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バルコニー手すりと発電パネル 〜屋根だけでない太陽光利用



太陽光発電がポピュラーなものになって、もう何年が経つのだろうか。
Googleマップで近所の衛星画像を見ても、いたるところの屋根にパネルが載っている。昭和40年代初期に開発されたこの丘陵地で、おおよそ7~8軒おき、ぐらいか。

そもそも、太陽光発電は紛れもない核融合発電である。太陽がリアクターであるというだけの話で。
いま、地上で核融合発電を実現しようという試みを各国がいろいろやってはいるのだけれど、どの方法もその超高温の持続と、そこからどのように電力を取り出すかで苦労している。
そういう視点に立つと、こちらの核融合発電、リアクター(反応炉)は地球外にタダで外注して、そこから生まれる電磁波だけ受け取って電力に変換しているのだから、可能な限り使わない手はないのだった。特に一次エネルギーの少ない日本ではなおさら、である。


かくいう我が家も、11年前に導入した5.4kw/hのシステムが、10年間の固定価格買取り期間が終わったいま、日々お安い電力を東京電力管内に供給している。

ほんとうはこのタイミングで、蓄電バッテリーを入れたりしたら夜間の電力も賄えて良いのだろうけど、残念ながら元が取れるくらいには安くなっておらず、仕方なく頑張って昼間の自家消費に充てている。

でも、そのおかげでエアコンを気兼ねなく使えるのは正直ありがたいことである。暑さに弱い、毛皮をまとった獣どものためにも。



そして、最近はその発電パネルが、屋根の上に限らず設置できるようになってきている。

そして、手すりにもその流れが。たとえばこれ。


高層住宅には、当たり前だが個別の屋根はないため、どうしてもここ、バルコニー手すりが区分所有できる部位の、最大の受光面になる。
ただしそこまでの面積はないから、パネル1枚100W/hと概算して、時間あたり1KW出るケースは少ないかな。断熱を良くしても、夏季のエアコンの容量を賄うには足りなそうである。

でも共用部の照明や空中に使うと、ランニングコストの低減になって良さそうだし、非常用の電源として重宝しそう。資料を見ても、開発しているゼネコンさんはそういう想定で考えているみたいですね。


また、そのように生み出した電力の貯蔵も、高層の建物ならいろいろと解決策がありそう。

バッテリーを使うにしても、最上階に設置する制震用のマスダンパーに利用すれば、コンクリートの塊を最上階に置く代用になる。いわゆるチューンドマスダンパー(TMD)、こういうやつですね。


さらに、最近は重力(位置エネルギー)蓄電なるものもあるから、エレベーターシャフト状の部分を利用して、錘を上げ下げすることで蓄電する仕組みもできるかもしれない。これなら火災リスクのあるバッテリー不要である。


なんなら錘だけでなくエレベーターそのものを、上りは太陽光で生んだ電力で持ち上げ、下りは発電しながら下ろす仕組みもある。いわゆる回生エネルギーシステムというやつで、電車や電気自動車ではすでにおなじみの技術になっております。

大雑把に言えば、揚水発電所と同じメカニズムです。

高層の建物は、このように蓄電との相性の良さはあるのですが、いかんせん発電に使える面積が少ない。そこでこういった壁面利用の発電パネルが安価かつ高耐久で導入できると、ゼロエミッションの高層建築物も不可能でない、かもしれないですね。


また、近年新しい太陽電池の素材として注目されているのが、ペロブスカイト太陽電池というもの。シリコン結晶を利用した従来のものとちがい、薄膜で曲面利用も可能、さらにシリコンと遜色ない発電効率を実現できるようになってきたとのこと。ただし耐久性に難があるそうな。

わかりやすい解説はこちら。


そしてこの電池、なんとインクジェットプリンタで印刷してつくるそうで。
そこに注目したのがパナソニック(株)さんで、テレビなどで培った大面積のガラス面への印刷技術を転用できる、と踏んだ模様です。

松井氏はそう謙遜するが、大面積の太陽電池モジュールと高効率化を支えたのはパナソニックグループの技術力に他ならない。自社開発のインクジェット技術による大面積塗布法を採用し、大面積のガラス上への均一塗布を可能にした。これにより高い変換効率を備えながらも、従来にはない薄型・軽量・柔軟性を持つ太陽電池の姿が見えてきた。将来の事業プランとして、松井氏は次のような製品をイメージしている。

「どのようなシーンで活用するかを社内で何度も議論してきましたが、最終的には総合メーカーの強み、インクジェット技術を用いた大面積・サイズフリー塗工技術を生かすことに落ち着きました。結論としていまは、建材一体型太陽電池としての展開を想定しています。ビルの壁面や窓と一体化した太陽光発電システムを目指します」(松井氏)

 


調べたらパナさん、その新型電池を利用した、発電バルコニー手すりを新規開発してている最中で、ちょうどお近くのモデルハウスで8月まで耐久試験をしているとのこと。ただ11月まで、らしいので急がねば。



というわけで、たまたま近所で午前と午後の仕事が連チャンで入った、合間のお弁当買いがてらに覗いてきました。

お弁当出来上がり待ち10分、さてタイムトライアルです。

入口にはオサレな本屋さん
外壁は蔦模様ですが蔦を商っているわけではありませぬ
似たデザインの家が並びます

ちなみにここ、松下電器産業時代のテレビ工場だったところなんです。いまは各社協業してのサービス開発場を兼ねて、「Fujisawaサスティナブル・スマートタウン」という名前で、パナソニックさんが開発しております。住まいはパナと三井不動産だったかな?

でも正直、似たような建物が多すぎて自分の位置がわかりにくい。もうちょっと、それぞれの住まいの見た目に幅を持たせてもいいのではないかな、と思ったりします。

そしてモデルハウスが見えてきました。

お、ガラスのバルコニー手すりだ
アルミとガラス手すりの本体はYKKAPの製品だそうで

この印刷された受光部の特徴は、いわゆるシリコンのものと違い、細かいパターンで調整できるので、透過性が高いところかと。
真夏の真昼の強光線だと、外の下側からは黒っぽく見えますね。でもこれなら目隠しとしてはちょうどいいのかな。

もともと、外から丸見えは嫌だけど室内からの開放感がほしい、という矛盾した要望に応えるところなので、こういった製品ができるとありがたい。願わくばお安く、ということにはなりますが。

あと、これは既製品にそのガラスを組み込んだ形なので、送電部がぽっこりガラスの上側に出っ張っているのが残念ですが、それこそ手すり部分に内装する方法もありそうに見受けました。

ちなみに内側からの見えはこんな感じだそうで。受光部は印刷でつくるので、様々なパターンが実現できそうです。


本日、手すりの話というより、もはや太陽光発電ネタとなっておりますが、シリコン系ではコストで中国にどこも叶わなくなってしまった太陽電池でも、こういった新たな製品開発は日夜続いているのですよ、という事例でした。

ぜひとも、意匠性の高いこの新しい技術で、国際的に売れる製品ができることを心より祈念しております。


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てすり屋のひとりごと 橋本 洋一郎(合同会社 湘南改造家)
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