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映画「ノマドランド」鑑賞で引き出された記憶たち

3月上旬に滞在していた街の映画館を通りがかった時、
映画館前で【ノマドランド】のポスターを見かけた。
「これは観よう」
最初、もう上映中なのかと思い、
そのままフラフラと映画館の中へ入ってしまったけれど、
あと一ヶ月弱ほど先の上映。
よし、その時どこにいても「これは劇場で観よう」とフライヤーをもらって出た。
その時からずっとそのフライヤーを飾っては劇場鑑賞を楽しみにしてきた。
今回は予期せぬ理由での早々帰京になったもんで都内で鑑賞。
鑑賞に行ける範囲の中で一番大きなスクリーンで観たかったので日比谷へ。

十分楽しめた映画だった。
そして主演のフランシス・マクドーマンドの表情は、
感情をあらわしたり、はたまた感情を隠そうとしているさまを絶妙に演じていた。
彼女がこの原作の映像権を獲得してすぐに監督をクロエ・ジャオ氏にお願いしたという。
(クロエ・ジャオ監督の前の作品たちを是非みたいと思った)

私は「創意工夫」という言葉が大好きで、
ノマドライフ、バンライフとはまさにこの言葉のとおりの世界だと思う。

そして、【ノマドランド】を観て、
私はノマドにまつわるいくつかのことを思い出した。

1つは、
もう14年位前に付き合っていたアメリカ人の彼のお母さんの友だちが、
まさにこの映画に登場するノマドだった。
私が滞在していた元彼の住まいと、
彼の実家のあるカリフォルニア(の真ん中らへんの自然豊かな郊外)に、
そのノマドの友人がアメリカ中を巡っているなかで立ち寄って、
元彼ママがその友人を訪ねるというので、私もついていき、
彼女の住まいの車(キャンピングカー)を見せてもらいに行った。
確か彼女は元彼母さんと同年代で、当時50代半ば位、
ノマドランドの映画のように、女性ひとりでアメリカ中、季節労働のあるところや気候に合わせて移動していた。
もう、ホントにこの映画ノマドランドそのものの暮らし。
この映画を観た時に、この日の記憶が鮮明に蘇った。

私は彼女の暮らしを見聞きしたその時、
強烈なノマド(遊牧民的バンライフ)への憧れとトキメキをリアルに感じた。
そして「自由」の形として私好みだな、と思った。

移動し続けること、ノマドの暮らしは大変な事もたくさんあると思う。
しかし、
どこでどう生きても、何かしら問題や理不尽、生きづらさはあるかもしれない。
それなら衣食住を自分の選択と責任で、
自然の豊かさや人とのリアルな交流を味わっていきたい。その時にそう感じたように思う。

彼女の住まいの車は、機能的でアイデアにあふれていた。
印象的だったところはたくさん、
まず、梯子でのぼるロフトのようなスペースが寝室になっていたところ、
その下はキッチン兼居間、
細部の数多くにからくりが仕掛けられているかのごとく、
機能的アイデア満載だった。
どこもかわいくデコレーションしていて、
狭くても創造的で居心地が良さそうだった。
そして彼女は彼女の人生を彼女らしく謳歌しているのだな、と思った。
当時はスマホもなく、携帯も海外で使っていなかったし、カメラも持ち歩かなかったので写真を撮っていないことが残念。
それでも私の脳裏にはしっかりと記憶されている。
(こんなアナログな昔の過ごし方や思い出もやっぱりいいものだ)

2つめは、
私がまだ20代で海外旅を始めた頃。
当時、旅の間に短期のリゾバや派遣の仕事をよくしていた。
そのうち、いくつかの旅館で仲居さんをしたのだけど、
なんというか、日本特有のネガティブ面の集団圧力、その影響によるイジメや縦社会みたいなものが色濃くある世界が多かった…
新入りというだけで靴を隠されたりする信じられないほど幼稚な習慣などがはびこっていて本当に呆れてしまうこともあった。
(昼ドラか!と突っ込んで笑うしかない、いや、笑えない)

ノマドランドの映画の中に出てくるアメリカのノマドの方々は、
中年以上の人たちばかりで、(理不尽な)社会システムから離れて暮らしている人たちが多かった。

当時出会った日本的なノマド人の方々?!
彼女たちは一定の周期で職場を変えながら、
特定の家を持たずに寮付きの仲居仕事で全国を移動していて(訳アリ多し)
彼女たちの人生のドラマのいくつかを聞いた。(平均年齢は50代で親世代)
まだ怖いものなし感が満載の若かった私には、
感情移入が難しかったり、深刻で重くて暗い話には聞き難いものもあった。
今なら当時と違った受け止め方や感想があるけれど、
当時そういった場所で出会った日本のある種の一部ノマドの人たちは人生を「自分で選択し謳歌している」というよりは、
悲観、諦め、何かや誰かや社会を責め、恨みながら生きていると感じる人も多かった。
(もちろん全員ではないし、特にその旅館は悲観的ムードのふきだまりだったのかも)内側を見つめるよりも外側に理由や責任を探すような。
日本社会構造、教育や政治のあり方などの理不尽さ、矛盾、不公平等も影響しているのだろう。
当時、それはそれで様々な観点を得、学びや気付きになったと思うけれど、
このノマドランドの映画に出演していた人々、自然を敬い、楽しみ、苦しみがあっても、常に自分の人生、自分の選択を謳歌しようとし、成長変化を続けているように感じた人たちとはやや異なった波動を感じた。。

今の私が思うことは、
自分が物事を、世界をどう観て捉えるか次第で世界は変わる、
いつでもすぐにでもどんなふうにも。
全ては最善が起きている、と信じたい。
たとえそうは見えない、思えないことも、視点を変える、それでも無理なら時間を活用する、など必ず観る世界の変化、は可能だと思う。

苦しい中でも考え方や、心は自由でありたいというか。

全ては機会、どういう機会にするかは自分次第、
この信念は揺らがないように思う。

そういうようなことを、映画の余韻に浸りつつ、考えながら帰路についた。
映画のこういう余韻の中で考える時間、とても好き。
劇場鑑賞ならではの臨場感がこの時間を演出する。

この映画は是非、劇場鑑賞がオススメ。
あ、でも、キャンプしながら夜に観る、っていうのもいいかも。

映画は(やはり映画館で鑑賞が最高)一人で観るのが好きだけど、
面白い映画をみたあと、出演者や監督、スタッフのインタビューや、他の人のレビューを読んだり見てしまう。
余韻にまだまだ浸っていたいとか、自分とは違う観点や感想を知りたいとも思う。特に見ず知らずの人たちの。

ちなみに、
私は映画のジャンルの中では、ロードムービーが一番好きかもしれない。
美しい描写が多く、旅が人生に大きく占めている私には、やはり「移動」していくことの効用や、たとえ映画でもフィクションでもドキュメンタリーでも、「旅」から受け取るもの、感化されることは大きい。

特に恋愛要素がべったりとしていない、旅要素が濃いような
「移動」していく中でのドラマが好きだな。
心地よいリズム。
そういう好きな映画たちは、
【Little Miss Sunshine】(←何度も何度も観ている)【グッバイサマー】、【しあわせはどこにある】、【ライオン】、【LIFE】、【はじまりへの旅】、【きっとうまくいく】、【マダムNYへいく】(←インド人の美人主演女優の事故死は本当にショックだった…)、
これらの映画は本当に好きで何度も鑑賞する。

面白い映画をたくさんみながら英語も忘れないように、向上していこう。。。


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