特徴のようです。

◆屋内で比較

次に屋内でも比較しました。斜め後ろからの弱めの光です。

↑フィルター無し
↑ブラックミストプロテクター
カメラ本体のシャドウが持ち上がり、コントラストが弱くなったのがわかります。
↑ブラックミストNO.5
カメラ本体のシャドウがさらに持ち上がりました。
ボタン周りにソフト効果がでています。
↑PRO1D プロソフトン クリア(W)
シャドウはあまり持ち上がっていませんが、エッジが滲むソフト効果が出ています。
特にアウトフォーカスしている一輪挿しの輪郭に顕著です。
↑ホワイトミストNO.1
シャドウを持ち上げる効果が4種の中では一番強かったです。
一方でディテールのエッジは残っているところ等、プロソフトンと逆の方向性に感じます。


以降、それぞれのフィルターを使った写真をいくつか備忘録的に置いておきます。

◆ブラックミストプロテクター

ブラックミストプロテクターは、そのコンセプトにもあるように、普段から付けっぱなしにする想定の商品なので、ソフト効果は弱いです。むしろ、シャドウ部を持ち上げる(コントラストを弱める)効果に、このフィルターの真髄があるような気がします。もちろん強い逆光ではフレア効果が見られます。

初めてのソフトフィルターとして選ぶよりも、「ブラックミストNO.05では強すぎる」と感じる人、フィルター効果を最小限にしたい人におすすめです。

↑光源では光が拡散していますが、画面左側の子供の背中には拡散が及んでいません。
ただ、お尻の左側に見えるように、緑の点状のゴーストが比較的出やすいかも。
↑強い逆光では、光の拡散とも違う、光源に対して放射状の光の筋が出ることがあります。
これもいわゆる「エモい」表現に含まれるのでしょうか?僕は結構好きです。

◆ブラックミスト No.05

ブラックミストNo.05は、個人的には夜の街スナップにおすすめです。光源の周囲を囲む強めの拡散部分とその外側では穏やかに拡散する強弱の効いた描写は、点光源の多い都市部の風景を印象的な景色にしてくれます。ブラックミストプロテクターよりソフト効果が強いので、あえてシャープな写りをするレンズと組み合わせる事でその特性が引き立つフィルターだと感じます。

↑光源を主役にできるフィルターだと感じます。
光源が若干、黄色~琥珀色に引っ張られる感じがしますが、
画面が白っぽくならないので、暗い描写も似合うクールな印象です。
↑建物のシャドウ部を見ると、結構持ち上げられており、
コントラストが弱まっていることがわかります。
記憶のなかの曖昧なあの感じ(謎)が表現できそうです。

◆ホワイトミスト No.1

今回の比較で、一番気に入ったのはホワイトミストです。
メーカーの表では4種の中で一番ソフト効果が強いフィルターでした。確かに白い光が画面全体に拡散する効果の強さですが、ディテールのエッジの滲みが無いので、現代のシャープなレンズの特性を生かした絵作りができます。メーカーは「オールドレンズのような」という表現をしていますが、各収差の少ない現代のレンズにつけると「オールドレンズ味」が足りないと感じる人もいるかもしれません。個人的には、このさわやかでクリーンな印象は、昔のオールドレンズでは撮れなかった画とも言えるわけですから、「今だからこそ撮れる写真表現」として魅力を感じました。

↑全体に薄いベールを重ねたように、白い光が拡散しています。
一方で、植物のシルエットや輪郭はシャープなままなのが分かります。
↑ベンチの座面に反射した光が拡散しています。
ブラックミスト系とは異なる拡散効果です。
↑極端に強い逆光条件。拡散する光が白いので爽やかな印象です。
膝のあたりにはゴーストも発生しています。

◆PRO1D プロソフトン クリア(W)

これだけ、ミスト系ではないので当然といえば当然なのですが、4種の中では独特なソフト効果を持つフィルターでした。もともとは星空撮影用のフィルターで、その中では効果は弱めですが、スナップで使うと効果は強く感じます。ファインダーでのぞいた瞬間にその効果に気づくほどでした。うまく使えばドラマチックな効果が期待できますが、オールマイティでつけっぱなし、という使い方は自分には難しいと感じました。

↑ソフト効果は光の強さだけでなく、フォーカスの程度によっても変化が大きいですね。
(※写真の一部を加工しています。)
↑柔らかさを感じる写真になりました。
↑滲み方が分かりやすい1枚。
植物の輪郭部分が溶けあったような描写は
絵画的、油彩画的にも見えます。

◆最後に

皆さんは比較を見てどのように感じられたでしょうか。フィルターの個性を知ることで、皆さんの写真表現のお役に立ちましたら幸いです。

写真って楽しいですね(^^)

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