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恋にならなかった想い

片道約6時間の道のりは想像していたよりも過酷だった。

朝7時頃家を出発したのに、現地に着いた頃には3時に近い時間になっていた。乗り換えが上手くできなかったことも原因の一つである。

なるべく交通費を抑えるために新幹線を使うのを最小限にし、残りは普通電車を使った。

久しぶりに県外に出たが、ザ・都会に行っていないせいか、有名な観光地に行っていないせいか、長い道のりを移動したにも関わらずあまり県外に来たという実感は湧かなかった。

そんなこんながありながらも無事に出会うことができた。

第一印象は、ああ、電話の時と同じ声だ。

少しだけ角度によっては、私の兄弟の面影があるような気がして、焦ったのは秘密だ。二度見してしまった。

何年か前に一度だけ写真で見たことがあるが、記憶と同じ感じで安心した。

駅に到着した私を車で迎えに来てくれ、私が行きたいと言っていた工場見学に向かった。「5歳児とか3歳児」と私のことをいじってくる彼はちょっと許せない。甥(5歳)と同じに見えると言われたのは悔しい。

工場見学は、時間帯のせいもあり、活発でなく中には片づけを始めていたブースもあった。でもお菓子の試食やシールをもらえたのはすごく嬉しかった。

シールをもらえて喜んでいた私を白々しい目で見ていたのは、気づいているからな。

そのあと、神社2か所を巡った。instagramで写真映えしていたところや綺麗と有名なところ。日が暮れてきていたのもあったが、お賽銭を投げて無事に家に帰れるようにお願いした。

夜の街をドライブしながら、私は仕事疲れや寝不足のせいで眠気が襲ってきていた。「着いたら起こすから寝てもいいよ」と言われたが、なんとなく眠気交じりに起きていた。申し訳なさもあったが、少しでも彼との時間を大切にしたかった。

夜ごはんは、ボリュームが多すぎて、半分ほどでお腹がいっぱいになってしまった。そこから頑張って2/3になったが、もう限界だった。
事前に会う前に少食だと伝えていたのもあって、残りを食べてくれた。
残したくない私にとって救世主。

そのあとは、一緒に泊まった。私一人だけお酒を飲んだが、3%や4%
度数の低いお酒のため、「ジュース」と言って飲んでいた。

地上波のテレビを久しぶりに見た。いつも録画しているものを見ているため、なんだか新鮮だった。深夜になり、何とか眠たくなった体に鞭を打ってお風呂に入った。

人と一緒に寝るのは心配だった。どちらが先に寝たかはわからないが、ぐっすり寝ていた。流れに逆らえることもなく、致していしまったが、後悔は自然となかった。この感覚は、あまりよくないのかもしれない。

人間とは、儚くて愚かだなと思う。

周りからどんな評価を受けようが、終わってしまったことに何を言われても仕方ない。

後から友達に「後悔してないんだったらいいんじゃない?」と言われた。いつか後悔することはあるのかな。今の私にはわからない。

一つ言えることは、人肌はとても温かいけど、どんなに近くにあるはずなのにどこか遠く感じてしまうこと。抱きしめても抱きしめてもどこか物足りなかった。恋人同士なら違うんだろうか。

流れに身を任してしまった私だが、ちゃんと危機感は持っていた。安心、安全である相手でないとさすがに許しはしない。そこだけは誤解を受けたくないものだ。

ならば、その人と付き合うのかと聞かれたら、答えはNOだ。
恋にはならなかった。いい人だとは思う。でも、惹かれなかった。

ああ、この人とは友達といたいなと思った。物理的な距離もあるが、自分の中で惹かれるものがなかった。近くに住んでいたならと考えても、遊ぶくらいはあるかもしれないが、付き合うは考えれなかった。


この旅は、観光と共に彼との関係をはっきりさせたいためのもの。
移動は身体的にもメンタル的にも少ししんどかったが、無駄なものにはならなかった。きちんと彼のいいところ、やさしさに触れることができた。

家に帰ってから彼に聞いてみた。

「私と会ってよかったか」

答えはYESらしい。よかった。彼にとってもちゃんと有意義な時間になっていたなら私も嬉しい。たとえそれがお世辞だったとしても。

彼に幸せが訪れますように。

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