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保険本来の趣旨に沿った営業活動に役立つ備忘録②-どうなる?相続・贈与税一体課税(2)-
現所属先の業務に差し障りのない範囲で、生命保険営業に関連する情報、法令・通達、裁判例などについて、不定期で発信できればと思っております。
生命保険業界に関連する方や、ご興味のある方は、宜しければ、お付き合いください。
※発信内容は、過去も含め、所属・関与する団体等とは一切関係ありませんのでご留意ください。
いわゆる「相続・贈与税の一体課税」について
前回、2020年11月13日の第4回政府税制調査会にて、本格的な議論がはじまった、いわゆる「相続・贈与税の一体課税」、正確には「資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築」の動向を時系列にまとめました。
当記事では、そもそも現行制度がどういうものか、どういう経緯でそうなったのか、結局どうなる見込みなのかという点について、発信していきたいと思います。
結論は前回のnoteとほぼ変わらないのですが、今回は、歴史や他国との比較などより大きな視点から発信できればと思います。
日本の相続税法について
日本の相続税のはじまりは、1905年(明治38年)の旧相続税法に遡ります。
後述いたしますが、当時採用されたのは遺産課税方式。
そもそも、日露戦争の戦費の捻出を目的に創設されましたが、当然に国民の反感を買い、当時の「家制度」の維持を目的に、家督相続者に対する大幅な減免措置によってバランスを取ることになるなど、現在の相続税とは、趣旨も制度も全く異なるものでした。
太平洋戦争終了後、GHQの要請に基づく1949~1950年のシャウプ勧告によって、1951年に、戦後の家制度廃止に伴い遺産取得課税方式へ移行し、米国式の一生累進課税が導入されました。
しかしながら、当時の税務行政では、一生累進課税方式の執行は困難であり、1953年に廃止され、相続時課税へ移行となりました。
また、1963年に遺産取得課税方式の変化形の法定相続分課税方式へ移行し、現在の相続税法の土台が完成したといえます。
日本と諸外国の相続・贈与税制の比較
遺産課税方式、遺産取得課税方式、法定相続分課税方式と似たようなよくよくわからない言葉が出てきますので一旦、よく官公庁の資料に登場する3つの方式の比較表で確認したいと思います。
![](https://assets.st-note.com/img/1670936266973-R6t8U9uKsy.png?width=1200)
[総4-2]説明資料(資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築等について)(2/4)P29
米国式の遺産課税方式は、遺産(相続財産)そのものに課税。
独・仏式の遺産取得課税方式は、遺産を取得した相続人それぞれに課税。
日本の法定相続分課税方式は遺産取得課税方式の変化形で、一旦法定相続分通りに相続したものとして、相続税額総額を計算し、実際に遺産を取得した相続人に対し、その取得割合に応じて課税するという方式です。
議論の本質である、資産移転の時期の選択に中立的な税制という観点では、米国の遺産課税課税方式はベスト、独・仏の相続・贈与税が統合されていて相続生前加算期間も長くベター、日本は相続・贈与税が分離しており、相続生前加算期間も3年と、中立的では言えないと評価されています。
※余談ですが、日本の民法は、仏のお雇い外国人ボアソナードらが起草した民法典をベースに、1896年~1898年に定められ、1947年の戦後新憲法の施行に合わせ、家督相続制度などが撤廃され、概ね現在のかたちとなりました。
例えば、民法は仏(大陸)式、税法は米(米英)式と日本は法制度によってベースが異なるため、中々、理解を進めていくのは難しいなと思います。
ギュスターヴ・エミール・ボアソナード - Wikipedia
※余談の余談ですが、市ヶ谷に聳え立つ法政大学の巨大ビルはボワソナードタワーといいます。
教科書に載る歴史上の偉人の名前がポンポン出てくる東京は凄いなと札幌出身の私は日々感じております。
ボアソナード・タワー - Wikipedia
日本の贈与税について
昭和28年に相続税の補完税として贈与税が創設され、昭和50年に基礎控除が60万円となり、平成13年より基礎控除が租特法(特例)にて110万円となり、それが継続され実質恒久化しています。
そして、平成15年に相続時精算課税が導入されます。
あまり意識をされていない方が多いかもしれませんが、相続時精算課税は、租特法ではなく、相続税法本法の規定です。
残念ながら、当時の議論などを確認する時間も意欲も、私は持ち合わせていませんが、相続税と贈与税の一体化措置として、米国に代表される「資産移転の時期の選択に中立的な税制の構築」を目指した、相当な肝いりの改正だったのはないかと思います。
しかしながら、例えば、前述のとおり、暦年贈与との選択制、小規模宅地特例との併用ができない、贈与時の価格を相続時に持ち戻すため、贈与財産の価額下落リスクがあるなどの制約が多く、制度開始当時は一定の利用がされたものの、現在ではほとんど利用されていないという問題が指摘されています。
この点、第22回 税制調査会(2022年11月8日)における、相続税・贈与税に関する専門家会合の資料の「[総22-8] 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築に向けた論点整理(文書) 」にて詳しく解説、指摘がされています。
資産移転の時期の選択により中立的な税制
ここまで相続時精算課税を中心にお伝えをしてきましたが、上記の、第22回 税制調査会(2022年11月8日)における、相続税・贈与税に関する専門家会合の資料「[総22-7] 資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築に向けた論点整理 (スライド)」にて全体像がわかりやすく解説されています。
![](https://assets.st-note.com/img/1670964565679-ZFsJ3bKIno.png?width=1200)
[総22-7] 説明資料(資産移転の時期の選択により中立的な税制の構築に向けた論点整理)P2
![](https://assets.st-note.com/img/1670964627147-WOkNJrFpZG.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1670964733642-sj0ZqWsEVJ.png?width=1200)
勝手に要約しますと、資産移転の時期の選択により中立的な税制にむけ、中期的には、現行民法の法定相続分課税方式を見直し、遺産取得課税方式への移行が望ましい、しかしながら長く定着しており、他の法制度などとも関連するので、そんなに簡単に変えられるものではないので、引き続き議論が必要。
「資産移転の時期の選択に対する中立性」と「早期の資産移転」という趣旨を、整合的に取り込み、公平・簡素な制度を目指す必要がある。
相続時精算課税方式は、贈与・相続を通じて資産移転の時期の選択に中立的な税制であるので、暦年贈与との選択制を維持しつつ、使い勝手の向上を目的に所定の措置を図る。
諸外国の制度や、税務行政のデジタル化に伴う負担軽減により、暦年課税における相続前贈与の加算は、現行期間の延長を検討する。
一方、少額贈与に係る取扱いについては検討する。
富裕層向けの一括贈与制度は廃止する方向とする。
とのことです。
さいごに
結局どうなるのか、あとはブラックボックスの与党税調を経て、税制改正大綱の取りまとめ、公表を待つしかありません。
連日、税制改正関連の独自報道も飛び込んできます。
廃止が既定路線だった結婚・子育て資金の一括贈与の延長が報道されたり…
相続前贈与の加算期間が3年→7年で確定というような報道がされたり
とにかく3日後に公表される予定の与党税制改正大綱を待つばかりです。
駄文・雑文にも関わらず、最後までお読みくださり、誠にありがとうございました。
次回は、大変恐縮ですが、令和5年度税制改正大綱と生命保険の営業のポイントにについてまとめてみたいと思います。
※当記事は、著作権法、税理士法第52条、弁護士法第72条などに抵触しないよう、細心の注意を払い作成しているつもりですが、万が一、内容に誤り、不適切な点、法令に抵触するような点がある場合は、その旨ご指摘くだされば幸いに存じます