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都会の森とマーチャンダイズ・ワンダーランド ~突撃!例の建築家の手すり⑬
竹山聖建築巡りの帰路、実はもう一つの観察テーマのために移動。
それは、表参道周辺の様々な商業施設の、上下階を結ぶ手すりの観察。
きっかけは、たまたま眺めた入江三宅設計事務所のこのサイトの、この文でした。
設計当時の原宿は、若者中心の街であり、店舗として成り立つのは2階止まりであった。そのため上階へ人々を呼び込むための手法としてスキップフロアーを採用した。上下の店舗が見渡せる事により街並を散策している感覚で、ショッピングを楽しむファッションタウンとしている。
どこかの駅前なら主導線が地下道や、2階のペデストリアンデッキに分散することもあるが、表参道から原宿の、銀座と並んで日本で最も商業が盛んな地域の建物は、ほぼ1階のみが出入り動線となっている。となると、この辺の商業施設では、お客様を他の階にどうやって引っ張るか、の勝負が繰り広げられている、はず。
その他の階への誘導の工夫と、そしてそこの手すりはどんな感じか、ダッシュで見ていきますよ。なお居並ぶハイブランドの高級店には入れないナリだったので華麗にスルーとなっております、あしからず。
アップルストア表参道(2014)
設計:Bohlin Cywinski Jackson+光井純&アソシエーツ
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エントランスを入ってすぐ正面に、このいかにもAppleな、メタリックかつ優雅な階段が目に入ります。1階をグルっと反対側に回らせて、下に引っ張る吸引力なデザイン。手すりもステンレス丸棒が階段のかたちに沿ってきっちり曲げられ、強化ガラスにピン留めされた、いかにもジョナサンアイブがデザインを仕切っていた時代のApple的な、油断のない削ぎ落としの美でございます。カッケー。
次は、あの巨匠のところにやってまいりました。といっても、まずはこちらから。
同潤館(同潤会青山アパートメント:1926)
原設計:同潤会
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同潤会オタクとしては、わずかに残ったこちらから入らざるを得ません。
というわけで、まずは階段を。
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自分がかつて慣れ親しんだ同潤会江戸川アパートメントはRC袖壁に人研ぎの天端、その上にアールデコな黒鉄の手すりでした。その末っ子より7年ほど早く生まれた同潤会アパートの次男坊は、まだ木製の手すりだったのですね。どちらかというと当時の洋館風の、クラシカルなデザインです。
そして階段をのぼった、その突き当りの扉を開けると・・・
表参道ヒルズ(2006)
設計:安藤忠雄建築研究所・森ビル
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ちょっと殺風景で怖いくらいなのですが、あかりの見える左方面に向かいます。
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あれ?同潤館の2階にいたはずが、なんということでしょう。下におおよそ4層くらいありそうです。
実はこちら、地下3階から地上3階までの吹き抜け、それも周囲が、というよりお店の配置ごとスロープになっていて、自分がどの階にいるかよくわからなくなる、ラビリンスなつくりです。
確かに、こうしてしまえば、1階あたりから入ったことも忘れてぐるぐる回る。巨匠の構想力、恐るべし。どのフロアも有利不利がないため、テナント料もあまり変わらないのではないでしょうか。森ビルもしてやったりです。
手すりも、初期の安藤忠雄の代名詞であるフラットバーではなく、握りやすいステンレス丸棒と、しっかり高さのある強化ガラスのフェンスの組み合わせ。そりゃ、こんな吹き抜けで転落事故を起こすわけにはいかんですからね。でも、いまひとつ面白みがないな、と思って地下2階にたどり着き、自分の不明を恥じました。
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そうか、周囲すべてがスロープ、そして最下層は吹き抜け下に大階段。なので、水平と斜めが食い違うのが、この吹き抜けの底の宿命。案の定、その取り合い部がえらい難しいことになってます。その矛盾に合わせて調整していく手すり、これはなかなかに面白い。
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自分なら、秩序の異なるスロープ側と大階段側の手すりは、別のものとして切り分けることを考えそうなところですが、そこを巨匠は繋いでくるのでした。強引ですが、接続面の角度をずらす職人芸を堪能できて満足。継ぎ手の遊びをうまく利用して嵌め込んだのでしょうかね、これ。詳細設計をされた方も、うまく納まってホッとしたはず。
でも、そういったこだわりの積み重ねが、訪ねてくるお客さんに、この異空間を違和感なく魅せているのかも知れませんね。
次行ってみましょ。
ラフォーレ原宿(1978、2010改修)
設計:入江三宅建築設計事務所
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このツアーに行こうと考えたきっかけがココ。でも実は自分、内部は初見なんです。オシャレ感度の高い皆様の巣として認識していたので、若い頃はビビって入ったことがなかったw
でも、もう立派なおっさんなので、そんなに怖いものはないのだった。加齢万歳。
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地元の、黄緑と青の勇者のチームを応援している立場としては、「スポンサーになっていただけませんか?」という言葉が浮かぶ手すり。もうこのカラーリングだけでなんでも許せてしまうのだが、それはさておき。手すりとしては幅広で、握るよりも手をすべらせて使うことが優先されています。でも汚れもなくキレイ。ちょっとエスカレーターの袖っぽくもありますね。
そしてここ、この短い階段の上にも下にもお店があるのです。そう、先の入江三宅設計のサイトの話にあった、スキップフロア。半階ずつ上下を繋ぐ形式のつくりです。そして階段はその中心動線。ここも商品を見て回っているうちに、いつのまにか上階に上がってしまいますね。これはそんな階段を通常のフロア的に見せるための、誘導デザインの一端を担う、黄緑ラインの手すりなのです。
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中央部の広い階段のセンターには、展示台が設えられています。デザインもなんとなくレトロフューチャーですね。これ、あまり古臭くならないという点で優れた商業デザインなんじゃないか、と思います。
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この中央のメダルみたいなやつ、何なのかわからず謎が残りますね。
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なお上下移動のもう一つの動線、エレベーターもライトグリーン。到着すると側面の壁が全体で光ります。「2001年宇宙の旅」みたいな雰囲気がちょっとありますね。消火栓の赤いランプが喋ったりするのだろうか。
さて、次がラストです。
東急プラザ原宿「ハラカド」(2024)
設計:日建設計+平田晃久(外装・屋上)
地下に銭湯があったりする、面白い施設がこちら。外から見るとこんな感じです。
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入るとさっそく、2階にオシャレ手すりを発見。神宮前交差点からもよく見えますね。仕込み照明が満遍なく発光した、コンセプチュアルな手すり。
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雑誌とのコラボスペース「COVER」らしいです。でもお腹が空いたので、いそいそと上の階に向かいます。
ちょっとカオスな感じのハラカドですが、ここの特徴は交差点に面した屋上にあります。5階から7階まで外部の庭で接続されていて、5階に飲食店、6階に屋台村のようなところを置き、さらにその手前の4階もまんま室内でありながら庭(というかハラッパ)。みなさんここでユルーく過ごしてね、という狙いでしょうか。でも、上階に若いお客さんを吸引するにはどうしたらいいか、ということに特化した、野心的なつくりですよね。
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5階で外部空間にでてみます。神宮前交差点が目の前です。
手すりは隈さんが多用する、亜鉛メッキのよくあるやつではありますが、支柱を鋼板のダブルでつくって挟み込みを多用する、リーズナブルな設計です。上側を細く絞るのは、景色の邪魔にならないように、かな。転落防止の鉄のネットも綺麗に納めています。
こういう感じ、こちらの海辺の街では最近よく見ます。アメリカンフェンスみたいな名前で、亜鉛メッキどぶ漬けネットの建材が結構使われているんですね。
このデザイン、同じ素材をあえて使った、そういうイマドキの庭文化の引用手すり、とも言えるかもですね。
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屋上、こんな寒い季節でも、けっこう人がいますね。
なぜなら、むっちゃ映えるんです。
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階段をゆるゆると登っていくと、少しづつ違う景色がみえてきて、7階レベルまで行くと、緑に囲まれたこんな景色が。
お子様が歓喜している側で、もっさりとしたおっさんもひっそり歓喜。やっぱり、こっちの橙色のタワーが琴線に触れるのは、そういう世代だからでしょうかね。
実はここの屋上部設計者の平田晃久さん、京大大学院出身、竹山聖の研究室でした。その後に伊東豊雄さんの事務所というキャリアパス。
師がTERAZZAで果たせなかった屋上開放という、人々が都市のなかで呼吸のできる空間をもった建築づくりを、はからずもここで果たされているのではないでしょうか。
おあとがよろしいようで。
このゾーンの手すり巡りの項、ひとまずおしまいです。
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