滝田洋一(日本経済新聞編集委員・WBS解説キャスター)

日本経済新聞編集委員・WBS解説キャスター。主にマクロ経済や金融をフォローしていますが、テレビでは様々な分野にチャレンジしています。

滝田洋一(日本経済新聞編集委員・WBS解説キャスター)

日本経済新聞編集委員・WBS解説キャスター。主にマクロ経済や金融をフォローしていますが、テレビでは様々な分野にチャレンジしています。

マガジン

  • 日経COMEMO

    • 13,548本

    日経COMEMOは、様々な分野から厳選した新しい時代のリーダーたちが、社会に思うこと、専門領域の知見などを投稿するサービスです。 【noteで投稿されている方へ】 #COMEMOがついた投稿を日々COMEMOスタッフが巡回し、COMEMOマガジンや日経電子版でご紹介させていただきます。「書けば、つながる」をスローガンに、より多くのビジネスパーソンが発信し、つながり、ビジネスシーンを活性化する世界を創っていきたいと思います。 https://bit.ly/2EbuxaF

最近の記事

日銀総裁会見

今日の会見は安全運転に終始した感じ。マイナス金利についての質問にも「ソクラテスの弁明」が目立ちました。為替相場が安定し、株価が堅調なら、追加緩和カードを温存する。それが現時点での日銀のスタンスなのでしょう。

    • 米中テクノ冷戦の渦:なぜ5Gが主戦場なのか。日経の核心欄に記しました。 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO38954480U8A211C1TCR000/ 日本企業への影響も大です。ご笑覧までに。

      • ペンス副大統領のワシントンポスト紙への寄稿文

         アジア歴訪に先立ってペンス米副大統領がワシントンポスト紙に寄稿しました(11月9日)。ハドソン研究所での対中政策演説(10月4日)が強硬姿勢を示したものとすれば、今回の寄稿文ではソフトなアプローチを前面に出しています。そのなかでアメリカのインド・太平洋戦略について、三本の柱を示しています。①繁栄、②安全保障、③法の支配や人権の擁護がそれです。アジアの国々を支配するのではなく、協力し合うことを目指している、とも言います。 ペンスさんが目を注ぐインド・太平洋とは、「アメリカか

        • ペンス副大統領のアジア歴訪と日米豪印のセキュリティダイヤモンド

            ペンス副大統領が11月11~18日の日程でアジアを歴訪中です。12日には日本を訪れ、13日には安倍首相と会談します。今回の歴訪で興味深いのは、訪問先と会談(2国間)の相手方です。すなわち、日本、シンガポール、オーストラリア、パプア・ニューギニアを訪ね、安倍首相、シンガポールのリー・シェン・ロン首相、インドのモディ首相、パプア・ニューギニアのオニール首相、豪州のモリソン首相と会談します。  シンガポールはASEAN会合、パプア・ニューギニアはAPECサミットですから、日本

        マガジン

        • 日経COMEMO
          13,548本

        記事

          日銀展望リポートが示した可処分所得の伸び悩み

           「可処分所得の試算値の推移」。日銀の展望リポート(2018年10月)には興味深いグラフが付されています(39頁)。それによりますと、11年度を100とした可処分所得は、足元で105くらい。11年度を100とした賃金・俸給が、足元で111くらいになっているのに対し、伸びが鈍いことがハッキリ見てとれます。   「ここ数年、可処分所得と賃金・俸給の間で乖離が拡がっているのは、賃金・俸給の増加を受けて所得税の支払が累進的に増加していることや、年金保険料の引き上げに伴う社会保険料負

          日銀展望リポートが示した可処分所得の伸び悩み

          上半期税収が27年ぶり高水準

           財務省が1日発表した2018年度上半期(4~9月)の国の一般会計税収は、前年同期比4.1%増の17兆5052億円でした。上半期としては過去3番目で、バブル期直後の1991年度以来27年ぶりの高水準となりました。日本経済新聞電子版によれば、「18年度の通算では約59兆1千億円とした当初予算の見積もりを上方修正する公算が大きく、60兆円台も視野に入りそうだ」とあります。  ちなみに17年度の税収は58兆7874億円でした(決算ベース)。18年度の税収見積もりは59兆790億円

          米中新冷戦と新しいココム

           米国で今年8月、中国を念頭に三位一体の物々しい法律が成立しました。国防授権法、外国投資リスク審査近代化法、輸出管理改革法です。米国への投資規制と米国からの輸出管理を内容とします。江戸幕府が「入り鉄砲に出女」を関所で取り締まったようなもの、とみずほ総合研究所の小野亮主席エコノミストは評します。  「入り鉄砲」は中国企業による米ハイテク企業の買収。それを防ぐための組織は財務長官が議長を務める「対米外国投資委員会(CFIUS)」です。1970年代からある組織ですが、新法では権限

          ペンス演説に関する元米海軍副次官の具体論

           米紙WSJの電子版に「中国との冷戦に勝利する方法」という寄稿文が載っています。10月4日のペンス米副大統領によるハドソン研究所での対中政策演説に具体的な解説を加えたもので、筆者のセス・クロプシー氏はハドソン研の上級研究員。レーガン政権とジョージ・W・ブッシュ政権で海軍副次官を務めた経験を持つ人物です。 「米海軍は規模を拡大する必要がある。トランプ政権は、運用可能な艦船の数を現在の約280隻から355隻に増やすとしている。しかし、ホワイトハウスの提案する今後30年をかけてで

          ペンス演説に関する元米海軍副次官の具体論

          天網恢々、国税庁が海外の隠し資産調査 40万件の口座情報を入手

           日本経済新聞の電子版は「国税庁、海外の隠し資産調査 40万件の口座情報を入手」という記事を伝えています。それによれば、国税庁は約50カ国・地域の金融機関にある日本人の口座情報約40万件を入手した由。租税回避地(タックスヘイブン)の情報も含まれており、今後、国境をまたぐ資産隠しなどの解明に活用する、とのことです。 きっかけは「パナマ文書」の暴露。各国の首脳や著名人によるタックスヘイブンを利用した課税逃れの実態が表面化したことで、各国税務当局によって国境を跨ぐ税逃れに投網をか

          天網恢々、国税庁が海外の隠し資産調査 40万件の口座情報を入手

          IMF「財政モニター報告書」のちゃぶ台返し

           「日本の純資産はプラマイゼロ、IMFの新国富論」と題して、IMFの「財政モニター報告書」が紹介されています(ロイター・コラム記事 )。それによると、世界経済生産の61%を占める31カ国の「公的部門の正味資産」の合計額は101兆ドル(約1京1000兆円)に上り、合計国内総生産(GDP)の219%に相当する。一方、「公的債務の合計」は同94%であり、資産はその倍以上あるということになります。 https://jp.reuters.com/article/imf-g20-bre

          IMF「財政モニター報告書」のちゃぶ台返し

          米当局が捕まえた産業スパイは中国の情報工作員

           米国で対中警戒論が強まっている折も折、米当局は、GEアビエーションなど米企業から商業秘密を盗んだ容疑で、中国の産業スパイの身柄を拘束した。しかもこの産業スパイは中国の情報工作員だという。 WSJによると、逮捕されたのは中国国家安全省の幹部。検察当局は、シュ容疑者が2013年から今年にかけて、米企業から重要情報や特許などを不正に取得しようとしていたとしている。従業員を勧誘し、意見交換を装って中国へと派遣するなどの手口を使っていたという。 「より重要なのは、中国による技術移

          米当局が捕まえた産業スパイは中国の情報工作員

          IMFが試算した米中貿易戦争の帰結

           10日付の日本経済新聞は「世界景気にじむ警戒感 IMF、貿易戦争巡り試算」と題し、この度の世界経済見通しに載せられたリスクシナリオ(第1章の33~35頁)を紹介しています。 IMFは貿易戦争を5段階で試算。米政権が自動車関税を発動して報復合戦に突入すれば、世界景気の下方修正幅は0.4ポイントに悪化する。企業投資が減って市場の混乱も誘発すれば、世界景気は最大0.8ポイント下振れすると試算する。巡航速度なら19年の成長率は3.7%になると予測するが、貿易戦争次第では世界景気は好

          これは映画のシーンではない、白昼の出来事である

           国際刑事警察機構(ICPO)といえば、ルパン3世の銭形警部でおなじみの国際組織。9月下旬から行方不明になっていた、ICPOの孟宏偉総裁は、中国当局に身柄を拘束されていた。「『異質な中国』では法治の常識が通用しない」。北京発の日経記事はそんな現実を伝えるが、国際機関しかも警察関連機関のトップが拘束されるなどという事態は前代未聞である。 しかもフランスで記者会見した孟氏の妻の説明が、事件の不気味さを増幅する。「夫から携帯に『私からの電話を待ちなさい』とメッセージが入ったあと、

          これは映画のシーンではない、白昼の出来事である

          ペンス演説は新たな冷戦時代を告げる

           ペンス米副大統領は10月4日、ワシントンのハドソン研究所で「政権の対中方針」をめぐって、40分に及ぶ演説を行いました。ニューヨークタイムズは「新しい冷戦の前触れ」と評しましたが、確かにこの演説はチャーチル英首相の「フルトン演説」を想起させるものがありました。フルトン演説でチャーチルは「バルト海のステッテンからアドリア海のトリエステまで鉄のカーテンが降ろされた」と述べ、「東西冷戦」が到来しつつあるとの認識を示しました。 今回のペンス演説を要約すれば、①中国の自由化や平和的台

          イタリアの政局混乱が、なぜユーロ全体の動揺を引き起こすのか?

          ユーロの加盟国は「ターゲット2」と呼ばれる決済システムを通じて、お互いにお金を貸し借りしています。イタリアは「お金の借り手」ですが、ドイツは「お金の貸し手」です。イタリアの「借り」は5000億ユーロに迫り、ドイツの「貸し」は9000億ユーロ近くにのぼります。貸し借りの金額はとても大きく、「借り手」がお金を返せなくなると、「貸し手」は貸したお金が焦げ付いてしまいます。だからイタリアの問題は、ドイツなどにも波及しかねないのです。  これはギリシャ危機の時に起きたのと同じ問題です

          イタリアの政局混乱が、なぜユーロ全体の動揺を引き起こすのか?

          朝鮮半島をめぐる力の構造

          26日午後に行われた南北朝鮮の首脳会談について、韓国の文大統領が27日の記者会見で経緯を明らかにしました。25日午後に北朝鮮の金委員長から連絡があり、翌26日に板門店にある北側の施設「統一閣」で会談に臨んだというのです。金氏は米朝首脳会談を所望し、朝鮮半島の非核化の意思を再確認したといいます。 北朝鮮の非核化でなく、半島の非核化という場合、韓国に対する核の傘の撤去も含みます。「まず北の核の撤去」を求める米国側との溝は残ります。それはともかく、興味深いのは北側が自らのメッセー