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インフレが生んだ?新型シャワーキャリー ~福祉用具の隠し技⑤
先日、浴室洗い場の、すのこの嵩上げのご依頼を頂いた。
この手のご依頼、「はい喜んで!」と取り掛かると落とし穴に落ちるやつである。
出入口の段差を解消するために、洗い場のレベルをむやみに上げてしまうと、逆に洗い場から浴槽に入りにくくなりがちなので(浴槽の底面から洗い場の床面までのレベル差は階段一段分が、跨ぎ出入りの限界なのです)、そういうときは利用状況をきちんと把握するのである。
聞けば、高齢の父母二人を娘さんが介護していて、お母様がいよいよシャワー浴のための移動が困難になってきたのでシャワーキャリー(入浴用車いす)を導入したい旨のお話。つまり高齢者お二人はシャワー浴。浴槽に入るのは娘さんだけなので、その大変さだけ伝えておけば、まあなんとかなるか。
となると、今度は介護保険の特定福祉用具販売(購入費支給)がらみのお話になる。こちらの給付枠は年度ごとに10万円。シャワーキャリーも浴室内すのこも、どちらも対象にはなるが、10万円では予算的に両取りができない。
今回のケースではお母様の介護保険でシャワーキャリー、お父様の介護保険で嵩上げのための浴室内すのこを導入することで、どちらも介護保険で対応することも可能ではあるのだが、どうも現状の桧すのこが昨年買ったばかりのものとのことで、可能ならそれを利用したいとのこと。
方針は決まった。
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なんという地味な改修、と言ってはいけません。
結構大事なポイントが隠れております。
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種明かしをば。
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以前のすのこは既製品のため、浴槽の縁側まで届いておらず、たまたまモルタルの縁があったのでよし、という状況でした。
でも、キャリーを使うために入口の段差分(90mm)嵩上げをしてしまうと、そこが溝になってしまいます。キャリーは脱輪するし、介助者も踏み外す。ということで、そちら側にも新たに入れた大引材と同じ、桧の38×85材を用いて、すのこサイズそのものを拡大しているのでした。
あと、さりげなくキャリー脱輪防止の立ち上がりも取り付けております。
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工事自慢はここまで。
本日の主役は、その現場にやってきた、こちらの福祉用具なのです。HCRでもちゃんと見てきましたよ。
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神の手で有名なディエゴ・マラドーナの、弟のようなネーミングです。
そちらのウーゴ君、鳥栖・福岡・札幌にちょこっと在籍しておりました。
今日は細かすぎて伝わらないネタばかりでやっております。
これ、あくまで俺はシャワーチェアだ!と言い張っているのですね。
ちなみに、介護保険上ではどれも特定福祉用具の入浴補助用具になるので、あまりカテゴライズする意味はないのですが。
でも、確かにこの特徴はこれまでのシャワーキャリーにはなかった。
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なんと、最近のシャワーチェアの特徴がここにも。日本の家では、こういった物品の置き場にはどこもだいたい困る、なのでこういった工夫が喜ばれるのですね。
でも、シャワーキャリーとしてはどうなんだろう、と思って、まずはキャスターに注目してみました。
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このキャスター、赤いところを踏むと、車輪の回転だけでなく、キャスターの首振りも止まります。なので、椅子のようにビタッと止まる。ウーゴ君の自称のとおり、シャワーチェア同等にはなります。
ただし、4つのストッパーが連動していないので、いちいち4ヶ所踏むのが面倒、はあるかも知れません。解除のときのほうが面倒か。
あともう一点、この画像で介護職の方は気づく人はいるかも知れません。
大概の車いすは、後輪周辺のバーを踏んで、ハンドルを手前に引くことで、前輪を持ち上げることが出来ます。いわゆるティッピング。
このウーゴ君、残念ながらティッピングには対応しておりません。なので、実はギリギリまで出入口のところに合わせて嵩上げした状況でも、脱衣室側に利用者さんを乗せて移動するとき、30mm程度の水切りの段差に引っかかる。
これはちょっと使い勝手が違うぞ。ということで作戦を練ります。
こちらの現場ではヘルパーさんに入浴介助をお願いする予定であるため、娘さんが洗い場側から前輪側を持ってヒョイ、と持ち上げることでとりあえずの解決を見たのですが。
でも介助者単独の場合もあるだろうし、どうしたもんかね、とメーカーの方に尋ねたところ、3角形断面のいわゆる段差スロープを推奨されました。
水濡れ部分になるので、何を使うかは悩ましいですが、ホームセンターの安いウレタンのものだと凹むし、福祉用具貸与だけでなく特定福祉用具で買うことも出来るになった段差スロープを使うことになるのかな。水濡れ対応のもの、あったかな?今後の宿題にします。
ちなみにこちらがメーカーさんのウェブサイトです。
このウーゴ君、希望小売価格は88,000円+税。折りたたみシャワーチェアはだいたい各社3万円から4万円といったところなので、一気にほぼ倍。
価格だけはシャワーキャリーの値段かい!と突っ込んだところで、はたと気づいて各社のシャワーキャリーの価格を調べに行ったのです。
の、軒並み10万円を超えてきている・・・
こちらの手すりの材料価格もいきなり3割上がったりしていますからね、そりゃコロナ禍をまたいで、1割2割は上がっていて不思議はない。
というわけで、一般的なシャワーキャリーはとうとう介護保険の特定福祉用具の購入費、10万円の枠内では買えないものになりつつある、ということが判明したのです。
介護保険では、給付枠からはみ出た分は全額が自費での対応になります。
つまり介護保険の自己負担割合が1割の方の場合、12万円のシャワーキャリーを買うと、給付枠10万円の1割+枠からはみ出た2万円=3万円が最終的な自己負担額になる。
でも、96,800円でウーゴ君を買う場合、10万円の枠内におさまっており、9割分が後日償還されて戻るので自己負担額は9,680円。
こういった新しい福祉用具が、実は物価上昇、インフレーションによって買いにくくなっていた既存の福祉用具に置き換わることを狙って開発されいてるようだということがわかった、世知辛さを感じる秋であります。
介護保険の給付枠、本来ならインフレに合わせて増額してほしいところなんですけど、常に財務省から減らせ減らせと突っ込まれている現状ですので、当分そういうことはないでしょうね。インフレは貨幣価値の減少であるということを、こんなところでも実感したのでありました。
関連して、レバー操作ひとつで4輪すべてビタ止まりする、気の利いたキャスターの付いたワークチェアの話はこちら。
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