つまらないコントに救われたい
待ち合わせ場所は狭い廊下の片隅で、目の前にある部屋には人の気配がする。
部屋の前にずっと人が立っているなんて不気味だろうと思い、そばにあった非常階段のドアに手をかけた。
待ち合わせ場所へはドア一枚だし、ガラス窓から中の様子も見える。
相手が来るまで外の階段で待っているつもりだった。
ゆっくり閉まったドアが、「カチャン」と恐ろしくきちんとした音をたてた。
その時になって初めて気がついたのだ。
もしかしたら外からは開けられないドアではないのかと。
案の定ドアにはきっちりロックがかかっていた。
静まり返った廊下に開けてくれるような人はいないし、ひとつ下の階のドアもロックがかかっていた。
待ち合わせまであと2分。
1階まで下りて、また上がって来るしかないのだろうか。
他にどうしようもないので階段を駆け下り、ダッシュで5階まで走った。
つまらないコントだってこんなオチないだろう。
いやつまらないコントがこういうネタやってくれないからうっかりしたんだよ!と、やり場のない怒りを幻の「つまらないコント」にぶつけながら、息を切らせて元の場所に戻った。
相変わらずシンとした廊下には「音を立てないでください」と貼り紙がしてあるが、息はゼーゼー切れて、パンプスで走る音がカンカン響いている。
じゃあドアのカギ開けといてよ!!と怒りながら待ち合わせ場所まで走ったら、あまりの騒々しさに中の人がドアを開け、「ご用ですか?」と顔をのぞかせた。
ぜんぶ台なし。
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