あと一歩を何とかする工夫 ~下地のない階段端部の、手すり延長技
こちらの仕事の主戦場は、建物に手すりを取り付けることである。住環境整備において、介護保険を利用できる方であれば、もうひとつ、貸与品の手すりを使うという選択肢が使えるので、状況によって使い分けることが多いのだが、どうしても置き型や突っ張り棒型では設置が難しく、唯一の解決が住宅改修にならざるを得ない、そういう部分もある。それが室内階段である。
大抵の階段であれば、なんとかする方法は身につけてきたのだが、それはあくまで壁などがある場合。だが階段というのは、家を建てる際に部屋を増やそうとすると、最初にしわ寄せが及ぶところである。そうなると、1,2段、廊下にはみ出てみたり、食い込んでみたり、いろいろと調整が及ぶ。そんな階段にどうやって手すりを取り付けるか、悩むことになる。
なぜなら、手すりは脚が一本増えるのとおなじ、と常々言っている通り、それがある部分であれば脚が上がりやすくなる。支持基底面を見た場合、2本脚でなく、3本脚で歩行しているのと同じになるからだ。
だが、階段が突き出したりしている場合、手すりを取り付ける部位がなかったり、上手に留まらないなどの問題が発生する。
そこをなんとか、あと一歩を安全に出せるように、こちらは色々工夫をして取り付けているのである。
たとえばトップ画像のこちら。まずBEFOREからいきましょう。
もともと、壁のところまでは手すりが降りてきているのです。ところがその先がない。
そこで、登場したのが飽きられた健康器具です。古くは洋服掛けに姿を変えたぶら下がり健康器から始まり(と思ったらほんとに兼用品がある)、
今回の場合は、歩行部分の重さを利用して置き型の貸与手すりのように使われている。人間は賢い、と思う瞬間である。
だが、残念なことにハンドルはそこまで頑丈な作りではなさげであった。なので手すりを延ばしてほしいとのことで、以下のように工夫。
階段の側桁に、ひのきの半割の柱を固定し、そこに階段に沿って降りてくる20mm厚の補強板を柱から延長する形で新たにおろしてきて、ひのきの半柱に留める。そしてブラケットをその交点に取り付け、手すりそのものは1段分だけ下に延ばして、袖を巻き込まないためのエンドパーツを取り付ける。
これ、柱をもう1段分下にすることも考えたんですが、右側に降りていくので足先をぶつける可能性が高かったことから、このような納まりで様子を見たのでした。手すりに身体をぶつけるようなことがあった場合でも、この形状なら後でちょっと切断調整する事もできますし。
また、洋風の家の廊下が広いお宅だと、上段が壁ではなく、おしゃれな木の手すり状のものがあったりします。でもそれがグラグラして、握るには怖いってこともありますね。そういうところではこうやって処理したりします。
上段側の根元に注目。手すり用の支柱パーツ、ごっついんですが下からの片持ち効果があるので、全体がちょっと安定します。それを組み合わせて、下からきた手すりとうまいこと繋げようという魂胆です。やっぱりちょっと動きますけどね、以前よりはずっといいはず。
和風バージョンだとこちら。
あっさり処理しているように見えますが、実はこれ、どちらも一番上の方は木の手すりではないのです。スパン(金具間の距離)が飛んでいるので強度が足りない、なので下記の記事の製品を使って、組み合わせております。
先日のこの記事、かなりアクロバットな階段のやつも最後に載せてます。
また、一昔前のハウスメーカーだと、いろいろな部分で冒険をしているのだが、こんな手すりもありました。
手すりが独立して昭和40年代のお洒落風につくられておりますが、揺れる。あと横は扉である。なのであと1段、足が出にくい。
とのことで、先程の支柱パーツを1段目のごっつい段板につけて、同じくごっつい(握りにくいけど)手すりの端部に金具を付けて、繋いでしまえと考えたらなんとか納まった事例である。でも上の手すりが揺れるからやっぱり揺れるのですが、むしろ付けた手すりが揺れ止めになるくらいの想定です。
階段周りで、あとちょっとだけ手すりが足りないという状況は、他でも書いたけど、高齢の方を断崖絶壁に手を引いてきて、そこで放置することとあまり変わりません。
なので、周囲の皆様はたった一段と考えず、なにか危ないなと思ったらそこにレンタルの手すりを置くなり、こうやって改修するなり、いろいろ考えていただければと思うのでありました。
上げて落とすみたいな話だからね、こういうのって。