便座の上まで、バックオーライ 〜福祉用具の隠し技 ②
在宅介護における部門別の難易度をつけるなら、寝室からトイレへの非歩行の移動介助は、入浴と並んでA、もしくは特A評価をつけたくなるレベルで難しい。
なぜなら、ベッドから車いす、車いすから便座という、移乗動作が2回も必要になるからだ。さらに、トイレは個室、つまり一人で利用する前提の空間なので、介助者と一緒に入るには絶望的に狭い。
せめてベッド周りでの移乗だけなら、なんとかなるんだが・・・
そんな時の隠し技が、実はある。
シャワーキャリー、介護保険では入浴用いす、特定福祉用具である。レンタルではなく、購入品ですね。
要介護認定が出ていれば、年度内10万円の枠内で、自己負担割合に応じて介護保険給付が戻ってくるやつです。
そしてこのお風呂移動のための椅子、なぜかお尻の周りが穴になっている。
隠部を洗いやすくするためなのだが、この機能を浴室で使うだけに限らず、
このようなことができる。
ベッドサイドでシャワーキャリーに移乗し、そのまま便器の上にバックで乗り入れるのだ。
なので、トイレでは方向転換も、移乗もいらない。下着やリハパンを下げるのを手伝い、致すのを待つだけである。後始末はそれなりに面倒だが、洗浄便座の恩恵も受けることができる(周囲を少し汚すけれども)。
あとは、トイレ周りにこのキャリー操作の妨げになる段差や、洗浄便座のリモコンや紙巻器の支障、扉開口幅の不足がないかなどを確認していく。
段差はあまりない方が良いし、幅の狭い扉だと苦しくなるが、ここでも実は福祉用具の進化があり、移動が難しそうな部位は用具の選択でクリアできることもあるのだ。
そして、シャワーキャリーには、それを得意とした専門メーカーがある。
知る人ぞ知る、ウチヱ(株)さんである。
ここのバリエーションから、自宅で使えるものがないか、探るといいと思う。お近くの福祉用具の店に相談すれば、試用対応も含めて動いてくれるはず、です。メーカーが貸し出してくれるので。
さらにこの全幅50.5cmの、狭い空間移動に適した新しい製品には、尿はねブロックなど、トイレでの利用時の困りごとに対応した細やかな工夫が盛り込まれている。
そもそも、オプションのバケツをつけたら簡易ポータブルトイレにもなってしまう、優れモノなのであった。
http://uchie.co.jp/media/files/documents/STR6222/catalog2403.pdf
ただし、便器の下部の幅によってキャリーが当たり、使えたり使えなかったりする。この製品は足元29.5cm以内の便器幅に適合とのことで、念のため、大手さんの便器のCADデータを参照する。
ということで、廉価品ゾーンのものであれば、LIXILのものには適合している様子。幅広かつ折りたたみ可能の、シャトレチェアCであれば35.5cmの便器幅まで対応とのことで、ほぼすべての便器に対応しているのでは、という気もしないでもない。念の為、購入前に試用してチェックすれば安心である。
浴室までシャワーキャリーを使う可能性がある方に限定の解法になるが、意外にこの使い方は知られていないように思う。
これで救われる介護者の方も少なくないのではないかと、このコーナーにピックアップしてみた次第です。お試しあれ。
4/29追記
TOTOさんは自社の便器に合わせて、自前でシャワーキャリーをつくっていることを書いておかねばなるまい。ウチの便器TOTO勢はそれを使えば大丈夫。
あと、洗浄便座には着座しないと水が出ないように制御するスイッチがあるのだが、キャリーを使うときはそれを止める設定が必要になる。
TOTO製品ならあらかたできるようなので、下記参考まで。
6/11追記
後日譚の記事、リンクこちらにも張ります。